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スパーリング


実戦形式なスパーリングにどこまでの効果があるのだろうか?


勿論人型のスケルトンやドーラ―との戦闘はあるだろうが...。


ドーラ―は人型の敵対行動を見せるゴーレムのことを指すようだが、見たことがなく個体ごとに顔体つきも違うらしいからいまのところはわからない。もしかしたら人間社会の中に溶け込んでいる者たちもいるのだろうか?


ギルドカードや簡易的な身分証明書はあるそうだが、簡単に偽造できそうだからもしかしたらあるのだろうか?


なんてことを考えながら今まさにスパーリングをしている。


シルヴァ先生の方針は「殺し合いに男も女も関係ない」などという危険なものだった。


魔物にも性別があるものは少なくないため間違いではないのだが。


今の相手は運悪くも伊藤絵利だ。


健康的でよくしなる筋肉をうまく使い刃渡り30cmほどのショートソードの模擬剣をご機嫌に振り回してくる。


「逃げることしかできないとかほんと男の癖にだっさい」


転生時伊藤のステータスは俺より高かったため、もしハウンドとの戦闘でレベルが上がっていなかったら場合によっては死んでいたかもしれない。


伊藤のスキルは確かインパクトの上位互換のようなスキルだったと思うのだが...あまり興味がなかったため聞き流していたことを今ほんの少し後悔した。


バトミントンのラケットを振るような軌道で剣が迫ってくるのを剣で受けつつ自身が後退することで衝撃を逃がす。



もともとバトミントンをしていたのだろう?まあ、憶えていないが。


「ちょこちょこ逃げてさぁ!恥ずかしくないわけ?」


上手く直撃しないせいでイライラしているのだろう。


ミクリデと比べたらもちろん劣るが、一瞬前傾姿勢になったあと、アスリート顔負けの凄まじい速度で迫り頭をめがけ剣を振ってくる。


あれを受けたらこのクラスの人間では死ぬと思うんだが...。


よろめくフリをして後ろに倒れながらなんとか躱す。


その瞬間足の間に剣が振り下ろされ、地面が砕け、砕けた小さな塊が頭に直撃する。


「こっ...降参です。」


その瞬間周りのクラスメイトが歓声をあげ、伊藤は満面の笑みでピースサインをしている。


あいつ殺す気だったろ...。怖え。


よく見たら砕けというか抉れている。


さっさとその場から立ち上がり移動する。


次は名前がわからない人と佐竹が戦うみたいだ。


佐竹は野外実習から少しだけ優しくなったようななっていないような?


まあ、目の前で俺をバカにすることを明らかに避けるようになった。


それはそうとして、伊藤のように感覚的にスキルを使えるのはかなり使い勝手がいいだろう。


俺の地属性の適正だって...まぁ、。


消費MPはなぜか上昇したが、少しだけ制御できるようになった。


ミクリデと戦った時ほど遠くの土をあの大きさで隆起させることもできてはいないが...。


あの時はドーパミンみたいなのが出ていたのだろう。


そもそもの魔力量が多くないのは困り者だが20㎝程ならある程度簡単に作れるようになった。


まあ、MPを回復させないと二回目はできないが。


魔力の消費量も安定していないため、うまく制御できるようになれば二回ならできるかもしれないが。


20cmの突起を作って何になるのだろうか?


あの三人は小さい水球や雷球、風を使って自分の周りだけを涼しくしたりと楽しそうだ。


なぜかシルヴァ先生の俺への目つきが厳しかった。


アイーネ先生の関係だろうか?


本気でやらなかったからだろうか?


心臓が早鐘を打つ。


シルヴァ先生はゆっくりと近づいてきて俺に顔を寄せてきた。


「思いっきり切ってるじゃねぇか」


気づいてはいなかったが直撃したときに切ったのだろう。


周りの騎士に試合を監視させ少しクラスメイトから離れたところに連れていかれる。


簡易的な処置をシルヴァ先生が行いながら口を開いた。


「なんで本気でやらないんだ?これは確かに実戦じゃないが。あいつが好きなのか?もしそうなら仕方ないが。」


「先生はあの歓声を聞きましたよね?俺はあそこで勝っていても結局負けていました。」


「先生って俺のことを言ってんのか?俺はそんながらじゃないからやめてくれ」


そういい、無表情で肩をすくめたあと続ける。


「そんな詩的な表現じゃわからねぇよ。平民上がりの騎士や冒険者はあんたら勇者様と違って教養が低いやつばかりだ。」


これは忠告なのだろうか?


「まあ、お前がそれでいいならそれでいいが、仲間にはきちんとした情報を教えとくこったな。それが仲間全員を生かすことにつながったりするからな。」


そういうと俺の背中を少し強く叩いてまた試合を見に行った。


今の俺の状況を理解して慰めてくれたのか、頑張れと叱咤激励してくれたのかはわからない。


両方かもしれないが。


それともそれでも伊藤に勝つべきと言いたかったのだろうか?





もし俺に父親がいたら、こんな性格にはならなかっただろうか?


このたらればは何も建設的ではないからここまでにしよう。


時間は着実に過ぎていく。


努力はしなければ成長はないだろう。


俺は地面の土に無駄に魔力を流し込む。



わからないことだらけだ。考えれば考えるほど、人の気持ちや言葉の意味なんて全く分からない。


だからこそ考える必要があるのかもしれないが。


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