第二ラウンド
俺はミクリデという傭兵だ。
今はアルマス様に仕えており今まさに襲撃者?侵入者?どちらでもいいが対応中だ。
アルマス様はなんだか知らないが、女を痛めつけているそうだ。貴族様の趣味はわからないが純粋にキモイ。こんなことを考えていると知られたら流石に俺でも殺されそうだ。
「死にそうになったらお前は増えるのか?」
蹴り飛ばして止めを刺しに降りると敵が増えていた。
「第二ラウンドだ」
確かに筋はいいかもしれないが、所詮はあの程度。
レベルも20そこらだろう。
「お前らじゃ無理だと思うがぁぁぁっぁぁぁ。」
顔に強い衝撃を感じた時にはすでに吹き飛ばされていた。
何が起こった?
先俺がいたとこにはデブが立っている。
「ウェイトが足りないンゴねぇ。」
想定外だ。
「豚ぁ、本気で行くぜぇ」
俺の得意なスキルは膨張。
一時的に筋肉を魔力を使って大きく強くする。
使用魔力こそ多いが四人を殺すくらいなら全然もつだろう。
細かい詠唱もあるが、あのデブは待ってくれないだろう。
詠唱を省略全身を魔力が駆け巡る。
「簡単に壊れてくれるなよ!!」
吹き飛ばされたときに落とした斧を最短で拾い、デブに右側から体をしならせ全力で斧を振るう。
確実に当たるだろう。
そう思った渾身の一撃は細腕の気味の悪い髪形をした男の剣に受け止められる。
「早いでござるね。でも、少し遅いでござる。」
受け止められると思っていなかったため反応が遅れた。
後ろから強い殺気をぶつけられ、振り返る間もなく腰に強い衝撃を受け宙に高く浮く。
本能的に危機を感じた俺は魔力を全身に多めに流し体を膨張させる。
そこに今まで動かなかった男が追撃に雷を放ってくる。
スキルだろうか?あまりに早く重かった。
吹き飛ばされた先には土でできた槍だろうか?
円柱状の突起が地面から突き出している。
何とか体を捻るがわき腹を食い破られた。
たった数秒のはずだが俺には何時間にも感じられた。
一番の問題は魔力がすでに尽きかけていることだろう。
「頭ん中てめえら繋がってるのかよ。」
「義兄弟ですからね」
「兄弟?バカにしてんのか?」
いつも持っている斧が重い。
次の攻撃で一人も落とせなかったらまず勝てないだろう。
勝てない?俺が?
おかしくてつい笑ってしまう。
「何かおかしいところでもありましたか?」
「あぁ、俺がヤリたかったのはこういうやつだよ。」
心と体が今にも踊りだしそうだ。
魔力が無限にあるように感じる。
勝負はわからないから愉快なんだ。
さっきよりも素早く近づきキモイ髪形のガキに斧を振るうが剣を合わせられ逸らされる。
別に技量があるわけではない。
これが才能と呼ばれるものなのだろう。
稚拙な構えとは思えないほどの対応力。
本当に感嘆する。
右へ左へ回り込み振り、退き詰めるが少しも崩せない。
数回つばぜり合いになるがそれでも力で勝てない。
一体どんなレベル、ステータスなのか。
四人が同時に仕掛けてきた。
全員、最初に戦った男もよくよく考えれば、あの年でレベル20。そしてあの速度対応力なのだ。
もっと警戒するべきだった。
最初の二人の攻撃を躱すも残り二人が詰めてくる。
四人は攻撃の邪魔にお互いがならないように凄まじい速度で場所を入れ替える。
ジリ貧だ。
今、アルマス様を連れて逃げれば逃げ切れるだろうか?
目的はきっとあの女なのだ。
だが、俺はこんなに楽しい時間を捨てることなどできない。
四人の攻撃を何とか捌く。
ドンッ
背中に触れたものは壁だろう。
四人は武器をこちらに向けたまま、それ以上攻撃を仕掛けてこない。
俺はこんなガキ四人に負けたのだ。
全身の力が抜ける。
「幸多朗殿早くいくでござる」
「あぁ、助かったぞお前ら。」
最初に戦った男はそういうと二階に上る。
まるで冒険を始めたばかりの俺たちのようだと思った。
俺は驕ったのだ。自身の力を過信し鍛錬を怠った。
鍛錬を続けていても勝てなかったかもしれないが。
「どうやら私たちの勝ちのようですが?」
嫌味な奴だ。
「早く止めを刺せよ。」
「なぜです?」
「俺はお前らを殺そうとしたんだぞ?」
「まあ、そうですが。私がもしあなたと同じ立場ならあの侵入者を殺そうとすると思いますが?あなたは犯罪者なんですか?」
「特別なにしたってわけでもないが...。」
こいつは本気で俺を生かそうとしているのだろうか?
「俺が生きてたらまた復讐するかもしれないんだぞ?」
「そうンゴねぇ。まあその時はまたあんたを返り討ちにするンゴ。」
「甘いな。」
右手に準備していた魔力を空中に向けて放つ。
ドーンという大きな音を立て魔力が霧散する。
「驚いたでござる」
「殺さないでもらったお礼に一つ忠告だ。相手を殺しても「もし」がある。まあ、気を付けるこった
な」
「ご忠告感謝します。」
この痩身の男はこのことにも気づいていたのだろう。
「お願いなのですが...。」
「ああ、俺はお前たちの顔を一人も見てない。」
「理解が早くて助かります。」
「俺は傭兵のミクリデだ。、もし傭兵が必要なら頼ってくれ。傭兵ギルドでミクリデといえば繋いでくれるはずだ。」
「わかりました。必要になったときはぜひお願いします。」
こいつらは普通の奴らとは決定的に何かが違う。
不快な今の世界を変えてくれるかもしれない。そう思った。
魔力が欠乏していたのだろう。体に全く力が入らない。
よく今まで持ったほうだ。
意識が朦朧として途切れた。
「信用できるでござるか?この傭兵?」
「きっと大丈夫だと思いますよ。」
「どうしてそう思うンゴ?」
「大丈夫でなければ今頃我々は致命的なダメージを受けたと思いますが?」
「確かにそうでござるな」
三人はごく自然に拳を打ち鳴らし微笑んだ。
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