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アイーネ・ツヴィア


私の名前はアイーネ・ツヴィアだ。


私はもともとアイーネという名前しかなかったが、魔物に襲われ亡くなった思い人の名前をもらっ


た。


家族やツヴィアの家族からは何度も止められた。


だが私は別にツヴィアの分まで生きようとか思って名前をもらったわけではない。


これは私なりの魔物への恐怖と人間の命の尊さを表している。


ツヴィアは男性だったがツヴィアという名前は中性名でどちらかと言えば、女性名でよくある名前だ


った。


顔は天使のように整っており、とても綺麗だった。


私が生まれた村は魔素の強い森と隣国であるアリズレに挟まれているような場所だった。


魔物や害獣、アリズレの野党が頻繁に村を荒らしていたため安定した地域というわけではなかった


が、小さいころから魔物をや害獣を倒していた。


今は、そのおかげで食べ物には困っていない。


8歳の時にオーガの変異種が村を襲った時のことだ。


オーガは基本的に女性に興奮を抱くと聞いていたし、今まであったオーガもそうだったため完全に油断


していた。


オーガに隙をつかれツヴィアは攫われた。


村の戦える人間数人と森を探し回り、やっと見つけた時には精液であろう液体が水貯まりのようにな


っていた場所の中心に頭と体の半分が食いちぎられた姿だった。


きっと犯された後に食われたのだろう。


普通のオーガ種やゴブリン種であれば犯す場合には基本的に巣まで持ち帰る。


が食っていたということははなから孕ませる気など毛頭なく、単純に性欲のはけ口にされたのだろ


う。


ツヴィアの絶望や恐怖は想像に難くない。


その時の記憶は非常に曖昧で昔だということも大きいが、気づいたら家の堅いベッドの上で寝てい


た。そこでぼろ泣きしたはずだ。



その時までは何となく、今後もこの村で暮らし結婚とかするのかなぁと思っていたのだが、これ以上


ツヴィアのような人間を出したくないという気持ちが強くなり12歳の時に比較的安全で治安が良い


町や村を経由しながら王都に行った。


資金を稼ぎながらだったため王都についたのは13歳の時だった。


王都ではもともと比較的強い魔物と戦っていたため、レベルや経験のおかげで収入が安定し、村にお


金や手に入りにくかった種を送るようになった。


17歳になった時だった。


緊急招集という名目である一定ランク以上の冒険者が集められた。


内容は私の村にアリズレの兵士が攻め込んできたかもしれないとのことだった。


馬車で王国騎士と合同の移動の予定だったが、私はギルド職員の静止を無視して愛馬に乗って村を目指


した。王都から村までの距離は早くとも15日はかかる。


12日目の朝仮眠をとっている時蹄の音で目が覚めた。起きるとそこにいたのはエンデ王だった。


エンデ王は戦争や掃討作戦はほとんどの場合先頭を走るようなお方だった。


何度か戦闘に協力したことがあったので面識はあったが私を追いかけてエンデ王が少数で先に出られ


たと知り本当に驚くとともについ涙がこぼれた。


村が襲われたという報告が王都に入るのはどれだけ早くとも10日、そこから15日かけ現地に行く。


勿論わかってはいた。


が心の何処かではやはり期待していた。


あの笑顔が私を待ってくれているのではないかと。


私はその時家族まで失った。


家や畑は火がつけられており、残っているのは死臭だけだった。


村からアリズレ兵が全員身に着けているポシェットが見つかった。


そこで私はエンデ王に騎士にならないか?と言われ、騎士になった。


平民出身ということもあり高い地位というわけではなかったが、勇者の指導役という大役も任され


た。


数日でミスをしてしまった自分が本当に情けない。


私の罪は勇者さまを危険に晒したこと、またよくわからないが宗教的な罪でも捕まっているようだ。


そして裁判の場所は中流貴族街。


騎士になる前にこのあたりの貴族と冒険者が揉め紛争に発展しそうな時期があった。


その時に表に立って貴族と対立したため心証が悪い。


「殺せー」


そんな声が一生聞こえる。


そういっている人の中に勇者様を何人か見つけ非常に悲しくなった。


結局人とはこの程度なのだろう。


村の人がアリズレの兵士に殺されてからだろうか?涙は出ない。


どうやら私は死刑になるようで、死刑の前までミレイに入れられるそうだ。


そこで私は拷問を受けた。


何時間叩かれつづけたのだろうか?


「お前には悪霊がついている」とアルマスが狂ったように笑いながら鞭で叩いてくる。


病みそうだ。


それからかなりの時間がたった。


もう右目は腫れて空かない。


少し外で物音がするようだ。


アルマスが気になってドアを開けたときふと見えたのはコウタロウという生徒ではなかっただろう


か?


まさか私のために戦っているのだろうか?さすがに思い込みが過ぎるか...。


アルマスがドアを再度占閉め


「さあアイーネちゃんつづきをしようか」


イヤらしい笑みを浮かべながらアルマスはそう言ってきた。


その瞬間轟音が鳴りひびきアルマスは足を震わせビビっている。腰が抜けたのだろうか?


コウタロウさんは無事だといいのだが。


しばらくここにも聞こえるくらいの剣戟やスキルの発生、衝撃音が響いた。



ドーン!という激しい音とともに


音がなくなった。


重そうなこの部屋の扉が吹き飛び、


「助けに来ましたよ。」


血だらけでボロボロのコウタロウさんはそう言ってはにかんだ。


きっとこういう人のことを人々は勇者と呼ぶのだろう。


「ありがとう」


私の声は震えていて、視界は涙で霞んでいた。


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