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自分勝手な義兄弟  ※


「どこに行く気ですか幸多朗さん?」


室内に木ノ下の声が柔らかく反響する。


「いい子はもう寝てる時間だぞ?」


振り返りながらそう言うと、


「それは幸多朗さんも同じですよ」


浅沼は少し笑ったあと後真剣な顔に戻る。


「貴方ならわかっているとは思いますが、もし今貴方が何かすれば勇者という存在自体も厳しい評価を受けるでしょう。それにアイーネ先生のためになるとも思えませんが?」


「ならアイーネ先生を見捨てろっていうのか?」


「見捨てる?秩序を守るための法を、人々を守るべき存在である勇者が否定するような行動をとるんですか?」


「それは...」


「それにアイーネ先生のことを本当に思うのなら、アイーネ先生が無罪になるような証拠を集めるべきではないですか?」


「それをさせないように複数の罪でアイーネ先生を捕まえてるんじゃないのか?」


「ですがそれが満たせないのなら、もしかりに助けることができても、先生は一生犯罪者として素性を隠して生きていく必要がありますね。」


「浅沼の言うことが正しいのは十二分にわかっているが、それでも...」


「感情では貴方のような人は動かすことができても、物事自体を動かすことはできないのは、いじめられていた貴方が一番理解しているはずです。だからあなたへのいじめや嫌がらせはなくなりませんでしたし、誰にも止められませんでした。」


浅沼を無視して反対方向を向く。


「貴方は犯罪者になってでも、それでも助けに行くんですね。」


「ああ、アイーネ先生は10体以上のハウンドを一人で倒していたと聞いた。冒険者は身分を正確に明かす必要がなく、これはほとんどの国で共通だと騎士から聞いた。アイーネ先生の実力なら他国に逃げ、生計を立てることもある程度容易にできるはずだ。」


「貴方が犯罪者になったとき、同じ部屋で生活していた私たちはどういった処分が下されるでしょうか?」


耳が痛い。


「本当にすまない、三人といたときは本当に楽しかったよ。もし俺が捕まったら二人に伝えてくれ。」


「それくらい自分で伝えてください。私も楽しかったですよ。」


外套を羽織り深くフードを被る。


浅沼はもう何も言ってこない。


今日は月が出ていない。


この世界で電気をつけるには、火を起こすか魔石を消費しなければならないが、貴族でも常に灯りを


つけている家は少ない。


今日を逃せばきっと助けることなんて俺にはできないだろう。


静かに外に出てゆっくり速度を上げる。


足音が闇の中に吸い込まれていく。




ベッドの中でステータスを確認するとレベルが上がっていた。


-------------------------


LV  4

EXP 253/500

SP  220 

HP  28/30

MP  13/13

STR 14

ATK 14

VIT 16

DEF 12

INT 9

RES 7

DEX 8

AGI 14

LUK 5


-------------------------


結構上がっているほうではないのだろうか?


三人もハウンドを倒したとのことだったので聞いておけばよかった。


それとも三人はレベルの上昇がなかったから、そういった話が出なかったのだろうか?


ここからアイーネ先生が捕まっていると思われる場所はミレイと呼ばれる収容施設にいると思われる。


ミレイはもともと宗教的な犯罪者を隔離して捕えておく施設といわれている。


宗教的な罪でも捕まっているのだろうか?


ミレイにつくまではしばらくかかるため、その間に習得できそうなスキル関係を探してみようと思う。





「幸多朗殿いっちゃったでござるよ?」


「いちゃったンゴねぇ...」


「はぁ...もしかしてアイーネ先生にホの字なんですかね?」


呆れながら浅沼は二人に喋りかける。


「ハハハッ、じゃないとおかしいンゴ」


「あそこまで執着するのは、やっぱり幸多朗さん自身と重ねているんですかね。」


「いいから行くでござるよ。義兄弟を一人にはさせられないでござる。」


「失敗したら犯罪者ですよ?」


「浅沼氏はいつまでその損な役回りの演技をするンゴか?そろそろ幸多朗氏に嫌われるンゴ」


「全く同意見でござる。成功させて三人で幸多朗殿に謝らないといけないでござるな。」


「そうですね。じゃあ、そろそろ行きましょうか。」


三人とも外套を身に着け深くフードを被る。


「なんかわくわくするでござる。」


「ンゴ。」


「ですね。」


そういって三人は笑った。

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