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野営の実践と実戦


今日起きると強い雨が降っていた。


日本なら記録的な大雨と呼べるレベルだろう。


四人ともステータスに変わりはない。


まあ、本当に変化がなかったかはわからないが。




「今日雨がすごいですね」


「この国ではこのくらいの雨がよく降るんですよ。なのでこのお城を中心になだらかな坂になっていて、ところどころに大きな水路があるんですよ。」


「そうなんですね!」


朝食を食べに行く際に、伊藤たちが給仕をしている人と話していた。


宮田が魔力を使って作った水は飲むことができたが、降水量がそもそも多いなら水不足などの心配はなさそうだ。



今日は野営の練習を行うそうだ。


通常の見習い騎士などは城の外で数日過ごすそうだが魔物に襲われることが少なくないらしく、よく死傷者が出るらしい。


そのため騎士が同行している状態で半日野営についての訓練を行うそうだ。


騎士も多く同行しているが生徒も軽い鎧と刀身長40cmほどの剣などの最低限の武装はしている。


同行してくれた騎士から聞いたのだが、雨の日に原因はわかっていないそうだが、オオカミに似た魔物であるハウンド種などの一定数の魔物の行動が活発になるそうだ。


雨や天候が悪い中狩りを行う魔物は、魔力を感知しているのではないかという説が最有力だそうだ。班は4名~5名で俺たちの班は5名で男が3人だった。


移動の際俺は騎士の人に積極的に話しかけていた。


名前はクロレ二というらしい。


今更どんな顔でクラスメイトと向き合えばいいかわからなかったというのももちろん大きいのだが、騎士という制度や法律への理解、魔物のことなど知りたいことも多かったためよかったと言えばよかったのだろうか?


ただ練習中に無視されるようなことはなかったためよかった。


目の前が見えないくらい土砂降りだったため、指導はそれぞれの騎士が行っていた。


俺たちの班の騎士は、大人数で野営を行うならまず雨を避けれる場所を探し、洞窟や木の下に行くこと。少数なら木の上で休憩するそうだ。どちらもできない場合はテントを作成すると言っていたが、雨が避けれる場所まで移動するほうが安全だと言っていた。


視界が悪く360度警戒することは不可能で危険だからという理由らしい。


雨だけならいいのだろうが霧のようなものが出ており30メートル程にはいるであろうほかの班がくっきり見えない。


ただ指導はわかりやすく丁寧で紐の結び方など質問のたびに丁寧な解説を行っていた。


雨のは火が付きにくいため視界が悪く、そのため野営では見張り役が非常に神経と体力を使うそうだ。




全体をアイーネ・ツヴィア先生が確認した後撤収作業を行っている時のことだった。


女子生徒の悲鳴が聞こえた。 


近くの班で何かあったのだろうか?


体が竦み自然と剣に手が伸びる。


同行してくれていたクロレ二が優しく肩を叩いてくれ固まるようにと指示を出した。


何かが走り回っているような音が微かに聞こえる。


「おそらくハウンドだ、絶対に離れるなよ。」


俺を含め5人とも静かに頷く。


俺ともう一人佐竹という名前だったと思うが、抜剣し警戒する。


しばらくたった後、


「そっちに行ったぞ!」


というほかの騎士の警戒を促す声とともにハウンドがクロレ二に襲い掛かった。


ハウンドに噛みつかれそうになったクロレ二は咄嗟にバックラーでハウンドを受け止め持っていた直剣をすぐに離しバックラーの裏に仕込んでいた短剣を顎の下から突き刺し掻き切った。


その一連の行動に一切の迷いはなく洗練されていた。


クロレ二は油断することなく短剣の血を拭い、直剣を倒れているハウンドに振り下ろす。


戦闘を行う音が周囲から聞こえる。


俺たちはハウンドを目の前でクロレ二が簡単に倒したこともあり油断していた。


「サタケ!」


クロレ二が声を上げる。


「えっ」


佐竹が驚くとともにハウンドに奇襲を受け地面に押し倒される。


俺は強張った体を何とか動かしハウンドに向かって態勢を崩しながら剣を振る。


クロレ二は1体のハウンドと対峙している。


ハウンドは俺に向かって姿勢を低くして突進し喉元に噛みつこうととびかかってくる。


何とか剣を盾にハウンドからの噛みつき攻撃を防ぐ。


噛みつかれた剣はミシミシと軋み次の瞬間には半分に折られた。


折った剣を器用にハウンドが投げ飛ばし躱せずに左の太ももに突き刺さる。


体中から冷汗が噴出し涙で視界が霞む。


ハウンドはどうやら俺に狙いを定めたらしく連続で攻撃を仕掛けてくる。


右から左へ移動するときに前足で切り裂こうとして来た時は足をもつらせながらなんとか捌けた。


が、その攻撃を躱されたハウンドの行動は早く一度霧の中に姿を消した。


その時間が永遠にも感じるほど長かった。


一瞬の静寂の後、右方向から音もなく緑色の光を薄く纏ったハウンドが飛び出してきた。


全く音が聞こえなかったが、風魔法で音を消したのだろうか?


自身の首を隠すように右手で守ったため右手に噛みつかれる。


そのハウンドの勢いをそのまま使って後方にハウンドを叩きつけ、右手で抑え込むように馬乗りになり暴れるハウンドを何とか押さえつける。


「楽しかったぜ犬っころ」


ハウンドの頭の近くの地面に手を置き一気に魔力を地面に流し込み隆起させる。


土が細い円柱状に30㎝程隆起しハウンドの頭を貫き、そのまま俺の右目の横も切り裂いた。


視界が真っ赤に滲む、だが体は動かない。


魔法のコントロール難しすぎるだろ。


なぜうまくいったのか全く分からない。


ステータスを見てみるとHPが3/15になっており、しばらくすると2になった。


楽しかったぜ犬っころってダサいよなぁ、なんかもっといい言い回しあっただろ、、、。


クロレ二が何か言っているような気がしたが聞こえない。


はぁ死にたくねぇなぁ。







毎話読んでくださっている方本当にありがとうございます。

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