スーパー魔法少女(ミノタウロス付き)
俺たちは何とかリビングアーマーたちを凌いでいた。
アンの魔力には限界がある。
勿論レイはそれ以上の速度で無くなる。
俺がフォローをするべきなのだが、あまりにも強い。
剣技のみでは正直一体相手でも勝ち目がない。
それほどに洗練されており早い。
だがニシダやヒラタはすぐ近くまで来ているリビングアーマーたちを無視し、遠距離から前衛のフォローを行っている。
これは俺たちへの信頼なのだろう。
相手の剣を何とか逸らし、自身の剣を地面に突き立てる。
剣が軋むが、レイは隙を見逃さない。
鎧の中央にある核を叩き壊す。
だが、数十体いるうちの一体だ。
勇者たちはそれ以上の数を抑え込んでいる。
人間のそれではない。
二体同時に来たが、片方をキノシタが一人で止めてくれた。
俺たちはもう一体と戦闘を開始する。
ニシダはキノシタを援護しているようだ。
剣筋がさっきのと酷似している分多少やりやすい。
だからといって、勝てるとは誰も言っていないが。
右に左に、重い剣が叩きつけられる、手がどんどん痺れていく。
このリビングアーマ―はレイの強襲をものともせず、剣の鞘で
受け止め、俺との鍔迫り合いを維持したまま、器用にレイを蹴り飛ばす。
すぐに切り込むが、余裕をもって受けきられる。
レイは問題なさそうだが、実際のダメージはわからない。
多少強引に攻めたいのだが、雑に踏み込めば、通常よりも早い薙ぎ払いを毎回行ってくる。
本当に魔物なのだろうか?
意識のある人間と戦っているようだ。
ゆっくりと手が近づいてくる。ぎりぎりで反応できたが、掴まれていたらもれなく殺されていただろう。
長い間膠着状態が続いた。
危ない場面も多々あったが、レイとアンがフォローしてくれたため、なんとかまだ、死んでいない。
ニシダのヘルフレイムの大部分は防がれているが、完全に防がれていたかといえばそうではない。
軽く当たっているものもいたが、鎧そのものが相手だ。
剣は勿論火も通りにくい。
勇者の火属性の攻撃?が通らなかったのだ。
俺は剣を振りまわして、レイとアン、ニシダやヒラタに近づかれないように牽制するしかない。
運がいいことにリビングアーマーは強引に攻めてくることがない。
なぜだろうか?戦闘を楽しんでいたりするのだろうか?
だが、こいつらは鎧だし魔物だ。
まあ、こういったことを考えている暇もないのだが。
リビングアーマーの剣が光り、高速で剣が躍る。
ヒラタが防御魔法で守ってくれたため死ぬことはなかったが、体が竦んだ。
もし人がこれほどの剣技を極めようと思えばどのくらいの時間がかかるのだろうか?
キノシタたちがもう一体を倒したようで、加勢してくれた。
それからはかなり楽で、キノシタはあまり単純な戦闘力としては目立っていなかったが、実際に一緒に戦うとわかる。
俺たちは邪魔なのではないだろうか?そう思うくらいにはキノシタは強かった。
正面をキノシタがキープし続けてくれたことで、レイと俺が同時に左右から攻め込むだけで問題なく核を壊すことができた。
キノシタはすぐに動き出しており、よく見るとカケルが壁を蹴ってリビングアーマー達の中心に突っ込んでいた。
その突撃自体は阻まれたが、キノシタたちが一気に攻めたことで7体のリビングアーマーが倒れた。
問題はその後だ。
ニシオが首に攻撃を受け、傷を負い、助けようとしたカケルが撤退に失敗した。
その瞬間リビングアーマー達が発光した。
まばゆい光と断続的な轟音。
真っ赤な瞳に透き通るような白髪の少女がミノタウロスを従え立っていた。
先ほどまでいたリビングアーマーはすべて倒したのだろう。
地面が穴だらけになっている。
「儂はおぬし等に敵意はない。」
そう言ってゆっくりとカケルに近づいて行く。
リビングアーマーとの戦いで感じた恐怖は恐怖ではなかったのだろう。
身体が動かず、息ができない。直視できない。
カケルの手を掴み、カケルの手にくっつけると魔法を唱えた。
魔法陣からして高位の神聖魔法だろう。
「それ以上近づく、な?」
ニシオを引きずっていたキノシタが剣を向ける前にキノシタは少女から顎を撫でられていた。
「おぬしは勇気があるのじゃな。だが、蛮勇と勇気は全くの別物じゃ。まあ、今は良い。勿論これ以上は近づかんよ。」
そう言うとニシオに手を当てて神聖魔法を唱えた。
まるで何事もなかったように、立ち上がり、先に進んでいく。
「安心したまえ、このダンジョン?は機能できんようにしておく。弱い貴殿等はお家に帰りたまえ。こんなところで仲間を失うのは嫌じゃろ?」
俺たちの横を少女とミノタウロスが歩いて通り過ぎていく。
立っていられないほどの圧に体が震え、視界が歪み、吐き気が強くなる。
足音が聞こえなくなり、力が抜ける。
カケルとニシダは無事で、完璧に治療してあったそうだ。
二人が目を覚まさないうちにダンジョンから脱出した。
ダンジョンを出ると、簡易的に作られたはずの砦が明らかに大きく、見るかからに丈夫になっており、中にいた勇者たち、それからクリハラたちが倒れていた。




