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侮るなかれ


「翔殿、リビングアーマーが!」


浅沼達が、リビングアーマーと共にこちらに戻ってきた。


正確には、リビングアーマー達との距離はまだある。


今何とかダークオーガを倒したところだ。


足音は聞こえていた。


「強さは?」


「1対1なら問題ないでござる!」


つまり、あの数相手では厳しいのだろう。


だが、現在ダンジョンがどうなっているかわからない。


入ったばかりでダークオーガと戦闘になるようなダンジョンなのだ。


「周囲にはリビングアーマー以外の反応はありません。」


平田がそう言った。


「ありがとう平田さん。ダンジョンの先がどうなっているかわからない以上、強引にでも、撤退します。」


そう言うと、全員が頷いてくれる。


「残りのMPは?」


「わかっているとは思いますが、浅沼さんが1対1ならと言いました。今は問題なくとも、持ちません。」


木ノ下は、語調が少しあれているがかなり落ち着いている。


それよりも問題はカリスたちだ。


カリス達の戦闘力を低いと捉えているわけではない。


勿論、栗原や瀬戸には劣るだろうが、冒険者としての経験もある。


まあ、平静であれば、だが。


カリスの腕や脚は、小刻みに揺れている。


武者震いだといいのだが。


申し訳ないが、カリス達か、他の勇者どちらかしか助けられないのなら、俺は迷いなく勇者たちを選ぶ。


可能であれば両方助けるが...。


俺はこの世界の人間を、俺たちと同じ、生きている人間だと上手く認識できない。


正確に言えば、元の世界の人達の命よりも、この世界で生きている人たちの命が軽く見える。


俺はきっと勇者には向いていない。


俺は、自分が楽しく生きていくために行動している。


こんなわけのわからない世界で、見ず知らずの人間たちのために死ぬつもりはさらさらない。




どんどん金属音が迫ってくる。


俺を含め、魔法の詠唱は済んでいる。


作戦は簡単で、敵がある程度近づいてきたタイミングで魔法を斉射。


俺がレクレッタを発動させ、西尾と正面から突っ込み、雑に突破する。




いくらリビングアーマーそれぞれがつよくとも、勇者たちの魔法の一斉攻撃を無傷で済ませることはできないだろう。


とれる対策は限られている。


やってみるしかないのだ。




リビングアーマー達は見たことのない装飾の薄汚れたもともと真っ白だったであろう鎧をまとってi

る。


剣や盾槍など同じような装飾が施してある。


彼らはもともと人なのだろうか?


だとしたら消えないのか?


だがここはダンジョンの中だ。


ここで中規模の部隊が消えたのなら、どんな形であれ伝わっているはずだ。


授業で習ったものとは見た目がずいぶん違うが、アレがこの世界の普通のリビングアーマーなのかもしれない。


今いる場所は横幅が8mほどはある。


ある程度散らばっているおかげで突破は楽だろう。




「ホーリースピア!」


俺が3本の光の槍を放ったと同時に他の勇者たちも魔法を放つ。


アンはファイヤ―スピアを10本以上飛ばしている。


勇者顔負けの魔法力だ。


魔法力とは何だろうか?


まあ、どうでもいいが。


「魔力が...?」


平田が何か言っているが、特に問題はないだろう。




複数の属性が混ざり合うように直撃し、爆発が起きる。


西尾と目を合わせ一気に走りだす。


「レクレッタ。」


ダークオークとの戦闘でもかなり消耗している。


長い時間は戦えない。


魔力で土煙を吹き飛ばす。


「なっ」


体を逸らし、土煙消えると同時に突き出された槍を躱す。


なぜ一匹も減っていない?




体勢を崩した俺にリビングアーマー達は容赦なく攻撃をしてくる。


さっきまでの行進速度とは大違いだ。


剣を何とか受け止めるが、体勢が良くなかったこともあり押し込まれる。


「翔!」


西尾が牽制するように大剣を薙ぎ払う。


「うっそだろ」


大剣は一匹の鎧に食い込み止まる。


リビングアーマーは大剣を掴み離さない。


そんな西尾に対して3方向からの同時攻撃。


間に合わない。




「障壁!」


平田の通常の声からは想像できないほどの、切羽詰まった声が聞こえ、西尾に向かっていた剣や槍が寸前で弾かれる。


「ないっすぅ!」


西尾は刺さったままの大剣を、そのまま強引に振り回し、2体のリビングアーマーを斬り飛ばす。


切り離されたリビングアーマー達は一瞬で粒子化する。


どうやら魔物で間違いはないようだ。



少し目を逸らした瞬間、


「翔殿!」


浅沼の忠告が聞こえるころには目の前にリビングアーマーがいた。


何とか首は逸らしたが、リビングアーマーの一撃は、俺の左肩を深く切り裂いた。


「クソッ」


ヤケクソ気味に剣を振り返すと受け止められた。


距離を取り、再度距離を詰め、何度か剣をぶつけるが隙が無い。


剣の動きは軽やかで、重く、早い。




「冷静になるンゴ!」


宮田が俺に迫っていたもう一方からの別のリビングアーマーの斬撃を防ぎ俺を掴んで後退。


すぐに


「二発目、受け取りなさい!ヘルフレイム!」


西田の声と共にリビングアーマー達が火に包まれる。


今度ははっきりと見えた。


先頭にいるリビングアーマーが剣を地面に突き立てており、青みがかった膜のようなものが見える。


平田と同じような防御魔法なのだろう。




「翔氏が死ねば、我々は終わりンゴ。」


宮田はリビングアーマー達を睨みながらそう言った。



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