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宮田君の悩み事


「おはよう宮田君!」


「おはようンゴ、西田さん。」


「マキって呼んでって言ってるじゃん!」


「...おはようンゴ、西田さん。」


そう言うと彼女は不服そうな顔を浮かべる


「木ノ下君とか浅沼君のことは〇〇氏って呼ぶよね?」


「そうンゴが?」


「じゃあ、西田氏って呼んでもいいよ?」


いたずらに笑う顔がとても綺麗で勘違いしてしまいそうだ。


自分は、ずっと西田舞姫さんにからかわれている。


本当にいちいち可愛いのがまずい。


西田さんは幸多朗氏をバカにしていたのだ。


仲良くできるわけがない。


「で、今日はデートしてくれるんだよね?」


「買い出しンゴ。」


「でも、二人っきりだから、デートだよね?」


「自分は朝ごはん食べに行くンゴ。」


「ちょうどよかった、私も食べてなかったんだよね。」


西田さんを無視して歩く。


「ちょっと待ってよ!」


西田さんが早足でついて来る。


「今日も朝から熱々でござるなぁ。憧れるでござるよ。」


「浅沼さん、我々お邪魔虫はこの辺で退散しましょうか?」


「そうでござるね。」


浅沼氏と木ノ下氏はそう言い二人で行ってしまった。


「ねえ、まってってば!今日買い出しに行くんだし、打ち合わせとかしようよ!」


「そう言ってきて、西田さんが打ち合わせをしてくれたことは、今までに一度もないでござるよね?」


「え?そうだっけ?...でも、私みたいな可愛い女の子と一緒にご飯食べれるんだからいいでしょ?」


「一人で食べるのが好きンゴ。」


「よく木ノ下君とか、浅沼君とご飯食べてるじゃん!」


「それに自分と食べるよりも、佐伯氏みたいな面白い方と食べたほうが建設的ンゴ。」


西田さんがいきなり立ち止まったため、止まって振り向くと。


「佐伯君は嫌。」


西田さんは表情を少し曇らせそう言った。


「それに、宮田君といたほうが楽しいもん。」


そう言い、柔らかい笑みを浮かべてきた。


心臓に悪いンゴ。


すぐに顔を背けたから動揺していることは伝わっていないはずだ。




なし崩し的に食事を一緒に食べた。


「あのさ、」


「ンゴ?」


「さっき佐伯君のこと、佐伯氏って呼んでなかった?」


「憶えてないンゴ。」


「もしかして、私だけ、特別扱いしてくれてるの?」


「絶対にないンゴ。」


「えー、でも、」


「西田氏、これでいいンゴか?」


「うん、ありがとう!」




そもそも女性とほとんど喋ってこなかったこの人生で、初めて一人の女性とこんなに話した。


まあ、話しただけで、西田さんのことは何とも思ってはいないのだが。



食事中に否応なく強調される、その、柔らかそうな唇に目がいってしまう。


そして目が合う度に、西田さんは小動物のように小首を傾げてくるのだ。


本当にどういうつもりなのだろうか?


モテない陰キャをからかって楽しいのだろうか?


反応したら負けだ。




「じゃあ、デートいこ?」


食事が終わってから、補給物資のリストをもらい、集合した途端に言われた。


控えめに出された手が庇護欲を掻き立てる。


どうせこれも演技だ。


「デートじゃないンゴ。」


西田さんを無視して出発する。




リストはいつもと変わらない。


食料品のほかに、消耗品。


タオルやポーションなどだ。


筋力値で言えば、自分より強い人はいるが、水を使って多く荷物を自分は持つことができる。


じゃあ、西田さんは?


洋服を見たり、みんなのお金で買い食いをしたりしている。




「え?でも、私の稼いだお金も入ってるよ?」


お金は、魔物のドロップ品の売却額の半分を共有財産として集めるという決まりになっている。


「でも、今まで見逃してる宮田君も同罪だね?」


舌をペロっと出して、出店に向かって走っていた。


何なのだろうか?




買い出しは空が茜色になるころには終わった。


西田さんは何かを買って戻ってきて、食べながら、何かくだらない話をしてきて、飽きたらまたすぐに、一人で行ってしまい、アクセサリーを買ってきては自慢し、くだらない話をして、買い出しの邪魔をしていた。



「そういえば、」


西田さんが帰り道で思い出したように喋りだした。


「ンゴ?」


「宮田君って案外優しいよね?」


「ンゴ!?」


西田さんは何を言っているのだろうか?


「だって、今も、こんな長い間、私と話をしてくれてるもんね?」


「自分は西田さんのことは嫌いンゴ。」


「今は、それでいいよ。」


少し先に駆け足で進み振り返って、少し悲しそうな笑顔で笑いかけてくる。


「今は、だけどね?」


いたずらそうに笑いすぐに隣に戻ってきた。


今のは何ンゴ?


心臓が爆発するかと思った。


「ほら、私をエスコートしなさいよ。」


「両手が塞がっててエスコートなんてできないンゴ。」


「じゃあ、もって上げるわよ。」


右手に持っていた袋を西田さんは無理やり奪い取ってくる。


柔らかい手が触れドギマギしてしまう。


すぐに右手が柔らかい感覚に包まれる。


「離すンゴ。」


これは、恋人つなぎというのではないのだろうか?


柔らかい手は思いっきり振りほどけば折れてしまいそうだ。


「嫌いな人と、噂されちゃうね?ゴウ君?」


覗きこみながら、いたずらに笑いかけてくる。


心臓は早鐘を打ち、明らかに体温が上昇している。


「荷物を落としそうだから、やめて欲しいンゴ。」


「嫌だからヤメテ、じゃないんだ。ふーん。」


西田さんは、今日一番の笑みでそう言った。


「水よ、」


「ちょっとまっ」


「私と一つに。ンゴ!」


体が液状化する。


そのまま自分は逃げるように仮拠点に戻った。





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