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モモタロウさんは、盗賊さん


街道を進み3日たった。


足もかなり疲れてきたが、話し相手がいて、安心して寝ることができるというのはずいぶん大きい。


エレノアはやはり常に気を張ってしまっているが、仕方ない。


何とかフォローしようとしているのだが、俺が口下手すぎて、まったく上手くいかない。


「コウタロウ様、少しよろしいでしょうか?」


「ああ、少しじゃなくてもいくらでも。」


「ありがとうございます。」


少しエレノアは逡巡する様子を見せたが、目を見開き勢いよく言った。


「私に剣の扱い方を教えてください!!」


「剣を?どうして?」


「槍を持たせてもらっているのにも関わらず、申し訳ありません。」


「全くそんなこと思っていないよ。エレノアがそうしたいならいいんだ。何か理由があるの?」


「先日のダンジョンでの戦闘など、狭い場所では基礎のなっていない私では、槍という武器が上手く扱えず、コウタロウ様にお手数おかけしてしまうこともあったので、基礎を磨くという点でも教えて欲しいと思い、その...。」


「ああ、わかったよ。じゃあ、昼食前くらいに進むのをやめて少し練習でいいかな?」


「ありがとうございます!」


「いや、こっちこそ。」


なんでもないと首を振り、会話を打ち切る。


エレノアはこうしたときにほとんど突っ込んでこない。


これは奴隷商の元にいるときに仕込まれた技術なのか、生来の性格なのかはわからない。


だが、俺はすごく楽だ。


申し訳ない気持ちもあるが、実際に自身の考えていることや、気持ちの部分を正確に言語化できるわけではない。




話しのネタもほとんどない。


ほとんどは嘘で、全くない。


出身の村が襲われたというような話も何となく聞いている。


家族の話もエレノアは笑顔で答えてくれはしたが、エレノアは話したくなかった話なのかもしれない。


それに俺も自覚はしているが、話の内容が前回と被ることが多い。


わかってはいるが、実際に前回と違う話に誘導することができるかどうかは別の話なのではないだろうか?


もしかしたらコミュニケーション能力が狂っているような人間はできるのだろうが...。


スキル習得欄に【トーク力上昇】などがあったら間違いなく習得するのに。


異世界に来たら可愛い子に囲まれて、強い敵をいとも簡単に倒して、なんて思っていたが、俺はそもそも女のこと喋れないし、弱い。


そんな俺に気遣ってか、エレノアから話を振ってくれる。


エレノアは俺の家族や昔のことについて触れようとしない。


エレノアの地雷は、踏めばエレノアが傷つくだけだが、俺の地雷はエレノアの立場を悪くする可能性のあるものだ。


まあ、そんな地雷などないが、その上で話しているから、当たり障りのない話をゆっくりするのだろう。


抱きしめてやりたくなる。


そんなことしても嫌がらせにしかならないだろうが。



「コウタロウ様は好きなこととかありますか?」


「好きなこと?」


「はい!」


こんな風に自然に話を振れたらいいのだが、


「そうだな、本を読むことは好きだったよ。」


「好きだった?」


「ああ。今はそんな余裕ないからな。」


何が、余裕がない、だろうか。


俺の喋る言葉すべてが失言だらけだ。


エレノアの顔が一瞬曇り、すぐに笑顔になる。


「すまない、今のは、剣の練習が無駄、無駄じゃなくて、その、なんていうか...。」


「いえ、気にしていません!ありがとうございます。」


「すまない、ありがとう。」


エレノアは天使のように微笑み、


「どんな本を読まれたんですか?もしよければ聞かせてください。」


「桃太郎。とかは?」


「モモタロウ?」


「ああ。果物から生まれた子供の話だ。」


「そんな種族がいるのですか?」


「いや、作り話だと思うが、探せばいるかもしれないな。」


エレノアの顔はいつも以上に明るい。


「むかしむかし~」





「財宝はみんなに返したんですか?」


「確か返していなかったんじゃないかなぁ」


「返さなかったんですか!?」


「ああ、確か。」


「モモタロウは盗賊みたいな方ですね。」


「確かにそう捉えられるな。」


「でも、食べただけで仲間になりたくなるきびだんご?は、食べてみたいですね。」


エレノアは本当に楽しそうだった。


もし、エレノアが奴隷にならなければ、どんな性格の女性になっていたのだろうか?



「おそらく魔物が来ます!ハウンドと推測されます!」


エレノアの顔が真剣なものになる。


エレノアの索敵範囲はかなり広いのだろう。


しばらくした後に俺も視認した。


問題はハウンド5体がこちらに一切興味を持たずにそのまま走っていったことだ。


「ハウンドだったよな?」


「はい、確かに。」


もしかしてハウンドに似た普通の犬や狼だったのだろうか?


この世界で俺の常識で考えることや、決めつけは危険だ。


「もしかしたら何かに追われていたのかもしれないし、ここで一旦休憩しようか?」


「はい。」


「剣の練習、する?」


「お願いします!」


少し剣の基礎の型を教え、反復してもらう。


正しい型かはわからないが、おそらくあっているだろう。



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