表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

131/153

デート


駐屯地から西に7人で向かう。


馬もないため、全員走ることが望ましいが、ケガをしているエルトがいる。


傷も浅くないため無理はさせられない。


すぐに魔物との戦闘になった。


相手はオーク1体にゴブリン8体だった。


森に近いからといってもあまりに多い。


けが人は何とか出なかったが、魔力は全員残っていない。


あるのは疲労とボロボロの装備くらいだ。


マキラの持っていた剣に至っては折れた。


マキラはゴブリンの持っていた錆びたナイフを拾っていた。



西の駐屯地についたが、転がっているのは死体だけだった。


「落ちたのか...。」


ここはかなり長い間落ちたことがなかった砦だ。


問題はゴブリンやハウンドのドロップアイテムが少しもないことだ。


話し合った結果、すぐに撤退するということになった。



「エルト、大丈夫?」


「ああ。お嬢さんは?」


「まあまあね。」


「そうか。」


「聞きたいことがあるんだけど?」


「どうしてそんなに顔が整っているのかって?」


「はぁ。ほんっと元気ね。」


「どうも。で、なに?」


「私は確かにテントの中にいたけど、呼びかけられるまで、全く気付かなかった。」


「俺たちもだよ。平地で油断してたかもしれないが、あり得ない。」


「じゃあ、近くにいきなり出現した?」


「ああ。そう考えるべきだろう。それで、迎撃準備ができず、遠距離からも削れずに近距離戦だよ。」


「なるほど。」


もし本当にどこにでも出現するのなら早急にダンジョンを潰さなければならない。


「そう言えば、」


「なに?考え事中なんだけど?」


「俺のことについてか?」


「ハイハイ。だから静かにしててね?」


エルトはいつも通りだ。


「なら、尚更聞いてくれ。」

だが、真面目なトーンだった。


「何?」


「もし、いや、もしじゃなくて。」

エルトは剣を杖のようにして立ち上がる。


「戻ったらデートでもどうかな?」


「ここから?」


「ああ。」


「どこが真面目なのよ。」


「俺はいつだって真面目だろ?」


「ハイハイ。そーですね。そろそろでしょ?じゃあ行くわよ。」


「ああ。」


「手でも貸してあげよっか?」


「胸の方がいいかな。」


「ハイハイ。まあ、胸は触らせないけど、帰ったらデー、」


いきなり突き飛ばされる。


金属のぶつかり合う音が聞こえた。


「っ...。っは。」


エルトの脇腹に杭のようなものが突き刺さっている。


「え?」


「う..ぇ.。」


うえ?振り返ると骸骨が空中に浮かんでいる。


ワイトと呼ばれるスケルトンの上位種だろう。


さっきの金属音はエルトが何とか杭を逸らしたのだろう。


気づいた他の騎士たちが魔法を飛ばす。


ワイトは悠々と躱し、何かを詠唱している。


騎士たちは駆けつけてきた。


「杭を引き抜け!!」


「出血するだろ!」


「ポーションがある。」


「中級じゃないだろ?」


「じゃあこのまま置いていくってのか?」


揉める騎士たちをよそにワイトは詠唱を続ける。


「何か来るぞ!」


空中でワイトの杖を中心に紫色の魔法陣が広がる。


「何かなったか?」


「いや、」


私も特に異変は感じない。


地面から音がする。


すぐに地面から大量にスケルトンの腕が生え始めた。


ワイトは森のある方向にふよふよと飛んで行った。




「俺は置いてけ!!」

エルトが大声で叫ぶ。


「できるわけ、」


「時間がないだろ?お前らが強くないことなんかわかってんだよ!さっさと行ヴぇ!」


エルトの口から真っ赤な唾が飛ぶ。


スケルトンはこの拠点を中心に出現しているのだろう。


マキラはエルトの手を握ると

「わかった、すまない。」

そう言った。


「足をひぱった。早くいけ。」

エルトの声は震えていた。


スケルトンがもう何体か這い出している。


「行くぞ!」


マキラは目に涙を浮かべ、そう言った。


這い出している魔物を切り飛ばし、砦から出る。



砦の周囲にもスケルトンが出現していた。


エルトの顔がちらつく。


「一気に突破する!止まるなよ!」

マキラが叫び。


5人が呼応する。


今更戻って、もしスケルトンをすべて倒せて、それでもエルトは助からない。


5人が一気に進み始めた。


「私はここで死ぬ!みんなは絶対に生きて。」


走って、来た道を引き返す。


何か言われた気がする。


そんなことはどうでもいい。


私はエルトを見捨てられない。


エルトの死が無駄になっても、それでは私の生きる意味がなくなってしまう。


エルトの周囲にいたスケルトンを力任せに斬り飛ばす。


「マリ...ミ...ヤ?」

エルトから力の抜けた声が聞こえた。


「デートしてくれるんでしょ?」

精いっぱい笑顔でそう言った。


エルトが何かを言おうとしているが、どうせいつも通りくだらない話だろう。


泣き顔や泣き声は、イケメンであっても見苦しい。


「...さぃングッ...。悪だっ...。」


せっかく来てあげたのになんてことを言うんだろう。


「私は、あんたといた時間は最高だったよ。できれば本気で口説いて欲しかった、かな?」


「俺...だっ...て。は...。」


エルトがゆっくりと立ち上がる。


スケルトンは警戒するように距離をとっている。


エルトは立つのもやっとだろうに、自身の腹に突き刺さった杭を抜き、抜剣する。


「「愛してるよ(わ)、相棒。」」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ