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きっと、結果が重要、契約相手があくまでも...。


コウタロウ様は死んだ冒険者からほとんどアイテムを回収しなかった。


お金も見てはいたが回収しなかったのだが、ランクタグだけは全員から回収していた。


服飾屋のリラさんも言っていたが、リラさんにも同じようなことをしたのだろうか?


冒険者は家族がないものが多い。


捜索依頼が出ることもほとんどない職業だ。


そんな彼らのランクタグを回収する必要があるのだろうか?


それとも、本当に善意のみでやっているのだろうか?


リラさんにお金を渡されたときも断っていた。


最終的には私が今装備させてもらっている外套をただで作ってもらうということでまとまったが。



目的はいまではなく、ダンジョンを出てから聞こうと思う。


油断は敵だ。


実際にこのダンジョンで4人の冒険者が殺されているのだ。


床には血が一面に広がり、天井や壁を濡らしている。


顔や手足も潰れている人がいるため、ゴブリンやハウンドにはできないだろう。


だが、立て札にはそう言った記述は何もなかったのだ。


なら外から入ってきた?


いや、外には多くの冒険者がいる。


そもそも、このダンジョンに強い魔物が全く出現しないなんて誰が言い切れるのだろうか?


コウタロウ様の判断で引き返すことになった。


コウタロウ様は最後まで彼らを気にかけていたように思う。


もしかして知り合いだったのだろうか?



帰りは魔物がミノタウロス以外は現れなかった。


ミノタウロス以外は...。


人の体に牛の頭。


ダンジョンの守護者なんかと呼ばれるそれだ。


言い伝えでは狼人に魔王側につくよう助言しに来たのがミノタウロスだったという話だ。


あのミノタウロスに知性があるようには思えないが...。



「グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」


現実感がなかったそれが急に現実感を持ち、恐怖で体が強張る。


その瞬間背中を軽く叩かれ、コウタロウ様は私の手を掴み迷いなく入り口に向かって走っていく。


私もすぐに走り出す。


ふれられた場所が温かい。



何とかダンジョンを出たが、ミノタウロスさんはどうやら諦めてはくれないらしいです。


「戦闘準備!!」


コウタロウ様がそう叫んだ瞬間にダンジョンへの大きくはない入り口が吹き飛ぶ。


「は?」


周囲にいた冒険者が固まる。


「グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」


再度咆哮。


だがここにいるのは弱い冒険者がほとんどのはずだ。


コウタロウ様はどうするつもりなのだろうか?




「全員俺が気を引く、俺に当たっても構わないから全力で撃ち込んでくれ!」


そう言って叫ぶが誰一人動かない。


状況が分かっていないのだろう。


「エレノアは戦えない人の避難を。」


「はい!」


コウタロウ様はミノタウロスに突進する。


私が近づけばコウタロウ様の邪魔になってしまうだろうか?


できることなんて限られている。


「協力を!ダンジョン内でミノタウロスが!!」


「あり得ない...。」


だが事実目の前ではコウタロウ様とミノタウロスが戦っている。


「君もわかってるだろ?申し訳ない。」


「サリュの村に救援をお願いします。」


「ああ。すぐに。」


もうすでに数名の冒険者たちは逃げ出した。


今喋ってい冒険者たちもいってしまった。


人の気配は簡易的な建物の中からするが、あの大きさの咆哮が聞こえて起きない冒険者がいるのだろうか?


コウタロウ様なら可能なのだろうか?



ミノタウロスの剛腕から繰り出される大斧を丁寧にいなしている。


少しの間ならあの戦闘に参加できるだろうか?


また私はコウタロウ様に迷惑をかけるつもりなのだろうか?




衛兵もいたはずだがもう一人もいなかった。


建物の中にいたのは商人4名と娼婦数名だけだった。


「逃げられますか?」


「コウタロウ様が負ければサリュに被害が及ぶかもしれません。可能なら早めに移動を。」


「しかし我々はたたっひぃぃ!」


一人の商人が喋りながら悲鳴を上げる。


私の頭ほどの石の塊が建物の壁を突き破り私と商人の間を通り過ぎて行った。


ひきつる顔を何とか抑え、


「私は護送はできません。ここで逃げて外の魔物に殺されるか、ここで怯えて死ぬか選んでください。」




「撤退は完了しました!」


コウタロウ様は振るわれる大斧をコンパクトに躱してはミノタウロスの太ももや腹を確かに切り裂いていく。


私は本当に何のために買われたのだろうか?


持たせてもらっている槍も、今は握りしめることしかできない。




戦況はもうずっと長い間膠着しているように見える。


まだ救援は来ないのだろうか?


私が走って危険を伝えに行くべきだっただろうか?


ミノタウロスが斧を叩きつける前に体を捻らせ、変則的な軌道で斧を振り下ろした。


コウタロウ様の対応が遅れ、体勢を崩した。


ミノタウロスの攻撃は止まらない。


流れるようなミノタウロスの連撃は空を切り地面を叩き割る。


コウタロウ様は何とかついていた左足の部分の土を隆起させ、躱していた。


本当に近距離戦が得意なのだろう。


ミノタウロスの持つ斧が地面に刺さったまま抜けずに動きが一瞬固まった。。


コウタロウ様はその隙を見逃さず、ミノタウロスの斧を使って回転しながら跳躍、流れで目を斬りつける。


「全員ここから離れたんだな?」


「はっはい!!」


「よくやった。畳みかける、引き続き警戒を。」


そう言うと、コウタロウ様は目を押さえているミノタウロスに向かって走っていく。


ミノタウロスは待っていたとばかりに目を見開き、コウタロウ様の首を掴んだ。


「グッ」


私の体は弾かれるように動き出す。


体に力を込めるイメージをするとすぐに力があふれ出す。


勢いを落とさずに跳躍、目を槍が確かに貫き、その生生しい感触が槍から伝わってくる。


が、ミノタウロスは私に目もくれず、コウタロウ様の首を絞め続ける。


「コウタロウ様を離せぇえええええええ」


槍をミノタウロスの顔から力任せに引き抜き、腕や足、顔をや胴体をめちゃくちゃに斬りつけるが相手にさえされない。


コウタロウ様の顔が徐々に青ざめていく。


コウタロウ様の仮面が、目がこちらを捉えると穏やかな表情になった。


「ぃ、げろぉ...。」


コウタロウ様の体からどんどん力が抜けていっている。


「できません!!」


全力で槍を叩きつける。


もっと力がありさえすれば...。


槍は体を薄く切り裂いているが、全く致命傷にならない。


力が、




『あれ?君、まあ、なんでもいいや。』


時が止まったように、いや止まっているのかもしれない。体は動かず、中性的な声が頭の中に流れ込んでくる。


『正確には止まってないよ。でも、もう君の主人は死んじゃうね。』


貴方は?そう思うが、声さえ出ない。


『私が誰でも今は関係ないだろう?私は君の望むものを与えられる。今重要なことはそれだけじゃないかな?』


どうすればコウタロウ様を助けられますか?


『じゃあ、契約だ。絶対にエレノア、君の主人コウタロウを救うと。その代わり、』


「構いません!!」


声が出た。


『代償は...。まあ、その時が来るまで私は貴方に忠義を尽くそう。』


力が漲ってくる。


コウタロウ様を掴んでいる忌々しい腕に向かって槍を強引に振り上げた。


コウタロウ様が地面に落ち、鮮血が私の顔を濡らした。


ミノタウロスは驚き、だが変則的な動きで私を蹴り飛ばした。


「ウッぎ」


「エレノア!!」


コウタロウ様がすぐにフォローに来てくれる。


いきなりで全く対応できなかったが、私であれば死ぬような威力であったにも関わらず、死ななかった。


誰かのおかげだろう。


今ならコウタロウ様の役に立てる。


ミノタウロスがこちらに突撃しようとした瞬間ミノタウロスの動きが鈍り、次の瞬間には悲鳴を上げた。


ミノタウロスがにらみつけた方向にはあの勇者たちが立っていた。


「また会ったね。ミルレさん、エレノアさん。」







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