実践指導員、シルヴァ・ローレンス
私の名前はシルヴァ・ローレンスだ。
一応第二貴族出身ではあるが、第一子ではない上事務仕事が向いている性格ではなかったため、幸運とも言える。
まあ、第一子であったとしても家を出たかったため、結局は剣を振るっていたとは思うが。
志願理由は王の口車に乗せられたというか、もともとは冒険者出身をしていた。
大規模な魔物及びダンジョンの掃討を王国からの依頼で王国兵と共同で行った際に王を助けたことで気に入られた。
現王であるアルノヴァ・エンデはその時
「貴方には具体的な目標がありますか？」
と聞いてきた。
「酒と女の為に武器を振ってる私に聞いていますか？国王様？」
私がそう答え首を横に振るとエンデはおかしそうに笑い、
「それは嘘ですね。でも貴方とはいい友人になれそうです。」
そう言った。
「勘弁してください、身分の違いを考えればわかりますが、きっとよくは思われませんよ。それを抜きにしても私は国王様とウマが合うとは思いませんね。貴族様たちとお茶会でもするほうが私といるよりも楽しいと思いますが？」
エンデの護衛にはこれでもかというほど睨みつけられたが、エンデが笑いながら護衛を制し
「私には夢があります、野望といってもいいですが。」
「国王様の夢は聞いてないですが？」
「王の言葉を遮るとは挑戦的ですね」
「友人になれといった次の瞬間に身分差を持ち出すんですか？」
「私は国王様ですよ？」
笑っているのは一人なのに大爆笑という言葉が適切に思えるほど笑っている。
「失礼しました国王様」
大げさにため息をつくがエンデはまったく気にしない。
「私は私が王である間はどんな犠牲を払っても、悪魔や魔王に魂を売ってでもすべての国民を守りたいんだ。」
「大層な夢ですね。幸せになる国民の中に国王様を守っているそこの兵士やこれまで、そしてこれから死んでいく兵士、スラムの人間は含まれているんですか？」
「きっと含まれていないだろうね。」
穏やかにそう言った。
「私は目標を達成するために貴方が必要だと考えています。」
「それは、私の夢のために死んでくれって言ってるんですか？」
「そうかもしれませんね。でも、そうではないから友人になってくれと言っているのかもしれませんね。」
俺はどこまでも理性的にもかかわらず、自身の夢のために愚直に行動を起こすことのできるエンデに憧れ、惹かれた。俺はその時からエンデの剣であることを誓った。
今はなぜか勇者の実践指導を押し付けられている。
私は我流に近く剣の型も汚いため一度断ったが、武器や体の使い方を指導するものは別に用意しているからどうしてもと押しきられてしまった。
全グループの指導を1回は行ったうえでの感想だがステータスやスキルは凄まじいが、体や武器の振り方がまるでなっていなかった。
勇者たちの住んでいたところは争いがない世界だったのだろうか？。
ただ、カケルという青年は呑み込みが非常に早くそれに加えて、彼がレクレッタというスキルを使うと一時的にレベル５３の私のステータスをレベル１の彼に上回られ驚いた。
もし彼が敵になるようなことがあったなら、きっと私では彼を止めることはできないだろう。
そこはエンデの手腕にかかっているが。
勇者の力があればエンデは目標にもっと近づくことができるだろう。
期待と不安が混じって汗が滲む。
私はエンデの夢を、その夢の先を見てみたい。
そのためにならどんな犠牲を払っても、悪魔や魔王に魂を売ってでもエンデを守り戦うだろう。
エンデの夢の実現、それが私の夢だから。
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