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松崎の休日


残りの勇者が返ってきた途端に翔は木ノ下を連れてどこかに行った。


もしかして何か問題が起きたのだろうか?


「ねぇ。翔君知らない?」


「知らねぇ。」


「私のスキルわかってる?」


「え...使ったの?」


「もち。あたりまえでしょ?」


「仲間だよな?」


「だからこそでしょ?」


金城は笑ってこちらに近づいてくる。


「本当に...知らないんだ。」


声が上ずる。


「死にたいの?」


「嘘ついただけで死ぬんですか?」


「...」


「何か言ってもらってもいいですか?」


金城は突然深刻な顔になり、


「その...誰かとデート?」


そう言った


「翔?」


「うん。」


「違う。木ノ下に用事みたいだぞ。」


「そう...。まあ、それならいいかな。」


そう言いながら金城はまた笑顔になった。


「木ノ下とデートかm」


そう言おうとした瞬間に金城の裏拳が俺の鳩尾を叩いた。


「痛がるフリしないで立ちなさいよ。」


「なにか俺に用あんのお嬢様?」


「そう。多分だけど、ここの村を離れるじゃん?」


「まあ、そうなるだろうな。」


「だから、この村でお洒落な服を買って、それを着て、翔君に見てもらいたいの。」


駄々っ子のように金城は俺の服の袖をつかんで顔を近づけてくる。


昔からの癖のようなものなのだが、心臓に悪いからやめて欲しい。


「他の女の子誘えばよくない?」


金城から離れながらそう言うと、


「あんたはなんにもわかってないわね。」


金城は肩を竦め、


「ライバルに塩を送る女がいると思う?」


「いや、頼めば...。はいはい。今度レベル上げ付き合ってくれよ?」


「まあ、そのくらいならいいけど...。翔君に二人で買い物に行ったとか言わないでよね。」


「言わないよ。ちょっと待ってろ、着替えてくるわ。」


「1分ね!!」


「はいはい。」


なんで俺...、はぁ。


まあ、その、好きな子の可愛い恰好を最初に見れるという特権はある。


キモイ?知らん。


俺が何もしてこなかったのも勿論悪いが...。


中学まではいい感じだったと思う。


夫婦って周りにバカにされてたこともあったくらいには仲が良かったし。


今も仲はいいのだが。



金城とは幼馴染で、ずっと今まで一緒だった。


クラスも中学卒業までずっと同じで運命だとずっと思ってた。


まあ、痛い男の妄想だ。


高校は金城が行くと言っていたから同じところに何も考えず来た。


そのせいで今はこの世界にいる。


俺も顔は悪くないんだがなぁ...。


まあ、翔には勝てんわな。


こういうところがダメなのかもしれないな。



着替え終わり、頭を振って部屋から出る。


「1分以上たってるんですけど?」


「そりゃ移動時間もあるからな。」


待ち合わせ場所は毎回雑貨屋の前だ。


翔に見つからないようにわざわざそこに別々に集まっている。


「まあいいわ。いきましょ!」


「はいはい、お嬢様。」


金城は俺の腕を掴んでずんずんと進んでいく。




「可愛いの、結構多いのよねぇ...。」


もう3着ほど買っており、今は食事をとるために喫茶店のようなところに入っている。


「そう言えば、金城は怖くないのか?」


「ふぁにあ?」


「人だよ、人。冒険者?。あと、口にもの入れてしゃべるなよ...。翔に嫌われるぞ?」


「翔君の前ではしないし、いーんです!!それは少しあるけど、まあ、負けないだろうし、何かあったら翔君が助けに来てくれるでしょ?」


「確かにそうかもな。」



はぁ、つら。


好きな子と食事して買い物して、好きな子の好きな人の話を聞く。


地獄かな?



「~まあ、つまり翔君はカッコいいってことよね。そう言えば、あんたは好きな人いないの?」


翔の話を自慢げにしていた金城は突然そう言った。


まあ、心臓が飛び出したよね。


まあ、飛び出してはないけど。


「お」


「お?」


「金城さんです。」


「そんなの知ってるわよ。ライクじゃなくてラブ!」


はぁ。


勇気出したのになぁ。


まあ、関係が変わるのも嫌だし...。


上を見る。


木でつくられた天井は俺を慰めてくれはしない。


「ちょっと、私は好きな人の話したのに松崎は教えてくれないの?」


金城の方を見て


「お前が勝手にいいだしたんだろ?。はあ、金城お嬢様が世界一大好きです。」


と答えると、


「喧嘩うってんの?」


「真偽でも使ったらいいんじゃないですか?お嬢様。他にも回るんだろ?早く行こうぜ。」


「え?まだ付き合ってくれるの?」


「行かないでいいのか?」


「当たり前でしょ?ついてきなさいよ!!」


「当たり前じゃないんだよなぁ...。」




金城は今回の遠征で死にかけたらしい。


死にかけたのは金城だけじゃないが。


その金城を助けたのは翔なのだ。


翔じゃなければ助けれなかっただろう。


それに、俺がいたとしても特に役には立たなかっただろう。


金城が死にかけた時に咄嗟に動けるかもわからない。


だが、翔ならきっと躊躇うことなく動くのだろう。




店から出て歩く金城の足取りは軽快だ。


金城を見ていると、金城がこちらをふと見て笑顔を浮かべた。



残念ながら、この笑顔は俺宛ではなく翔宛なのだ。


悲しいな。


何が悲しいのだろうか?


頭がおかしくなりそうだ。


俺も何とか笑顔を浮かべる。

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