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困った時は翔君に丸投げ!


今私たちは非常に大きな問題を抱えています。




「翔君、聞いた?」


金城さんが声をかけてきた。


「拠点の件ですか?」


「うん。」


「ええ。一通りは。」


そんなに長い期間開けたわけではなかったのだが、拠点が冒険者たちに襲撃されたらしい。


幸い勇者側にも冒険者側にも死人は出ていないが、あくまで死人は出なかったというだけの話だ。


咄嗟に攻撃されたこともあり、力を上手く抜けなかった者たちも多いうえ、勇者側も少数ではあるがけが人が出た。


一番大きな問題は、集めていた情報を燃やされたことだ。


理由がわからないが、もうあの村には滞在できない。


「どうする?」


金城さんの目は不安げだ。


それもそのはず、そもそも勇者は人と戦うために召喚されたのではなく、魔王を倒すために召喚されたのだ。


他の冒険者からの妨害を受けることは全く想定していない。


「勇者は何人残っているんですか?」


「まだ、全員いるみたいだけど...。」


自分たちを攻撃した人間をそれでも守ろうとするような学生はどのくらいいるのだろうか?


この話はCクラス出身の佐藤楓と言う女子生徒がミノレの村まですぐに報告に来てくれたため知った情報だ。


ダンジョンは探索が終了しており、もう戻ろうとしていたタイミングだったために士気はかなり落ちている。


そもそもここで多くの勇者が死にかけているのだ。


その上で、ホームでも警戒する必要があるのだ。



理由はまだ分かっていないようだ。


カリスさんたちにも事情を説明し、早急にミノレの村から引き払った。


もうこのダンジョンが原因での問題は起きないだろう。


先に俺だけ戻ろうとしたのだが、金城さんに止められ、仕方なく金城さんを連れて先に戻る。


馬車より早く走れるのは何とも不思議な気分だ。



「カリスさんたちっていたじゃん。」


「うん。」


「その人たちねコウタって人と一緒に行動してたんだけど、」


「コウタ?」


視界に入ったハウンドを斬り飛ばす。


「そう、日本人みたいな名前だよね。」


「そうですね。」


小さな魔石を回収し、また走り出す。


「しかもね、すごく強かったんだよ?」


「金城さんから見て?」


「うん。私負けたもん。」


「そのコウタさんと戦闘を行ったんですか?」


「あ、え~と...。その、遊びみたいな?」


「はぁ。」


「剣の型がシルヴァ先生みたいだったよ。」


「シルヴァ・ローレンス先生?」


「うん。すごく似てた。もしかしたら元教え子とかなのかな?」


「コウタと言う召喚された人に覚えはありますか?」


「その...コウタロウ君?」


「本気で言ってるんですか?」


「うん。私が翔君に嘘つくわけないじゃん。」


金城さんはからかっているような口ぶりではなく、ただ事実を淡々と述べているようだった。


「じゃあ、死んだ70人に幸多朗だけ入ってなかった?」


「そうなるのかも。」


「その人がどこに行ったかわかりますか?」


「宮田君たちに案内を任せちゃって、」


「幸多朗と同室だった三人ですか?」


「うん。」


「それを言うためにわざわざ来てくれたんですか?」


「翔君を一人にはさせられないからもあるよ?」


「ありがとう。」


「どういたしまして―。」


これだけ喋りながら、ウマより早く走れるのだ。


勇者の力はすさまじいというほかない。


それよりもコウタと言う男だ。


もし本当に幸多朗なら残りの70人がどうなったか知っているはずだ。


だが、それならなぜ俺に顔を見せに、話に来なかったんだ?


あの時言った「王族が怪しいかもしれない。」この話はどうなったんだ。


もし本当に幸多朗なら、あの三人が何か知っているのだろう。


「翔君!」


「はい?」


「ちゃんと聞いたけど70人の死について何か知っているってことしかわからなかったよ。」


「抜け目ないですね。それだけわかれば十分です。」


「でしょ?本気で拘束しようかとも思ったんだけど。本当に思ったより強くて。」


「いえ、ありがとうございます。」


おそらく幸多朗は生きているんだろう。


その上で俺には会わなかった。


王族には警戒するべきだろう。


じゃあ、一体何に警戒すればいいんだ?


俺たちを殺すつもりで呼び出したのなら呼び出した段階で殺すだろう。


だが、ならなぜ70人殺した。


殺したと報告することで今活動している勇者に警戒を促したのか?


だがそれなら強い魔物が付近で確認されていると連絡すればいいだけの話だ。


まあ、考えてもどうせわからない。


金城さんがこのタイミングでわざわざ教えてくれたのも俺が勝手に動いてしまうのを防ぐためだろう。


今は冒険者たちとのいざこざに集中するべきだろう。


次の日の朝村につくと、村の外に瀬戸と松崎がいた。


「翔待ってたぞ。助かる。」


瀬戸が声をかけてくる。


「帰るのが遅くなってすまない。」


「状況は?」


「バチバチ。また今にも始まりそう。」


松崎が肩を竦めてそう言った。


顔には明らかに疲労が見られる。


「全部燃えた。まあ、金ならあるけど...。あいつら金も持っていこうとしたんだぜ?」


疲労しているのは瀬戸も変わらない。


「どうするんだ?」


「何とかしなきゃだろ?」


「翔君がいるし楽勝だね。」


「ありがとう、金城さん。そうなるように頑張るよ。」


今回そこそこのペースで進んだが、金城さんは根をあげずについてきた。


この程度の速度なら勇者は走ったほうが早いのだろうか?


想定していないことだらけだ。

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