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結果が重要、過程や条件はあくまでも...。


食事を終え、エレノアにお湯を渡した後に外で何となく仮面をつけてみる。


なんというか、少し緊張する。


耳の上に紐を通し、頭の後ろで軽く縛る。


強い違和感が体をなでる。


だが、特に変化はない。


鍛冶師の話を真面目に聞いたせいだろう。


『あなたは力を欲しますか?』


全身に鳥肌が立つ。


体が強張り動かない。


中性的な声が頭の中で反響する。


これは鉄製の仮面だろ?


話と違うんだが?


「誰かは知らないが、今は特に求めていない。」


何とか口を動かし喋ると、


『そうなんですか?てっきり力を欲しているのかと...驚きましたね。』


嘲笑するような声でそう言うと、


『わかりました。ではあなたが心から欲したときに。』


違和感が霧散すると同時に体の力が抜けた。


立っていられずになかば倒れるような形で座り込む。


仮面をとるが、仮面には何の変化もなく、俺のステータスにも何か変わった点は見られない。


もし、この形の仮面をつけた人間すべてに同じような現象が起きたのだとすれば、信者は間違いなくこの神のことを信用するだろう。


まあ、神かどうかはわからないが。


恐る恐る再度つけてみるが、先ほどのような違和感も声もしなかった。


心から俺が欲すれば力をくれるのだろうか?


さっきの声の主は一度も力を与えるとは言っていない。


まさかね?



まあ、もう聞こえはしないし、気にしたって仕方のないことだろう。


仮面を外し、筋トレをする。




しばらくするとエレノアが顔を覗かせる。


「ありがとうございます。もう大丈夫です。」


「ああ。」


「つけられたんですね、かっこよくてお似合いですよ。」


神具?祭具?まあ、どちらでもいいのだが、宗教用の道具を身に着けてかっこいいとは何だろうか?


まあ、可愛い子に褒められればぶっちゃけなんだって嬉しいのだが。


「ありがとう。」


「...っ、いえ。」


いきなり顔を背けられた。


匂うだろうか?


まあ、湯舟には使っていないし、毎日同じ服を着ているようなものだから、仕方ないと言えば仕方ないが。


オウリスとか、いやまあ、どこでもいいのだが、家が欲しい。

湯舟とか早くほしい。

今すぐ欲しい。


この世界に来るまでは、特に入浴そのものが好きと言うわけではなかった。


だが、実際に入れないという状況が続くと、自分の匂いが気になって仕方ない。


エレノアは獣人だし、普通の人間より嗅覚は鋭いんじゃないんだろうか?


気になってはいるが、実際に臭いかどうかは聞けていない。



トイレで少しだけ念入りに体を拭いた。


少しだけと言うのは嘘だ。


すごく念入りに拭いた。




「コウタロウ様。ベッドを使ってください。」


「女性を床で寝かすような男になりたくないんだ。」


「それはあくまでもお願いですよね?私は、コウタロウ様を差し置いてベッドに寝るような奴隷にはなりたくないです!」


「じゃあ、一緒に寝る?」


「え?...。」


エレノアが顔を下に向け、髪が表情を覆い隠してしまう。


その反応きっつ...。


女子に目の前で悪口言われるよりもきつい。


心が抉れた音がする。


心が抉れる音なんやねん。


そう一人ツッコミするくらいには心が抉れました。


だがエレノアは強く断れない立場なのだ。


「冗談だ。ベッドで寝ると体が痛くなるんだ。ベッドはエレノアの好きに使ってくれ。」


「え、あ。」


「それにエレノアが万全の状態の方が俺にとってもいいんだ。頼む。」


「しかし...。わかりました。」


エレノアはまた髪で顔を隠してしまった。


まあ、十中八九、いや、喜んでいるのだろう。


エレノアはずっと俺に気を使っている。


立場上仕方ないのだが、何とかしてあげたい。


解放はまだしないが、部屋はできるだけ早く分けてあげたい。


プライベートがないのは相当辛いだろう。





また今日も早く目が覚めた。


この村でハウンドの皮は、状態が良ければ1枚で銅貨5枚(500エン)だそうだ。


成人男性の月給が金貨1枚(50000エン)としたら1人1日1600エンでは足りない。


うーん、足りない。


ハウンドの皮自体が需要が低いというのが大きいが、流通量も多いことが値段の下降に拍車をかけているそうだ。


魔物と戦うのが危険なのはそもそも間違いないのだが、妥当な金額なのだろうか?


これを考えるとエントの魔石はかなり高価だったと言わざるを得ない。


昔言われた、「面倒をみきれないなら買うな」そんな母の言葉が頭をよぎる。


勿論ペットとして買ったわけではない。


が、奴隷を買うのは早まっただろうか?


いや、買ってなかったら死んでるんだけどね。


そんなことを考えながら音を立てないように朝の支度をする。


その後に仮面をつけて剣は持たずにゆっくりと剣の型をなぞる。


片目が完全に開いているため大きな変化はない。


この村にいる勇者とはもう遭遇してしまったらしいし、この村を出るまでは仮面をつけない方向で行こうかと思っている。


後は鎧だ。


本当にボロボロだが、身に着けようと思っている。


背中を簡単に修理してもらえば、まあ、ないよりもましだろう。



今日は楽に多くのモンスターを狩れるといいなぁ。



まだ外はうす暗い。



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