橘太一
僕の名前は橘太一だ。
今は栗原煌太と一緒にパーティーを組んでいる。
一応二人ともSクラスだ。
転生してくる前から仲は良く、自然とこちらの世界でも一緒に行動していた。
最近女性が次々とパーティーに加入した。
役割が被っているわけでも弱いというわけでもないため、何も言おうとは思ってはいないが、最近人目をはばからずイチャついているため、かなりうっとおしい。
勿論、妬みもあるが...。
クリは顔も良く身長も高く、頭もいい。
女性の扱いがたけているというのもかなり大きいだろうが、何よりも彼自身の性格による部分が大きいのだろう。
僕とは違い、彼はポジティブすぎるというわけではないのだが、同じことで悲観し続けることはしない。
実際には思っているのかもしれないが、それを口には出さない。
彼と接すればわかるが、まるで自分のあらさがしをさせられているのか?と思うほどには完璧と言う言葉が似あう。
まあ、そんな彼のもとに女性が集まることは自然なことなのだが...。
その...ほら。
まあそんなことはどうでもいいのだ。
いや、最重要項目でもあるが。
今日助けたパーティーは奴隷と主人だった。
奴隷は主人に心酔しているかと思うほどには懐いていた。
あの狼人はすごく可愛かった。
「そう。俺が買って解放しても構わないって意味だったんだけど、本当に大丈夫なんだね?」
勿論奴隷から解放する変わりに何かさせるみたいなつもりはなかったが、もっと他にも言い方があったんじゃないかと今なら思う。
何が、そう。だ、何が解放しても構わないって意味だったんだ。
さっき言った自分の発言がずっと頭の中をぐるぐるとめちゃくちゃに走り回る。
本当に嫌になる。
そしてふとした時にこの記憶がフラッシュバックするのだ。
どんな嫌がらせだろうか?
あまりにもキモイ。
僕も奴隷を買えば可愛い子が僕を好きになってくれるのだろうか?
この受け身的な考え方がそもそも良くないのだろうが、勇気はあいにく持ち合わせていないのだ。
栗原たちはどこかに行ってしまっていた。
まあ、宿屋でどうせ合流するからいいか。
あてもなくぶらぶらする。
パーティーの女性は経緯は三人とも違うが、結果として栗原に救われてパーティーに入っている。
モンスターに生贄になりそうだったピンクの髪の少女に手を出すのは完全に犯罪だとは思うのだが...。
まあ、実際に抱き着く以上のことをしているかどうかは知らないが。
特に何もすることもなく宿屋に戻った。
食事を5人でとった。
女性三人は僕が話しかけても普通に答えてくれるし、話しかけてもくれる。
だからこそなんというか疎外感みたいなのが強いのだ。
無視されるのはもっと辛いだろうが...。
部屋は二部屋だが一部屋にクリと女性3人、もう一部屋は僕一人だ。
少し前から思っているのだが、僕はもしかして邪魔なのではないだろうか?
戦闘面では足を引っ張っているということはないはずだ。
僕がいるからこそある程度安全に戦える。
食事をしても味がしない。
クリは大きくは変わっていない。
変わったのは環境と状況で、おかしくなったのは僕の考え方だけなのだろう。
一人で先に部屋に戻ることにした。
「太一、大丈夫か?」
「うん。先に寝るね。」
「ああ。明日のクエストは止めておくか?」
「いや、大丈夫だよ。」
「そうか...。あんまり無理しないようにな。お休み。」
女性三人もクリの言葉にうんうんと頷いている。
「ありがとう。お休み。」
女性三人にもお休みと言われたため一応お休みと返す。
誰も僕の話なんかしてはいないだろうが、笑われているような気がする。
彼女、正確には僕を好きな女の子だろうが、欲しいなぁ。
ベッドに寝転がる。
せっかく異世界に来たのに嫌なことも多い。
想定ではもっとモテモテになる予定だったんだけどなぁ。
「パーティー、抜けようかな。」
そんな声が意図せず漏れる。
抜けてどうするのだろうか?
まさか奴隷で固めるのだろうか?
それとも別の勇者と合流?
そしたら今と同じようなことになるだろう。
ベッドに入ってから思考がずっとループしている。
嫌な記憶が芋づる式に浮かんでは消えていく。
どうやら今日は寝るまでに時間がかかりそうだ。
変更
立花太一 → 橘太一




