光
自分の産声を聞いた気がした
お爺さんの古時計が動き出し
壊れかけのラジオからラジオ体操第一が流れている
太陽の下に新しいことが起こったのだ
全てが生まれたての日のように潤みを帯びている
ばくは有難うさんになって、感謝を告げ歩く
ありがとう、顔あり
ありがとう、顔なし
ありがとう、隣の人
ありがとう、遠い人
ありがとう、富士山
ありがとう、アルムの山々
ありがとう、深海のものたち
ありがとう、遥遠のものたち
ありがとう、ありがとう
パンゲアを感謝いっぱいにして
今年も広辞苑に言葉が増えて
日本語が美しい
ばくは地球を掛けている無と同じ無を
掌に乗せた
語り得ないものたちが彼方に溌剌と煌めいている
その沈黙の音が光の音かと聞こえる
静止画一つ一つが動画の一部なら
ラスコーの壁画から風船と少女へと歴史が積み上げられてゆく
涙で空に詩を書いて
花びらの刺繍に心を織り込んでゆく