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婚約破棄と昔の約束

作者: sara
掲載日:2018/07/12

勉強が終わり少し気分転換したくなりテラスに出る

外は真っ暗だが星空が輝いて綺麗だった

「レオン様…」

1日、1日とどんどんあの子と距離が近づいていく

私はいつ捨てられてしまうのだろうか

その日はきっと遠くないはずだ

無意識に手は胸にかかるネックレスを握っていた

そろそろチェーンを変えなければ、と思ったけれどチェーンが壊れた日がレオン様とのお別れの日なのかもしれないと自嘲気味に笑った




ずっとずっと恋をしていた

私を救いあげてくれた彼の笑顔に一瞬で恋に落ちたあの日から




私はヒーレン伯爵家に産まれた

リリアンナ=ヒーレンという

ヒーレン伯爵家、つまりお父様は悪名高く、確かに悪いことをしていた

領民には高い税を貸し、不満を買っていた

今の偉い役職に就いているのも賄賂である

外出するたびに恨みのこもった目で見られる

死ね、と言われてるみたいで

視線を一身に浴び体が震えて止まらなかった


昔から私に理想の淑女になれとお父様はおっしゃった

マナーや勉学は勿論色々なことを教えられた

間違えたら鞭で叩かれたりして辛いものであった

先生方はお父様への不満を私にぶつけるようにした


友達についても制限された

平民と友達になった日には殴られた

凄く仲が良かったのに

その子はどこか行ってしまった

一晩中その日は泣いた

それからは貴族の子女としか友達になっていない

お父様に紹介された子達

媚び売った目で見られて友達所ではない

ウンザリである


宝石類を買い与えられ、こういう物を好きになりなさいと言われた

だけどきらびやかな宝石は人の媚びた瞳に似ていてひとつも好きにはなれなかった


幼い頃、お母様が買ってくれた熊のお人形があった

どこに行くにでも一緒で人形が古くなり、汚れてしまった

ある日、お人形が無くなっていてお父様に尋ねた


「ああ、あの汚いぬいぐるみのことか。

捨てたよ、あんなもの。

それよりも、好きなもの買ってあげるよ。

何がいいかな、前言ってた宝石とかは…」


目の前が真っ暗になった

大好きだったのに、

お父様はどれだけ私の大切な物を奪っていくのっ



その後の記憶はないが適当に相槌を打ってやり過ごしたのだろう



次の日、お父様は私を王宮に連れていった

貴族の子供のたくさんいる場所へ私を置いて、お父様はどこかへいった

私は誰かと一緒に話す気分ではなく一人でいた

そこは遊び場のようで、熊のお人形が置かれていた

捨てられたのと似ているけど、新品のように綺麗で悲しくなって泣いてしまった


そんな時だった

男の子がやって来た


「どうしたの? 大丈夫?」


首を横にふる

涙が止まらない


「何かあったの?」


こちらを伺うように顔を寄せてきた

びっくりした

そこには綺麗な髪色に澄んだ青色の目が見えた

驚いて涙が止まった


「熊さん、熊さんがいなくなっちゃったの。

大切なお人形だったのに。」


そう言ったら、男の子が私の頬に残っていた涙をぬぐい、


「泣かないで、君が泣いていたら僕も悲しいよ。

大丈夫。君に大切にされて熊さんきっと喜んでるよ。

ほら、」


そこにある熊の人形を取ってばんざーい、ばんざーい、と喜びのポーズをさせる


「フフ、」


それが面白くて思わず笑ってしまった


「あ、やっと笑ったね!

やっぱり泣いてるより笑顔の方が可愛いよ。」


「そ、そんなこと」


顔が赤くなるのが自分でも分かった

今ふりかえると自分は単純だなと思う


「名前、何ていうの?」


「リリアンナ、」


「じゃあ、リーだね!

そしたら俺のことはレーと呼んで。

お揃い。」


「レー?」


「うん、リー!

一緒に遊ぼう!」


私の腕を引っ張って行く男の子

たくさん遊んだ

それから暫くしてお迎えが来て帰った


「またね!」


手を振って見送ってくれた

お日様みたいな笑顔が印象的だった

それは私を元気付け、救うものになる




「お嬢様、何か良いことありました?」

従者の一人が聞いてきた


「ええ、友達が出来たの!」


「それは良かったですね。」


お父様には友達を制限され、楽しく遊んだのは久しぶりのことだった


次の日もお父様に王宮に連れられた

また、レー君がいた

一緒に遊んだ

その次の日も


その日の夜はお父様の機嫌が良くなく、私を殴ってきた

慣れたもんだ

痛みなんか忘れてしまった

でも、その殴り痕をレー君に見つかった

レー君はかなり怒ってどうしたんだ、と聞いてきた

私は彼を巻き込みたくなくて首を横にふった

それでもしつこくレー君は聞いてくるのですでに限界であった私の口は緩くぽろぽろと言葉がこぼれてしまった

全てを聞いたレー君は顔色をなくし、ぎゅっと口を切れるくらい強く噛んだ

私は慌てて彼の口元に手をあてにこりと微笑んだ

きっと涙でひどい顔だっただろう、それなのに私を抱きしめて


「俺が守るから、そばにいるから!

約束。」


そう言って首につけていたネックレスを外し私につけた

涙を流しながら私と同じように笑う彼に心の底からあふれでてくる何かにたまらなくなって彼にもう一度抱きついた


しかしその後お父様のお仕事が終わったのかそこへ遊びに行くことはなく、男の子とも会えなくなってしまった

探そうにも彼の名前は私にとってレー君で、他に何も分からなくて探せなかった

それでもその日から努力をした

外見を磨き、マナー、勉学を必死に頑張った

辛くなった時は男の子の事を思い浮かべた

ふと、どうしてこんなに頑張っているのだろうと考えた

ぽわわんと男の子が思い浮かぶ

最後にみたあの笑顔が

思い出すだけで胸がドキドキする

守ってくれるって言ってくれて嬉しかった

これが恋なのかな、と漠然と思った


恋に気付いてからはもっと必死に頑張った

結構大きくなり、見た目も凄く変わった気がする

ある日、お父様が機嫌良く帰って来た


「朗報だ、アン。

公爵家と婚約を結んだ。

明日、会いに行こう!」


何てことだ

私には好きな人がいるというのに

しかし、私は貴族

貴族の務めとして政略結婚は当たり前だった


「はい、お父様。」


私はこの年になってもお父様に反抗することなど出来なかった

殴られることは酷く恐ろしかった

奪われることは諦めてしまった



そうして公爵家に赴いた

そこで私は見つけた



あの時の男の子…



名前はレオン=ハーレル

レー君ってレオンからとったのね

色々成長したが、面影がかなり残っていて直ぐに分かった

嬉しかった、けど男の子は私を憎々しい目で見てきたのが分かった


どうして?


理由が分かってしまった

我がヒーレン伯爵家は悪名高く、悪どいことをしている

そんな家の娘と婚約だ

嫌に決まってるだろう


それに私に気づく様子もない

当たり前だ

私はレオン様と違ってかなり変わったのだ

こちらを見てもくれない


二人になる機会があった

その時、レオン様は


「お前を好きになる気はない。

領民が助けを求める声を知っているか?

知らないだろう。何もかも。

どうせ、数年の婚約だ。」


知っている

税により苦しむ領民を

助けて、と願う領民を

知らない訳がない

いつだって無力なのだ、私は


好きにならない

振られる痛みにズキズキする

頭がぐらつく

失恋とはこんなに苦しいのか

ようやく、出てきた言葉は


「数年、とはどういう…」


「ああ、喋り過ぎたか。

気にするな。」


「そうですか。」


これも理由が分かってしまった

伯爵家のとり潰しと公爵家による乗っ取りだ

それが終われば婚約破棄されるのだろうか


昔会った女の子です、と言うことは出来なかった

領民を救うためには私ではだめだ

レオン様の手が必要であり、私はいらない

隣に立つのは私じゃない

それに 覚えてるはずがないだろう私のことなんか



進展もないまま 私達は学校に通う年になった

学校でもお父様の決めた取り巻きが引っ付いて離れない

友達何て出来なかった


レオン様は殿下と仲が良いらしい

その他にも騎士団長の息子、サモン様もいる

三人は仲が良く、レオン様はよく笑っていた

私にはあれから一度も見せない笑顔…

羨ましいがそんな資格ない

それなのに、レオン様の見せる笑顔に心が鳴り、惹かれていく

やはり好きだなと自覚させられる



いつ頃からだろうか、女の子の影が目に付いた

子爵家の子女で三人と仲がいい

殿下はその女の子メアリ様に惚れてるっぽい

レオン様もそのようだ

そんな噂がたくさん回った


元気のいい、真っ直ぐな女の子

家柄なんてどうにでもなる

可愛くてレオン様の隣でも劣らない

あの子ならレオン様の隣にふさわしいかもしれない

お似合いだ

胸がずきりと痛むのを無理矢理抑え込もうとして一回も成功しないことに私は呆れてもいた



突然だがどうしてこんなことになったのだろうか

私は今、中庭でレオン様、殿下、サモン様に睨まれている

今日は朝から嫌な予感がした

大切なコップを割ってその上お父様に嫌味ったらしく叱られる

何も無いところにつまずき、足先をタンスにぶつける

もうついていないと本当に思ったのだ

今だってこんな状況溜め息を思いっきり吐き出してしまいたい

もう一回言おう

どうしてこんなことになったのか


学校に着いてからは朝からの悪い予感が嘘のように過ぎていった

これは嵐の前の静けさだったのだろう

お昼になりいつも一緒に食事している人達に今日は用事があるので一緒に食べれないと言われた

しょうがなく食堂に一人で向かっていると遠くの方でその子達がメアリ様を連れて裏庭に行こうとしているのが見えた

ふと気になって裏庭に着いたときにはもうバトルが始まっていた

下級貴族が調子のるなやら、妾の子がとかから始まり暴言が飛び交っていた

しかしメアリ様は動じず、真っ直ぐに相手を見ていてそれに動揺したのか一人が手を振り上げた

それはダメだと声をあげようとし急いで皆の前に出たのと同時に反対側から殿下が出て来て振り上げられた手を掴んだ


「何をやっている。」

ずいぶんお怒りな様子で取り巻きを睨む

怯み上がり、真っ青になり今にも倒れそうであったが私を見つけてほっとし、


「リリアンナ様からメアリ様に痛い目をあわせろ、と言われてどうしようもなくってっ」


と口々に言っていく

カッと顔が赤くなり

「あなた達、私に罪を擦り付けるおつもりですの?」


睨み付けると慌てて

リリアンナ様がおっしゃったのではないですか

嫌だったのに、無理矢理

怖くて怖くて逆らえなくて…

と好き勝手に言う

それを聞いた王子は


「噂でもあなたが黒幕でやったと広まっている。しかし現場を取り押さえないと問い詰められないので辛抱してはっていたらこの有り様か…

言い訳があるなら答えろ、リリアンナ嬢。」


その言葉に、周りの視線に、誰も私がやっていないと思っていないことを悟った

本当に私って信用ないのね

当たり前なのに苦しくって震える手を後ろに隠した

もう何もかもどうでもよかった


「メアリ様、申し訳ありませんでしたわ。

あなたに嫉妬してひどいことをしました。」


グイっ

急に襟元を捕まれ、苦しくなる

誰っ?と思って顔を見るとサモン様だった


「それが謝罪している態度かよ、

どれだけメアリが悩んで傷ついたと思ってるんだ!

お前のせいでっ」

必死に私に食いかかるサモン様を王子とレオン様が剥がしにかかる

サモン様の手が離れた時にはもう息が絶え絶えで座りこんでしまった


「こんなやつ、レオンに似合わない‼

婚約破棄してしまえ!」


鋭く睨まれ、もう心が限界だった

婚約破棄

それは私が一番恐れていた言葉

レオン様との関係はこんなあっけなく終わってしまうものなのだ


「レオン様…」


レオン様の目はぐらぐらと私を見つめて揺れていた

揺らぐ、私の決心までもが

終わりが来たら潔く身を引こうと思ったのに

嫌だ、嫌、嫌なの

離れたくないの

だって、私はあなたが


「俺は…」


私を見つめて言葉をこぼすレオン様に心が悲鳴をあげていた

耳をふさいで逃げてしまいたい

しかしレオン様は何故か何も言わずに黙りこんでしまった

すぐに婚約破棄やらおっしゃると思ったのに

気まずい雰囲気の中、沈黙を破ったのはメアリ様だった


「あの、私違うと思うんです。

リリアンナ様は今助けに来てくれたのではないですか?」


ばっと皆の視線がメアリ様に向く、何いってんだという顔を向けて

だけどメアリ様は怯まずに私をしっかり見据えて


「今まで一回もリリアンナ様に直接手を出されたことありませんでした。

今回も最初からいらっしゃらなかったし、私がぶたれそうになったとき庇ってくれようとして下さった気がするんです。

違いますか、リリアンナ様?」


違います、私がやりました、そう言うのが正解なのだろう

だけど動揺して何も言えなかった


「何言ってるんだメアリ。

こいつがやったに決まってんだろ!」


「違う!

俺も違うと思うんだ。」


レオン様がサモン様を遮るように叫んだ

殿下とサモン様は信じられないという顔をしてレオン様の方を向いた


「婚約者として何年か一緒にいてリリアンナ嬢はそんなことをする人じゃないって分かっていたんだ。

どうしてもヒーレン家の名前が邪魔をするだけで。」


どこまでも優しいレオン様に泣きたくなった

私を嫌いながら私を見ていてくれた

それだけでもう十分幸せだった


「そんな事…」


「サモン様、しつこいわ。

さっきだってリリアンナ様にひどいことしたのに。

これリリアンナ様のネックレスですよね、さっきリリアンナ様から落ちたと思うんですけど。」


首もとを急いで確認した

それは私がつけていたネックレスにかかっていた指輪であった

サモン様が襟元を掴んだ拍子にチェーンが壊れたらしい

声に反応した全員がメアリ様の方を向いた

それはもちろんレオン様もで


「レオン様見ないで、見ちゃダメです!」


必死に体を奮い立たせ、立ち上がりメアリ様の方へ走ろうとする

しかしその前にレオン様が指輪をメアリ様から奪い取った

そして私をじっと見て力なく笑って、


「俺は大バカ者だな、こんなに近くにいて今まで気付けなかったなんて。

守るなんて言っておいて、傷付けてばっかりじゃないか…」

一歩一歩近づいてくる

ドキドキと胸が壊れそうだ

期待してしまう自分が怖い


「違うっ私が悪いの!

結局何も行動出来ないで無力なせいで」


私の目の前に来たレオン様は優しく微笑んで頭をポンポンし


「リー、そんなことないよ。

リーが努力して行動を起こしていたのをちゃんと知ってる。

昔と変わらず強くて優しいまんまのリーが好きだよ。」


頬にこぼれて落ちる涙が止まらない

今が信じられなくてそれでも嬉しくってどうしようもない


「レオン様っ」


「ごめん、遅くなってごめんな。」


涙をすくってくれた指はとても優しい指だった

首を横にふる


「あの日から、あの約束から私はあなたに救われていたんです。

ずっと…ずっとレオン様をお慕いしておりました。」


「俺もだよ。

好きでいてくれて本当にありがとう。」


そう言って笑った顔は私が恋をした笑顔だった




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― 新着の感想 ―
[一言] レオン君は頭逝ってるみたいですね。 ここまで他の子に気がある描写してあって、最後に「俺は分かってたぜ」感出されても殺意しか湧きませんが。
[気になる点] 前のラストの方が良かったと思う-_-b 好きな話だったのにT^T [一言] 尻切れトンボ感が残念! これなら前の話に付け足すか後日談を入れた方が良かったのでは⁇
[気になる点] 周りが空気……( ´・ω・`)
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