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第二話:あまりに冒涜的な鳥

 頭が痛い。これまでに感じたことのない、脳みそを直接ミンチにしてハンバーグにされてるような感覚だ。


 頭も痛いのだが、先ほどから吐き気も凄まじい。浮遊感というか、目が回って酔った時のフワフワした感覚に似ている。


 長く気を失っていたのだろうか。目を開けようとしても視界がぼやける。直後に光を遮るかのごとく影が差したのだが。徐々に光に慣れてきた。そもそも俺はどうなったんだっけ?


 たしか、近道するつもりで路地裏を自転車で……いや、それはもっと前のことだ。大事なのは、その後に自らを神と名乗るナニカが出てきてその時に…あれは現実だったのだろうか?


 いや、おそらく現実だったのだろう。なぜなら、


「ギィィ…」


 先ほど光を遮った影は、隣にいる巨大な珍獣だったからだ。

 鳥の足。コウモリの羽。長い首の先には、馬のような頭がついている。灰色の皮膚は羽でも毛でもなく、ツルツルとしたウロコに覆われており、おまけにアフリカゾウを超す巨体と来たものだ。


 ドラゴン…ではないな。この醜悪なモンスターをドラゴンと言うのは、あまりにも冒涜的すぎる。


「……ふ、伏せ!」


 思い切って命令してみた。


「ギィ」


 伏せやがった!マジか!素直だなこいつ。こうしてみると、案外かわいく見えてきたぞ。ごめん嘘。

 体と首を地につけた珍獣。よく見ると、首にネームプレートが掛けられている。


「シャンタク鳥…お前の名前なのか?」

「ギィ」


 なるほどな。見たところ、こいつに敵意は無い。むしろ、命令を聞くあたり、味方と言っても良いのではないか。


 それなりに知能も高いみたいだし、こいつの事はこれから「シャンタク」と呼ぶことにしよう。



「お前のことは、シャンタクと呼ばせてもらうけど、いい?」

「ギィィ」

「…いいんだよな?」


 さて。先程から、シャンタクにばかり気を取られて周囲の状況に注意が向かなかった。


 今の状況は、分かってはいたがかなり異常だ。学ラン姿は死ぬ前のまんまだが、持ち物が一切無い。

 その上、それなりの密度を誇る森林の中で俺は倒れていたようだ。シャンタクは巨体を器用に木々の隙間に滑り込ませている。


 気を失う直前、神とやらが言っていた【異世界】。眉唾物どころか、都市伝説やファンタジーの中の世界に俺は居るようだ。ちょうど、今それを確信した。

 周囲が森、というだけで、なぜそう思うかって?


「ウゲゲゲグェ!」

「ウガゲァ!」

「ゲェグァグァ」


 地球では、緑の肌を持つ皺くちゃ顔の子供が集団で襲ってくるのかい?


 その、なんだ…所謂、ゴブリンってやつ?ベタだねぇ。序盤の雑魚って言ったらお前らだよな。

 俺は一般人であり、武術をやっていたわけでも銃器を持っているわけでもない。てか持ってても使えない。


 化け物とはいえ、子供サイズならどうにかなるのでは?ふむ。

 違うんだ…違うんだよ…確かに、真面目に死に物狂いで戦ったら勝てるかもしれない。


 だが相手は、見るからに殺意マックス。得体の知れないモンスターが、殺す気満々で自分を見てるんだぞ?しかも、数は5体以上。こいつらを叩きのめす一般人がいたら、そいつは多分正気じゃない。


 神様もさ、こう、無双できるようなチート能力とか、ないの?死んじゃうじゃん。プレゼントみたいなの付けてよ。そう、最強能力とか、めっちゃ強い仲間とか。そう、例えば…


 …プレゼント…?聞いたことがあるような…?


 あっ


「ギィィィィィィィィ!!!!!ギギギ!!!」

「ゥゲァ!?」

「ゲァァァァァ!!!」


 突如動きだしたシャンタクは、蹂躙を開始した。まずは近くの小鬼を一口で丸呑みにする。

 他の小鬼は、咄嗟に逃げようとするが、一体、また一体と凶悪な足で抑えられ、食い殺される。


 残った二体のうち一体が食われている間に、もう片方が手に持った棍棒を巨体に打ち付けるも、シャンタクがひと睨みしたら棍棒を投げつけて逃げていった。


 そいつすらも、残虐凶悪殺戮モンスターであるシャンタクは追って殺した。


「う、うげぇ……おぇぇぇぇ…」


 そこまでするか!?お前、そこまでするか!?体にダメージ負ってないのに、そこまでするのか!?


「うっ……うっぷ……おぇぇ……」


 二度吐く俺。汚い音を立ててゴブリンの肉を咀嚼するモンスター


 俺、こいつと上手くやっていける自信が無いよ。

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