88 作戦会議②
「奇襲・・・、でもいったいどうやって?」
話を聞く限り、エリ―シアは相当狡猾な人物のようだ。そのような人間が易々と奇襲を許すだろうか?オザスポークが答える。
「ワクチンを結成するとき、市兵団員を誘ったが、その内何人かには市兵団を脱退させずにそのまま残ってもらいました。近くからエリ―シアの情報を得るために。流石にエリ―シア直属の大隊はライトブロード兵で固められて入ることができませんでしたが、それでも奴らの内部情報を多く得ることができました」
そこで幹部のサーヤがまた熱を帯びた様子で口を挟んだ。
「だけど、半年前に潜入していた仲間が間諜だとばれてね、彼は拷問されて、その時私たちの存在がエリ―シアに知られてしまったわ。それからというもの取り締まりが厳しくなって多くの仲間たちが奴らに見つかって殺されたわ。アジトが変わったのも一度や二度じゃないわ」
彼女は怒りと悔しさの混じった表情で俯く。オザスポークが続ける。
「私達は残りの数少ない仲間たちからの情報をもとにエリ―シアが隙をみせるタイミングを調べ続けた。しかし、奴が外出している間はライトブロード兵どもが少なくとも10人以上ついていて手出しできない。爆弾も考えたましたが、周りの被害を考えるとそれもできない。そもそも爆弾で倒せる相手かどうかも微妙なところです」
「外がだめなら、中というわけですね?」
「ええ、エリ―シアの住宅に直接潜入します」
「住宅の中にライトブロード兵がいる可能性は?」
「間諜の情報によれば、ライトブロード兵のほとんどは専用の兵舎で暮らしていて、住宅の四方を2人ずつ部下が見張っているらしい。住宅の中はエリ―シアだけのはずです。以前俺がエリ―シアのロッジに入ったときも、ロッジの中に部下は一人もいなかったからおそらくこの情報は正しいと思います」
なるほど、そう言えば一度オザスポークはエリ―シアのロッジに入っているんだったな。ロッジと住宅ではまた違うだろうが、少なくとも戦時に枕元に部下を配置しない人間が平時に部下を住宅内に配置しているだろうか?俺はオザスポークに頷いた。
「・・・確かに、住宅内に部下もいる可能性は低いかもしれないですね」
「ええ。そしてここでトキワの能力が役に立ちます。この町でキラーバットと戦ったといいましたね? つまり貴方はキラーバットを生み出せるということですね」
「ええ。まだ試したことはありませんがそのはずです」
「キラーバットなら闇にまぎれて空から住宅へ潜入できるはずです。トキワには単独で住宅に潜入してもらい、エリ―シアを討ってもらいます」
「ちょっと待って!」
ずっと話を聞いていたナナミが叫んだ。