82 コスモス・ラビット侵略⑥
「きゃーエリ―シア様~!」
エリ―シアは市民の歓声に迎えられ、笑顔で手を振りながら市内を歩いている。オザスポークは彼女を先ほど部下たちに向かわせたライトブロード軍がいる休憩施設へ案内した。案内しながら先ほど見た彼女の不気味な笑みが頭から離れず、妙に胸騒ぎを覚えたまま休憩施設へと歩みを進めた。
休憩施設は各部隊に割り当てられたロッジであり、空いているロッジのいくつかをライトブロード軍に使わせた。ロッジは市兵団だけでなく、時期によっては多地方からの旅団を宿泊させるなど多目的で使われている。そのためライトブロード軍を収容してもあまりある数のロッジがあった。
エリ―シアと共にロッジへと到着すると、数人のライトブロード軍の兵士と思しき男がロッジから出てきたところであった。彼に、ライトブロード軍に割り当てられたロッジを尋ねた。
「なるほど、ではエリ―シア殿。あのロッジを使ってください。隊長は女性ですから、専用のロッジがよろしいでしょう?」
いくら軍の中で位が高くとも、まだうら若き少女にとって男性と同じロッジで寝泊まりはやはり気の進むものではないだろうと思い、オザスポークは提案する。
「うふふ、お優しいのですね。お心遣い感謝しますわ。ありがたく使わせていただきます」
「飛燕重騎兵隊の方々も、どうぞごゆるりと休息なさってください。おや、手元に血がついていますね。水洗い場はそこの森の中にありますので、好きに使って体の汚れと一緒に落としてください」
ライトブロード兵達は礼を言って森へ向かった。オザスポークもエリ―シアと別れ、自分の隊のロッジへと向かった。
「ん・・・?」
オザスポークが自分達のロッジへと入ると、人の気配がまったくせずしんとしたものであった。しかし、装備が置かれており、一度小隊員が帰ってきたようである。
「まったく、大方酒場で今頃一杯やってるに違いない。隊長を置いていくとは良い度胸だ」
そう言ってにやりと笑うと、自分も彼らと合流しようといつも彼らが使う酒場へと向かった。