79 コスモス・ラビット侵略③
ビィィィイイイ!!
笛のような楽器の音が鳴り響く。遠目にもライトブロード軍を示す黄金の剣の軍旗が立っているのが見えた。全軍馬に乗り瞬く間にコスモス・ラビットまで到着した。ライトブロード軍はそのままコスモス・ラビット城門を攻めていたモンスターの群れの横腹に突っ込み分断した。見ると前列の戦士とみられる騎兵にプロテクトのような魔法が掛かっており、オークたちの攻撃を弾いている。軍全体が一匹の巨大な猛獣のようにモンスター達を次々と飲み込んでいく様を見て、戦意を失っていた味方も息を吹き返し始めた。
「た、助かったのですね・・・!」
部下の言葉にオザスポークは思わず笑みをこぼす。
「ああ! ライトブロード軍がこれほど早く来てくれるとは! お前たちが良く耐えてくれたおかげで何とか間に合ったみたいだ!」
そうしている間にもライトブロード軍の攻撃は留まるところをしらず、オーガやオークを次々と倒していった。モンスター達も思いがけない敵の襲撃とその敵の強さに我先にと森の方へちりぢりに逃げていった。
その様子を見て市兵団だけでなく市民も歓声を上げた。ライトブロード軍が城門の前に整列すると、市兵は扉を開け出迎えた。ライトブロード軍はコスモス・ラビット中の歓声を受けつつ市内へと入っていった。
小隊長であり、城門付近に配置していたオザスポークは自らライトブロード軍の指揮官と思しき人物の前に立つ。
「私はコスモス・ラビット白銀強襲魔法小隊隊長オザスポークです。この度はライトブロードからの援軍、誠に感謝します。貴方が軍の指揮官ですか?」
指揮官らしき人物はその装飾の施された兜を脱ぐ。驚いたことにその人物は見るも麗しい金髪の女性であった。彼女は驚くほど若く、まだ十代に見えた。オザスポークは賢者としての能力と資質を買われ、若くして隊長にまで昇り詰めたがその彼ですら今年で24歳になる。見た目のままの年齢ならば彼女は成人して間もなく首都軍の指揮官を任せられるだけの人物であるということとなる。彼女は口元に微笑みを浮かべてオザスポークに語りかけた。
「ええ。私がライトブロード軍所属、飛燕重騎兵隊隊長エリーニアです。非礼ながら、早急にコスモス・ラビット市長に面会させていただけますか」
首都からの援軍だ。きっとこの後面倒な会議がでてくるのだろう。オザスポークはそう思い頷く。
「分かりました、私が案内いたします。エリーニア様どうぞこちらへ」
そう言って、オザスポークは同時に部下にライトブロード軍兵士を休息所へ案内するように指示しておき、エリーニアを市長の元へと案内した。