67 虚無の町㉑
俺たちはサンバムさんの方を振り返る。サンバムさんは静かにこちらを見た。その目は静かで落ち着いていた。先ほどまでの粗暴な態度とは打って変わって上品に恭しくガブリエールにお辞儀する。
「まさか、こんなところで名高い『神の指』の一人に会えるとは思わなかったな。おっと、理由を聞かれたんだったな?それはな、『人が多かった』からだよ」
この男が何を言っているのか俺には理解できなかった。先ほどまで一緒に行動していた男とは姿が同じであるにもかかわらずまるで別人のように思われる。それほど先ほどまでとは雰囲気が一変していた。
「人が多かった・・・?サンバムさん、どうしちゃったの?一体何をいっているの!?」
どうやらナナミも同じ事を思ったようである。しかしサンバムさんは俺達など全く意に介さず続ける。
「この世界には生き物が多すぎると思わないか?人、動物、モンスター、世界中にぞろぞろと・・・まったく想像しただけで気持ちが悪くなる・・・いっそきれいにしたいと思うのは当然だろう。お前たちだって、家の中に虫がうぞうぞいたら気持ちが悪いと思うだろう?それと同じだ」
サンバムはさも当たり前のことを語るように淡々と言葉を繋ぐ。しかしその内容は全く理解できないものだった。
「俺は考えた。一体どうしたらきちんときれいにできるのかってな。ずいぶんと悩んだものだ。あちこち冒険して回って、ようやく廃墟でこんなものを見つけた」