58 虚無の町⑬
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタ
赤スケルトンたちは体を動かすごとに体の骨同士が衝突する音を上げて一斉に命令を遂行する。即ち地面の土くれを迎撃蠅に投げつける。細かな土石が蠅に当たり、致命傷は与えられないもののわずかながらダメージが蠅に通る。確実に蠅を足止めしていた。土塊が羽にあたり蠅がバランスを崩す。そして土煙が蠅たちの視界を奪う。赤スケルトンたちは目を持たないため影響は無い。
とはいえ迎撃蠅の勢いを全て殺すには至らない。蠅たちの怒涛の突進によって次々と赤スケルトンの骨が削られていく。
「くっ周りに木さえあればスケルトンに火を持たせられたのに。思ったより持ちそうもない」
俺は赤スケルトン達の苦戦を知り作戦を急がせる必要があると考える。
『モンスタークリエイト!』
俺は迎撃蠅と偵察蠅をそれぞれ100体ずつ生み出す。この200体は全て黒いモンスター、つまりレベル1のモンスターである。レベル2は赤く目立つためだ。
「行けっ!」
俺の合図で黒偵察蠅と黒迎撃蠅が次々と町に潜入する。本来の蠅と同じ黒い色をしているため、偵察蠅が見てもすぐには偽物だと気付かない。黒偵察蠅が敵を発見し次第、黒迎撃蠅がすれ違いざまに飛びかかり蠅の王に危険信号を発する前に殺していく。そうして偵察蠅を辺りから一掃していく。
「視界良好!敵の蠅は見当たらないなっ」
俺たちは万一にも他の蠅たちに見つからないようなるべく家の陰に隠れながら町に入っていく。町中は赤スケルトンの襲撃により再びもぬけの殻と思いきや、大通りに出るとたくさんの人達がまるでいつもと変わらない日常のように歩いていた。
「どうして今日はみんな避難していないの!?」
ナナミがいぶかしむ。俺は答える。
「そりゃ、前と同じ赤いスケルトンだからな。蠅の王にしてみれば、警戒する必要もない相手だといったところだ。好都合だ。みんながいつも通りの仕事をしているならあの店主を探す手間が省ける」
思わぬところで前回の作戦が役に立った。俺たちは偵察蠅に怪しまれないように歩きながら、隙を見つけ蠅を殺していく。
数十分ほど歩いてようやくあの店主が店を構えていた大通りに到着した。