57 虚無の町⑫
「ははっとんでもない数だったな」
俺は蠅から逃げ切ってほっとした。だがナナミはまだ落ち着かないようで、息を整えている。
「ふーっ、ふーっ笑い事じゃないわよまったくもう。でも何とか作戦は成功ね」
町が遠くに見えるまで逃げた俺たちは岩陰に隠れて息を整えていた。それにしても想像していたよりもずっと強力な集団だった。大型の蠅たちが雪崩のように迫ってきてまともに戦えばひとたまりもなかっただろう。もし蠅の王が自由に移動できれば町はおろか都市でさえおそらく壊滅させることができるだろう。
「ああっこれで準備は整った。時間が無い。早速次の作戦に移るぞ」
そう言って俺はモンスタークリエイトで赤グレートハウンドを3体、赤スケルトン3000体を出現させた。俺たちは赤スケルトン達を置いておき、赤グレートハウンドに乗り、町の反対側(正門の反対つまり裏門側)へ急いで回り込む。
町の裏側へ回り込み、赤スケルトンたちが命令通りまた進軍するのを待った。
「赤スケルトン達が蠅の王の注意を引きつける。今度は蠅に対して攻撃命令を出しているから少しは時間が稼げるはずだ。俺たちはその間に作戦を実行する」
トキワ達が自分たちの作戦を実行しようとしている間にも、赤スケルトン3000体の大群が町に向かって進軍していた。当然すぐに見つかり、迎撃蠅の大群が出てきて町の上空でブンブンとうなっている。
「スケルトンは数は多いけれど、その分弱いわ。いくらトキワに強化されたとはいってもオーガでさえ歯が立たないのに時間稼ぎになるのかしら?」
ナナミが心配そうに言う。
「もちろん勝てはしないだろう。だが、足止めだけなら数の多いスケルトンならば何とかなるだろう」
一方そのころ赤スケルトン軍はインサエヌエー町の前で行進を止めガタガタガタガタガタガタガタと音を上げて蠅を挑発する。その位置も、蠅たちをできるだけ町から離すため前回の位置よりも少しだけ町から遠い場所である。そうしていると、迎撃蠅たちが例の黒い塊となって赤スケルトン軍に襲い掛かる。俺は迎撃蠅がやってきたことを確認して、赤スケルトン全軍へ指示を出す。