55 虚無の町⑩
「なるほど。蠅の王が使役するのはその2種類、便宜的に呼ぶなら『偵察』、『迎撃』の蠅ね。見たところ色はどちらも黒いけれど、形と大きさが少し違うわね。迎撃の蠅は偵察よりも大きくて足が太いわ。私たちが蠅の王を見た時、近くを飛んでいたのも見たわ。敵がいないときは蠅の王の周りを護衛しているようね。町中を飛んでいたのは偵察ばかりだったわ」
ルリリが俺が気付かなかった蠅の特徴を説明する。グレートハウンドの視力は人間よりもずっと優れていることが分かる。
「『迎撃』の方はとりあえず放っておこう。戦うわけじゃないからな。問題は『偵察』だな。倒して突破しようとするとすぐに見つかってしまう。どうにかして連中に見つからないように潜入できないか」
ナナミが考えながら話す。
「あのさ、もし蠅を倒したらトキワのモンスタークリエイトで生み出せないのかな。蠅だってモンスターの一種でしょ?そうしたら蠅に町の様子を探らせることもできるんじゃない?」
「なるほど!その手があったか・・・賭けになるが、この方法なら町に潜入できるかもしれない」
俺は二人に作戦を説明した。
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『モンスタークリエイト!』
俺はまずキマイラロードを生み出す。敵だった時は黄金の毛並みを持っていたが、俺が生みだしたキマイラロードは黄金の毛に赤毛が混じったような毛並みをしている。このモンスター一匹を生み出すだけで俺の体力は大きく削られる。複数匹を生み出すのはとてもではないが今の俺にはできそうもない。
ただのキマイラではなくキマイラロードを生み出したのは、キマイラロードの熱球フィールドの能力のためだ。おそらくこのモンスター以外ではあの『迎撃』蠅の大群に太刀打ちできないだろう。