50 虚無の町⑤
「よし、それじゃあ例の作戦を実行するぞ」
インサエヌエー町から少し離れた岩陰で俺達三人は示しを合わせる。
『モンスタークリエイト』
俺は赤スケルトンを3000匹創り出し、次々と行進させる。3000匹のスケルトン、しかも野性スケルトンよりも大幅に強化された赤スケルトンがインサエヌエー町へ向かっていく。
どうしてこのようなことをするのかと言うと、ある疑問を解決するためだ。それは、インサエヌエー町に警備兵の類が一人もいないことである。つまり見たところインサエヌエー町は完全に今非武装状態である。
つまり、そこに俺のモンスター軍が攻め入った場合どうなるのか?という疑問を解決しようというのだ。当然本当に町に被害を出すわけではないが、町が何らかの対応を示すための囮にはなるはずだ。町には大きな迷惑をかけてしまうが、ストントたちのような善良な冒険者を殺して平然としている町の人々に対して申し訳ない気持ちはあまり湧いてこなかった。
「本当に、どっちが魔王軍か分からないわね」なんてナナミに言われつつも俺は次々と赤スケルトンたちを生み出していった。
赤スケルトンたちが町に行軍している間に俺達は新たに生み出した赤グレートハウンドに乗って急いで町の反対側へ回って町へ入り、この町の様子を中から伺うのだ。
赤スケルトンにはなるべくゆっくりと進軍するように命令し、俺たちは見つからないように岩陰や草陰に隠れながら町を回り込んだ。
町の裏門から町へ入る(こちらも見張りはなぜか一人もいなかった)。何しろ3000体の赤いスケルトンが自分の町に攻め入ってきているのだから、当然のことながら、町は大騒ぎになっていた。・・・と思いきや、やはり町は静かであった。町の人々は一切の言葉を発さず町の中央の高台に避難しているようであった。
俺の命令により、赤スケルトンは町民に絶対に危害を加えないようにしてある。例えばもしも誰か一人が赤スケルトンの群れに突っ込んでいけば、その一人によって3000匹の赤スケルトンは全滅する。・・・もちろん、赤スケルトンの群れに一人で飛び込む人などいるわけがないが。
俺たちも町の状況を調べるため町の高台へ向かった。高台へ着くと、避難してきた町人が大勢集まっていて、上手く俺たちは赤スケルトンの襲撃から避難してきた町民の一人のふりをして町民の集団に紛れ込むことができた。
「上手くいったわね」
ナナミが周りに聞こえないように俺達にささやく。俺は頷き、周囲を見回す。町民は皆静かに俯いている。町がモンスターの大群に襲われた時の町民の反応としてはやはり異常といわざるを得ない。俺はぞっとした。傍にいる町民たちから生気が全く感じられなかったからだ。