44 蜘蛛の巣
魔王レイニーリング・ブライマーは目的地へと到着した。
そこは森の中にあるドーム状に地面が盛り上がった場所であり、一か所に入口である穴が開いている。
そこはまるで入ったものを誘いこむような怪しい魔力で満ちている。レイニーリング・ブライマーは構わず中に入っていく。目的とする魔物がそこにいるからだ。
レイニーリング・ブライマーが中に入ると、そこは迷路になって地底深くに続いた道がいくつもあった。レイニーリング・ブライマーは目的の魔物の魔力を感じ取りながらその迷路を攻略していく。しかし、あるところで彼の足が止まる。彼の体には近くで見ないと分からないほど細い糸がからまって、その動きを止めていた。薄暗い場所であることがさらにその糸の発見を困難にしていた。侵入者が洞窟へ入っていくと少しずつ体に糸が絡まっていく仕組みになっているのだろう。
そこへ、数多くの巨大な蜘蛛が奥からわらわらと現れる。
「キシッまた獲物がかかった」
「人間ではないなキシッ」
「こいつは美味そうだ。キシッきっと女王も喜ばれる」
この巨大な蜘蛛はアラクネと呼ばれる魔物である。鋭い牙と毒腺をもち、そこにはあらゆる生き物を死に追いやる強力な毒が入っている。体は1マートルほどで力も強い。一匹で生活することはなく、巨大な群れをつくって生活する。
一匹一匹はC~B級の強さであるが、群れ全体の脅威はA級モンスターすら裕に超える。とりわけこの洞窟の群れはアラクネの群れの中でも別格であった。
しかし、レイニーリング・ブライマーは全く焦る様子もなく彼らに語り掛ける。
「ふん、やっと出てきたか。いい加減迷路を歩くのにも飽きてきたからな。お前たちに女王のところまで案内してもらう」
アラクネたちはキシキシキシと嗤い、話しかけた。
「お前はキシッもう逃げられない。心配しなくてもすぐに女王のところまで連れていってやる。肉になってからな」
そう言ってじわじわとレイニーリング・ブライマーに寄っていく。レイニーリング・ブライマーはつまらないものを見るような目をする。
「互いの力量すら測れないのか。このような罠に私が掛かるわけないだろう。こうでもしなければお前たちが現れないから敢えて掴まった振りをしたまでだ」
そう言って彼の体についた糸を青い炎で焼き尽くす。アラクネたちが驚いて警戒態勢に入る間もなく彼は話しかける。
「お前たちの女王に魔王レイニーリング・ブライマーが来たと伝えろ。敵対の意思はない」
アラクネたちは警戒を解かないままであるが、その内の一匹が近くの糸をピンピンと揺らす。伝令役らしい。どうやらこのように糸の振動を伝えることにより洞窟内へ情報を伝えあうようだ。
しばらく待っているとさきほど糸で交信していたアラクネがこちらへ向かってきた。
「女王がお前と会うのを許可した。ついてこい」
そういってそのアラクネは洞窟を案内する。レイニーリング・ブライマーはそのあとについて行き、彼らの女王の元へと向かった。