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勇者はモンスター軍を率いて魔王に宣戦布告する  作者: 四霊
第一章 モンスタークリエイト
35/96

35 レグンド港町の死闘③

号令により前軍が進む。戦士と格闘士が中心となっており、3000人からなる軍である。魔法使いや精霊使いも5人一組で各所に配置されており、前軍の将はA級冒険者であるメイルハント(召喚士)である。

右翼、左翼も展開していく。こちらは前軍よりも魔法使いが多めに配置されており、それぞれA級、B級冒険者のルーク(聖騎士)、ガラン(暗黒騎士)が将である。


ガシャン、ガシャンと甲冑に身を包んだ戦士たちが進軍し、まさに魔王軍と激突した瞬間、まるで空気の津波が俺たちを飲み込んだような衝撃が全軍を伝わった。開戦したのだ。


魔王軍はレグンド軍よりも統率が取れているとは言えなかったが、個々の戦闘力の高さでレグンド軍の数を減らしていく。とはいえ、レグンド軍の兵士たちも踏ん張り、何とか押し負けてはいなかった。


『我と絆を結びし孤高の獣よ、盟約に従いて顕現しその力を振るえ、グリフォン!』


 前軍の将、メイルハントが召喚魔法を唱える。紫色のゲートからグリフォンが姿を現す。体長3マートルはあろうかという巨大な獣がメイルハントを乗せ空に羽ばたく。メイルハントはそこから指揮するとともに、急降下して地に爪痕を付けるようにグリフォンが次々とゴブリンやコボルトを薙ぎ払っていく。一対一であればB級モンスターであるグリフォンに対抗しうるのは魔王軍の将であるキマイラくらいであろうが、魔王軍のオークたちが豪速で石をグリフォンに向かって投げる。さすがに集中砲火を食らえばひとたまりもないため一旦空へ上昇する。


 そこにアリ―シアさんの号令が飛ぶ。


「中軍、後軍、前進せよ!中軍は遠距離攻撃、後軍は前軍と中軍を支援せよ!」


 俺たちのいる中軍と後軍が前進する。中軍は弓の得意な戦士と遠距離攻撃のできる職業の兵士が中心となっている部隊であり、後方から魔法を魔王軍の中に打ち込んだり空中のハーピーやガーゴイルを追い払ったりする。

 後軍の編成は前軍と似ているが、こちらは今日は支援に徹し、明日は前軍の代わりになって戦う軍である。


 中軍が十分進んでから俺たちは左方に飛び出す。全軍の左翼の陰に隠れるように一気に最前列に進んでいく。


『モンスタークリエイト!』


 俺はさらに3体の黒グレートハウンドを生み出す(俺のスキルは使えば使うほど生み出せるモンスターの量が増えていっている)。俺のモンスターは強力だが、無限ではないためこの戦争ではいかにこちらの戦力を減らさずに相手の戦力を削るかが重要だ。


 俺たちは左方で猛威を振るっている一匹のオーガに目を付ける。オーガは3マートルの巨躯にふさわしい怪力で石斧を振り回しそのたびに犠牲者を増やしている。俺が合図すると黒グレートハウンド達がが一つの塊となってオーガに突進する。前で戦っている味方の兵士たちを飛びこすと、俺はロングソードでオーガの首を切り落とす。ナナミは邪魔が入らないよう付近のモンスターにフレイムボールを浴びせる。ルリリは俺たちの矢面に立って道を切り開いている。

 

 魔王軍の中に深く入るような真似はせず、すぐに俺たちは左に逸れるように離脱していく。6匹の黒グレートハウンドの勢いを止められる者は皆無だった。

 

「この調子で魔王軍の戦力を削いでいくぞ!」


 俺はそう言ってまた別のモンスターに標準を定めた。


―――


「凄え、あっという間にオーガを倒しちまった」


 左翼の将、暗黒騎士ガランはトキワたちの奮闘に思わず目を奪われる。


「アリ―シアから聞いた勇者ってのはマジだったようだな。これはひょっとすると勝てるかも知れねえ。思ったよりも魔王軍の勢いも大したことないな」


 戦争こそ経験がないが、歴戦の冒険者であるガランはこの戦争は自分たちだけで勝利できそうだと思った。もちろんトキワたちがいなければもっと苦戦しているだろうが、アリ―シアの予想よりも魔王軍は強くなかったようであった。もちろん、それは喜ぶべきことに見えた。


―――


 グリフォンに乗ったメイルハントは高所から魔王軍を見渡し、一つの異変に気付く。


「変だな、あまりに魔王軍の数が少なくないだろうか。聞いた話だと4000の軍らしいが、どう見ても3000ほどしかいないぞ」


 そこで、はっと彼はさらなる異変に気付いた。


「まずいっ!」


 メイルハントはレグンドが深刻な事態に陥っている可能性があることを悟り、急いで後方に下がって指揮をとっているアリ―シアの元へと向かった。


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