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勇者はモンスター軍を率いて魔王に宣戦布告する  作者: 四霊
第一章 モンスタークリエイト
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16 買い物とチート訓練

「さしあたってまずは装備を整えるべきだと思う。」


 俺はナナミに提案した。今の俺たちは、最低限の装備を除いてほとんど私服である。俺が今持っているロングソードだってダイダイヤ伯父さんからもらった借り物である。前の2件の依頼の報酬でお金も貯まってきたので、戦闘するならば遅かれ早かれきちんとしたものをそろえなければと思っていた。ナナミも同感のようだ。

 

 俺たちはまず武器屋に入る。ここには剣、弓、槍、鉄球といった地球にもあった武器に加え、魔法使いたちが使う杖や水晶玉などのマジックアイテムも置いてある。マジックアイテムは値段が張り、前世でいうと相場は一般的な社会人の給料の2か月分くらいである。そのためそう簡単には手が出せる代物ではない。


「うう、一番安いロッドでこんなに高いの・・・!?魔法使いって大変ね~」


 ナナミが値札を見て呻いた。確かに駆け出し冒険者には厳しい値段である。


「まあ、俺もお金だすから大丈夫だよ」


「気持ちはありがたいけれど。だめよ、わたしの装備なんだから自分で何とかしなくちゃ」


「いいんだよ。同じパーティとしてナナミに強くなってもらうことは俺のためでもあるんだから」


 結局ナナミは何とか比較的安めのロッドを買うことができた。俺も少しお金を出したが、俺の武器であるロングソードはロッドほど高くないので問題はない。ナナミは俺に何度もお礼を言っていた。

 次は防具屋に入る。防具屋には簡単なレザープレートから弱い攻撃なら跳ね返してしまう魔法効果が付与されたいかついヘビーメイルまでいろいろあった。楯もあったが、俺が父から習った戦闘スタイルは楯を使うものではなかったため、なれない物を持っているとかえって邪魔になると思い見送った。俺たちはとりあえず二人ともレザープレートとレザーグローブ、レザーブーツをそろって買う。安価で効果も高い、それに軽いため駆け出し冒険者の定番防具である。

 早速、町の外へ出て新装備を試してみる。俺の新しいロングソードは伯父さんのくたびれたものよりも幾分か軽く剣撃が早くなった。刃も新しいので切れ味もきっと上がっているだろう。ナナミのほうはもっと凄かった。彼女がロッドを振るとロッドの魔法補助効果が効き、氷魔法も炎魔法もこれまでの倍以上の威力が生まれた。高価なだけはあるのだと俺は満足した。E級の冒険者なら、高価なロッドなどのマジックアイテムを持つものは少ないはずであるので、これで単純な魔力の差はかなり埋まったとみてよいだろう。ただ、これだけではまだ勝てるかどうか怪しい。できるだけ勝率を上げるためにもっと実戦経験をつむべきだろう。幸い、俺達にはこんなときにうってつけのあのスキルがある。


『モンスタークリエイト』!


 黒スライムを1匹生み出す。黒スライムは敏捷性はないが、耐久性に優れるためナナミの魔法訓練相手にはうってつけだろう。本当に反則ね・・・なんて言っているナナミに、こいつと戦ってもらう。


――――


『わたしの内に眠る力よ氷雪となりてわたしの矛となりなさい!氷ノアイスランス!』


 戦闘が開始するとナナミは黒スライムに魔法を打つ。以前に見たのより格段に大きい氷槍が複数黒スライムに殺到する。しかし黒スライムは自分の体を大きく弾ませ、容易にコアを狙わせず、さらに回転しながら素早く避ける。どうやら黒スライムの敏捷性は野性のスライムよりも大きく上がっているようだ。俺はナナミにアドバイスした。


「ナナミ!まずは炎魔法で黒スライムの足を止めろ!そのあとの攻撃で止めをさせ!」


 ナナミはこくりとうなずき呪文を詠唱する。


『わたしの内に眠る力よ業火の庭となりてわたしの敵をもてなしなさい!火ノファイアーフィールド!』


 途端にゴォオオと、地面からまるで炎が生えてきたのかのようにあたり一面に炎が踊る。ナナミの得意な属性だけあって、力の制御が上手い。黒スライムは必死に逃れようとするが、その隙にナナミの炎撃ファイアーボールが黒スライムの体躯に直撃した。威力が大幅に上昇したファイアーボールに黒スライムのコアは耐えきれず、何と一撃で倒してしまった。


「やったわ!トキワの黒モンスターを倒したのはわたしが初めてよ!」


「ああ、そういわれてみればそうだな。モンスターにも倒されたことないからな。・・・悔しいから次はモンスターの数を増やすからな。」


 そういって次は黒スライムと黒ゴブリンを一匹ずつ生み出した。しかし、先ほどと同じ戦略でこられ、黒スライムと黒ゴブリンの足は氷漬けにされ、氷ノアイスランスの格好の標的になっただけであった。・・・ちょっぴり悔しい。

 こうしてナナミはまず炎と氷の魔法を駆使して敵の足を止め、とどめを刺すという攻略パターンを練習していった。実際王道の戦略だが、王道だからこそ効果的であることの証明でもある。この戦略の良い点は、戦士などと違い耐久力のない魔法使いにとっての弱点を補っていることだろう。相手の足を止めるのは相手からの攻撃を受けにくくなるという利点もあるのだ。次々と俺の生み出したモンスターを屠っていくナナミの経験値は通常と比べ物にならないだろう。通常より手ごわい黒モンスターをこれだけの数倒しているのだから当然だろう。普通なら数週間で出くわす数のモンスターをたった一日で倒しているのだから。実に23匹目のモンスターを倒したとき、ナナミに変化が起きた。


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