15 ランクマッチ
「おめでとうございます!トキワ様、ナナミ様。ギルドからあなた方お二人にE級昇格試験の挑戦権が与えられました」
俺とナナミがギルドに入るといつもの受付嬢が俺たちに言った。ナナミは驚いていた。
「えっ、いくら何でも早すぎませんか?私たちまだ依頼を2つしか受けていません。普通、上の階級の昇格試験は、今の階級の依頼を少なくとも20はこなす必要がありますよね!?」
「はい。多くの方の場合そのように階級を上げられますね。しかし、依頼主からの報告によりますと、あなた方の成果はF級としてはあまりに大きすぎです。ホーンラビットの討伐数、果実園での作業完遂の早さ。作業としては簡単とはいえ、内容が一般的な成果とは天地の違いです。そこで、特別にあなた方の階級を上げる試験を受けさせようという話になったのです。特にトキワさん。あなたのスキルはE級でもあまりに低すぎるほどです。おそらく試験の結果次第では飛び級もあり得ると思われます。もちろんそれはナナミさんも同様ですが。」
「分かりました。どのような試験なのでしょうか」
「はい。『剣と杖のロンド』では、ランクホルダー制を採用しております」
「ランクホルダー制?」
「ランクホルダー制とは、E級のメンバーを指名し、その者とランクマッチ、つまり決闘し、勝利すればその者がもつE級である資格を奪うことができるという制度です。勝負は審判立ち合いで行われ、審判が勝負ありと判断すれば試験は終了です。また上の階級の者は所定の回数まで指名されたら基本的にその挑戦を受けなくてはいけません。つまり弱いものは指名されやすくランクの移動がおきやすいということです」
そこで俺はちょっと疑問に思った。
「すいません。それだと錬金術師のような戦闘向きでない職業だと不利になりませんか」
「そうですね。実際少し不利になります。しかし、我々は依頼を受けるうえで強さが上の階級に上がると必須になると考えており、このような制度をとっております。それに、本質的に戦えないような職業はこの世にはありません。それぞれの長所を生かせばよいのです。実際錬金術師はギルド員の中にも何人かいらっしゃいます。その内の一人はB級ですので、錬金術師や戦闘向きじゃない職業でも試験に合格することは決して難しくはありません」
「そうですか。ところでE級のメンバーはどうやって見つけたらいいのでしょうか?」
「こちらに名簿がありますので、これに載っている人に勝負を挑んでください。勝負を受けるだけでギルドから報奨金が支給されますので、先ほどはああ言いましたが、挑戦されてそう悪い顔をされる方は少ないと思いますよ」
そう言って受付嬢は俺たちに名簿を見せてくれた。50人くらいだろうか。名前と顔写真だけが載っていてその人の職業は載っていない。挑戦者にとって有利になってしまうからだろう。
「名簿はお渡ししますので、大広間にいらっしゃる方に声をかけたらまたお返しください。E級の方ならどなたかはいつもいらっしゃるので」
「ありがとうございます」
そういって俺たちは大広間に入る。たしかに、居る。6人のE級の人が居た。俺は適当に若い男に声を掛けた。
「すいません。ヨンシーさんですか。ランクマッチを受けていただきたいのですが」
若い男、ヨンシーはちょっと驚いたようだが、快く引き受けてくれた。見るとナナミも年配の男に挑戦を申し込んでいた。
――――
「それにしても、トキワの戦闘能力って本当に反則よねー。素の力だけでも戦士と魔法使いの能力があるようなものなのに、なにより『モンスタークリエイト』を使えばそれだけで大抵の相手は倒せるわよ。トキワのおかげでこんなに早く挑戦権がもらえたのは嬉しいけど、わたしは正直まだ実力不足ね」
「そんなことないよ。これから特訓して強くなればいい。俺も手伝うから、3日後の試験までに魔法の力を上げよう」
「ええ。そうねありがとう。確かにせっかくの機会だもの、全力で挑んで見せるわ!」
そういって俺たちは互いに強くなることを約束した。