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勇者はモンスター軍を率いて魔王に宣戦布告する  作者: 四霊
第一章 モンスタークリエイト
12/96

12 2人と65匹でホーンラビット狩り

 ギルドカードはほどなくして発行された。小型の鉄プレートに俺の名前と会員番号、そして大きくFと彫られている。俺たちが最初に選んだ依頼はリュー村でのホーンラビット狩りだ。ホーンラビットとは地球のより二回りくらい大きなウサギに角が生えた獣のことだ。こいつらは村の畑を荒らしてしまう。戦闘能力は低く、未成年でも倒すことが可能である。そのため下級の中でもさらに下級のモンスターである。報酬は少ないが、F級の依頼としてはそこそこの難易度といったところである。


 リュー村に出立する日、ナナミと商店街で待ち合わせる。時間ぴったりに彼女はやってきた。いつもの彼女らしくノースリーブのシャツにホットパンツと、動きやすそうな恰好だ。あまりにかわいらしくて思わず見とれてしまった。

 商店街で弁当を買い、いよいよリュー村へと向かう。念のため、黒ゴブリンを5体生み出して護衛のように周囲に配置させた。黒スライムは戦闘能力では黒ゴブリンより上だが、足が遅いため長い移動は苦手なのである。たまたまスライムと戦闘になると、こちらも黒スライムを生み出して対抗する。幸いにも群れに遭遇することは無く黒スライム一匹だけで十分だった。ただ、戦闘が終わるとこちらの移動速度についていけず、取り残されながらも一生懸命ついてくる黒スライムを置いていったのは、能力で生み出したモンスターであるので生命はなく、いわばエネルギーの塊のようなものだが、何だか心が痛んだ。・・・もし次にスライムに出くわしても自分自身で倒そうと思った。


―――――


 ようやくリュー村に到着した。リュー村はチュウ村よりも少しだけ大きな村で、人口もそれなりに多かった。レンガ造りの家がぽつぽつと見え、村の土地面積の大部分は畑になっていた。辺りを見渡すと、一軒明らかに他の家より大きくて立派な建物があった。おそらくあそこが依頼主である村長の家だろう。俺たちはまず村長に会うためにそこへ向かった。

 

「ようこそおいで下さいました。わたしは村長のルホといいます。失礼ですが、あなたたちのお名前は何と呼べばいいでしょうか」


 ルホ氏は60代くらいの初老の男でどちらかというとやせ細った風体だった。


「俺はトキワ。こっちはナナミです」


「初めまして、ルホさん」


「トキワさんとナナミさんですね。今回はよろしくお願いします。では早速ですが、ホーンラビットの討伐、よろしくお願いします」


「分かりました。すぐにでも取り掛かります」


 そういって村長宅からでて、俺たちはホーンラビットの本拠地であるという森林の中へ入っていく。ホーンラビットは捕まえるか死がいを証拠として持っていけばその数に応じて報酬がもらえるようになっている。したがって、どれだけ多くのホーンラビットを見つけることができるかが勝負である。


「『モンスタークリエイト』」


 俺はまず黒ゴブリンを60匹生み出した。以前は50体そこそこしか創りだせなかったが、平原での練習により今は70匹前後生み出せるようになった。こいつらに隊列を組ませ、いざしらみつぶしにホーンラビット狩りを開始する。


「まさに人海戦術、いやモンスター海戦術かしらね・・・。ってホーンラビット狩りにこんな人数使うなんて、聞いたことないわ!」


 ナナミはあきれたように言った。俺たちが山狩りならぬ森狩りしていると、まもなくホーンラビットが現れた。すかさずナナミが逃がさないように氷魔法で足止めし、黒ゴブリンたちが襲い掛かるという連携が出来上がった。黒ゴブリンの一匹がホーンラビットに止めを刺したとき、俺は『モンスタークリエイト』でホーンラビットを創れるようになったことが分かった。ここにきて、俺は自分のスキルの法則性に気付く。そうか、俺や、俺が生みだしたモンスターが倒したモンスターを創りだせるようになるのか。キリ町に来る前にスライムを倒したから最初から黒スライムが創れ、黒スライムでゴブリンを倒した瞬間に黒ゴブリンが創れるようになったのだ。そして今、俺はホーンラビットを創れるようになったはずだ。試しにホーンラビットを生み出してみる。スライムやゴブリンよりもさらに軽い負担で生み出すことができた。モンスターの強さに比例して俺にかかる負担が増えるようだ。モンスターの強さに応じて大きくなる負担は、例えばバーベルの重りが重くなっていくようなものだ。強いモンスターは負担が大きいため少ししか生みだせないが、弱いモンスターは大量に生みだせる。

 ともかく、俺は自分の能力がさらに強くなったことに喜び、黒ホーンラビットを合計で5匹生み出した。やはり『モンスタークリエイト』で生み出したモンスターは黒くなるらしい。きっと能力は普通のホーンラビットよりも強いのだろう。黒ホーンラビットはゴブリンよりもさらに弱いが、敏捷性に優れ、足の速さはゴブリンよりも少しだけ速かった。5匹の黒ホーンラビットと60匹のゴブリンという軍団を率いて、日が暮れるまで森狩りを続けた。


―――――


 結局ホーンラビットは34匹もいた。もしかしたら数匹狩逃した個体がいるかもしれないが、しばらくは村に大きな被害が出ることはないだろう。村長は俺たちの戦果に大喜びで、報酬に加えて豪華な食事のおまけを付けてくれた。村長は今後ともぜひよろしくと俺の冒険者コードを尋ねた。

冒険者コードとは冒険者一人一人を区別するものであり、このコードを通してギルドに依頼するとその冒険者に優先的に依頼が回るようになっている。このような伝手を数多くもつようになると、フリーの冒険者になれる。

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