11 ギルド加入とパーティー結成
今日は成人した一人の男として、就職しようと思う。技術者、鍛冶屋、商人、職業は様々だが、俺は冒険者になろうと思う。もともとそのつもりだったこともあって迷いはなかった。
というわけで俺は冒険者ギルドに向かう。手練れにはフリーの冒険者もいるのだが、最初はどの冒険者も仕事の斡旋を必要とするため冒険者ギルドで公的に登録をするのだ。そうだ、ナナミも冒険者になると聞いた。2属性持ち魔法使いなら冒険者以外に安全な仕事はいくらでもありそうだが、あえてこの道を選ぶらしい。なぜだろうかと少しだけ疑問に思った。
冒険者ギルド「剣と杖のロンド」の本部の前に立つ。この町で一番大きな冒険者ギルドで、父レイモンドもこのギルドに入っていた。ドアをノックして中に入ると意外と中は清潔で花や鳥を模した細工がギルドの高級感を演出していた。受付嬢に尋ねる。
「すみません。新規で登録したいのですが」
「はい。見たところ新成人の方ですね。ではまずこちらの書類に必要事項を記入していただけますか?」
俺はその書類に自分について記入した。このような書類を書くのは前世も同じだったが、ここでは保護者、保証人、緊急連絡先のような俺に危険が及んだ時のための連絡先は記入する必要がないようだ。俺のように、(俺の場合はまだ伯父さんがいるが)家族が死んでしまって身寄りのない者が多いのと、危険、死亡が日常茶飯事で、それも冒険者は町から町へ流れる者が多くいちいち把握しきれないからである。ともかく俺は受付嬢に書類を渡した。受付嬢はある項目に目を通し、目を見開いた。
「あら。あなた、職業の欄に『勇者』って書いてあるけどあなたが今年の儀式で勇者になった子なの!?」
どうやら町中に『勇者現る』の報は伝わっているようだ。まあ、正門前に黒スライムや黒ゴブリンの大群を置いておけばその原因である自分のことについて伝わるのは無理もない。そういえば、昨日置いてきた黒スライムと黒ゴブリンはまた跡形もなく消えていた。消えるタイミングから、どうやらモンスターを生み出して24時間経過すると消えてしまうようだ。少しずつ自分の能力がわかってきた。
「はい。俺のことです。お騒がせしてしまい申し訳ないです」
俺は頭を下げる。
「うふふっいいのよ。聞いた話だと真っ黒なスライムを沢山生み出せるらしいわね。すごい能力じゃないの!そうか~じゃあ君は他の駆け出し冒険者よりは力を持っていそうね・・・。でもごめんなさい。どんなに実力があっても決まりでみんな最初はF級から始めてもらうの。」
「はい。父が冒険者でしたので存じております」
「話が早いわ。じゃあ、ギルドカードを発行するからその間に大広間の掲示板を見てくるといいわ。ギルドに寄せられた依頼はみんなあそこに貼ってあるから。今なら君と同じでさっき受付に来た新人の子がいるから、パーティーに誘ったら?銀髪のとってもかわいい子よ。まああなたにはパーティーは必要ないかもしれないけどね」
新人の銀髪の子は俺の知る限り一人しかいない。やはりというか何というか大広間にいるという銀髪の子はナナミだった。知り合いがいてよかったと思いつつ彼女に声をかけた。
「やあ。ナナミもこのギルドで冒険者になるみたいだね」
「あら、トキワもここなのね。ここらで一番大きなギルドなんですもの、まあ、ここに来るわよね」
「そうだな。お互い初めての仕事だから、もしよければ次の依頼、俺たちパーティー組まないか?」
「えっ!?」
ナナミが驚きの声を上げる。そうだよな。ちょっと話が急だったかもしれない。と俺は内心焦って誘いを断られるのを覚悟した。ナナミは続ける。
「あっいや嬉しいんだけどさ、トキワは勇者だし、わたしなんかいなくてもF級の仕事なんて余裕でしょ。パーティーを組むと確かに依頼の難易度は下がるけど報酬も山わけよ。実力があるならソロで仕事した方が得かもしれないわよ?」
「いいんだよ。俺はそこまで金に困ってるわけじゃないし、初めての仕事だから知っている人と行くと心強いんだ。それで、俺と一緒に行ってくれるかな」
「ええ。もちろんよ。わたしこそお願いするわ。トキワ」
俺たちは握手を交わした。こうして俺たちは初めてのパーティーを結成した。




