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勇者はモンスター軍を率いて魔王に宣戦布告する  作者: 四霊
第一章 モンスタークリエイト
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10 魔王のスキル

 次の日の昼、俺はナナミと一緒に外で自分たちの能力を試すために町の外へ向かった。(ダイダイヤ伯父さんとゴーホさんは自分たちの仕事に向かった。社会人というのはどの世界でも毎日大変である。)ちらほらと昨日成人の儀式で見た顔も外へ出ていくのがわかる。どうやら皆も手に入れたばかりの自分達の力を試したいようだ。

 町の正門に向かっていると、突然外を監視していた見張りの警備隊が驚きの声を上げた。


「おいっ!たった今、一瞬で黒いスライムが全部きえちまったぞ!?どこにいったんだ?」


 どうやら俺の黒スライムが消えてしまったらしい。正門に走り外を見ると、確かに昨日そこにいたはずの52匹の黒スライム群が跡形もなく消えてしまっていた。どうやら生み出したモンスターの寿命は長くないようだ。警備兵に憶測を交えた一応の説明をした後、予定通り町の外へ繰り出した。


―――――


「『我が内に眠る力よ業火となりてわたしの剣となりなさいっ!炎撃フレイムボール!』


 ナナミの作りだした炎の塊が全長2mもあるスライムに突撃していく。ジュウウゥウゥ!という音とともにスライムが怒りの奇声を上げる。


「とどめよ!『我が内に眠る力よ氷雪となりてわたしの矛となりなさい!氷ノアイスランス!』」


 ナナミの前に6本の氷の槍が出現する。これらが回転しながら先ほどの炎撃により露出したスライムのコア目がけて突進した。スライムは断末魔の声を上げ動かなくなった。


「やったわ!わたし一人でスライムを倒せたわ!もうこいつらなんてこわくないわっ」


 かわいらしく飛び跳ねながらはしゃいでいるかと思えば、くるりとこちらを向いてにやりとする。


「次はトキワの番よ!勇者の戦いってものを見せてもらいましょうか」


 ナナミの機嫌がいいのは結構だが、実戦で能力を使ったことがないから少し緊張する。だが、今の自分にはスライムなど相手にならないという確信があった。


 町の周辺の平原を歩いているとスライムが2匹現れた。俺は勇者としてスキルを使わない素の能力を試してみることにした。勇者になったときから俺は自分の身体能力が格段に向上しているのを感じていたからだ。今日ダイダイヤ伯父さんに頼んで貸してもらったロングソードを構え、左方のスライムのコアに狙いを定める。地面を思い切り蹴って猛烈に突進した。スライムが一瞬で目の前に来る。自分でも驚くほどスピードが上がっている。そのままの勢いで脇をすり抜けるように走り抜けざまスライムのコアに切りつける。スライムはそのまま液状化して生命活動を停止した。もう一匹も同様に倒してしまった。


「ねえ、トキワってばちょっと強すぎない?一瞬でスライム2匹倒しちゃったわ。それも剣で!」


「ああ、自分でもびっくりだ!それもまだまだ余力あるし。はっきり言ってスライムには負ける気がしないな」


「なんてことなの!?例のスキルだけでも十分強すぎるのに・・・剣も強いなんて。戦士の立つ瀬が無いわね。・・・・ねえ、まさか魔法も使えるなんて言わないわよね?」


「たぶん使えるよ、魔力の使い方も自然に思い浮かぶんだ」


 そういって呪文を唱えてみる。何度か見たことのある、母が得意だった呪文だ。


「『我が内に眠る力よ雷となりて我が矛となれ!雷撃ライトニングボルト!』」


 ズッガガガアアアアン!!


 とんでもない威力の雷が放たれる。白い閃光の中、母の姿が思い浮かんで少し切なくなった。


「魔法まで使えるの!?魔法使いの顔も丸つぶれじゃないの・・・」


・・・こちらはこちらでしょんぼりしていた。


 今度は『モンスタークリエイト』で黒スライムを10体ほど生み出し、遭遇した7匹のゴブリンの集団と戦わせてみた。ゴブリンもスライムもFランクのモンスターであり、10対7ならばちょうど良い戦闘になると思った。・・・が、数分と持たなかった。


 まさに殺戮と呼ぶべき光景であった。想像していたよりも『モンスタークリエイト』は強力な能力だった。黒スライムは瞬く間にゴブリンたちを取り囲み殴殺、圧殺した。ゴブリンの攻撃で倒された黒スライムは皆無だった。黒スライムの方が数が多いとはいえ、これほど一方的な結果になるとは思わなかった。どうやら野生のスライムよりも黒スライムの方が能力が高いようだ。ふと、俺は自分の『モンスタークリエイト』の能力が少し進化したのを感じた。こう、自分のできることが増えたのが本能的にわかった。試してみると、黒スライムのように黒ゴブリンも生み出すことができるようになっていた。


 一時間後、黒ゴブリン53匹の集団を引き連れて正門に帰った俺はキリ町警備隊の要注意監視対象に任命されてしまった。

ナナミは俺と黒ゴブリン53匹と黒スライム10匹をぞろぞろ引き連れた俺を見てこのように評した。


「勇者というよりまるで魔王ね」


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