時を止める少女
ねえ。
私が時間を止めたら、どうなると思う?
答えは簡単。
私がこの教室にいるみんなより。
少しだけ大人になっていくの。
1秒止めたら、1秒だけ。
1時間止めたら、1時間も。
私はみんなよりも、長く生きてる。
喜ばしいことに、今日の授業も真面目なの。
もちろん、私以外のみんなが、ね。
そんなんだから、不真面目な私は、時間を止めてしまうの。
なんたって、退屈なんですもの。
せーの、はい。
……変な感じ。
ずっと同じ音が聴こえるわ。
もしかして、時間を止めるってことはさ。
私はその間、ずっと同じ時間を繰り返しているのかも。
みんなが文字通り、一瞬で過ごす時間をね。
私は何度も、何度も過ごすのよ。
なんだか、思っていたより、つまんない。
片想いの彼も、今日はお休みだし。
変な顔してる友達もいないんだもん。
これじゃあ、私だけおばさんになっちゃうわ。
花の命は短いんだから。
こんな事で、無駄にはできないの。
そういえば、私って、4月1日生まれ。
24時間分、時間を止めたら、私だけ2年生ね。
1年生の教室に、1人だけ先輩がいるのよ。
もちろん、留年なんてなしで。
ちょっとだけ興味が出たけど。
1日中、こんな退屈なとこには居られないわ。
がっかり。
もう少し面白いのを期待してたのに。
時間がもったいないから、時間を進めましょ。
いちにの、はい。
……いい感じ。
先生のだみ声が、懐かしい。
やっぱり、こうでなくちゃ。
ずっと同じ景色なんて、つまらないものね。
ころころ変わる、みんなの表情。
こっちの方が面白いわ。
でも、またしてもがっかり。
元のつまらない授業に逆戻り。
あーあ。
これじゃあ、みんなより損したみたい。
やっぱり、時間を止めるって、つまらない。