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命の限りは頑張ります  作者: とある世界の日常を
8/13

第五話 魔石

書き上げました


徐々になんでもありの下地を整えていきます

そもそも魔石というものは本来人為的に作れるものではない。

濃度が高い魔素地帯で産出される、魔力の結晶のようなものだ。元々そこに有った鉱石や結晶に魔素が浸透し魔石と成るものもあれば、空気中の塵に反応し魔石となり、長い年月をかけて魔石と成るものもある。極稀に高濃度の魔素地帯で、魔力のみで結晶化された魔石が生成される事もある。

一部の魔物は体内で魔石を生成するが、それは生命の維持活動に必要なものである為、取り出すとなると対象を殺さなくてはならない。唯一、龍族だけが体外での純粋な魔石の生成が出来るとされているが、この事実を知るものは少ない。

一部の民族の伝承にある龍の宝玉は実は魔石だったりする。


「まあとにかく、龍族の中でも純粋な魔石を生成できるものは少ないのです」

「なんだ、今度は無から魔石を作るのか」

「はい」

「またとんでもないことを・・・」

「そうですね、ですがステレラの魔力でしたら可能でしょう」

「確かに・・・」

「魔力のみで作る魔石は大変純度が高く、強い負荷にも耐えられます」


鉱石を使っての魔石作りならアルセイデス王子もレイモンドも出来るらしいが、大量に魔力を消費するのであまりやりたくはないらしい。純粋な魔石となると魔力の消費量はもっと増大するので、元々魔力が高く、回復力も速い龍族くらいしか作れないらしい。

原理自体は簡単なのだが、魔力量で挫折するものが多い。


「それでは始めましょう」

「はい!」


原理は本当に簡単だ。

認識した10センチ四方の空間を自分の魔力で高濃度に満たせばいい。一定の濃度を保ちながら、魔力の塊を作って圧縮の繰り返しだ。また圧縮させる際には空間から魔力がなくならないように圧縮と同時に魔力で高濃度に満たす必要がある。また人口的に作る場合だと圧縮した魔石とを結合させながら作業しなくてはならない。それにより、徐々に大きな結晶となっていくのだ。ただ一連の流れで出来る魔石は目視できない程に僅かである。なので本当に時間のかかる作業なのだ。


一時間程同じ作業を繰り返していると流石にコツがつかめてきた。

少しずつ作業を効率化していく。2センチくらいの大きさになると、デトワールがそろそろ完成の形に整えるように言ってきたので、雫型にするつもりだと伝える。

コツも掴み効率化したおかげで昼までには魔石を作り終えることができた。


「素晴らしい出来ですね」

「ありがとうございます」


出来上がったのは、3センチほどの透明な雫型の魔石だ。表面は形に添って細かくカットしているので光を反射しやすい。指先に取り光にかざすと淡く虹色の輝きを放つ。

形も相まって、涙のようだ。


「透明の魔石は初めて見ました」

「そうですね、滅多に見る事はありません。純粋な魔石程透明な結晶になります」

「色がついているのはどういったものなんですか?」

「色付きは元々そういった色の宝石に魔力を込めたか、水晶やダイヤのような透明なものに魔力を込めたかですね。その人の持つ魔力の特性によって色は変わります。例えば火だと赤、水だと青、風だと白や水色、木だと碧や琥珀色といった具合ですね。見比べてみると面白いですよ」

「魔力を込める石はなんでもいいんですか?」

「基本的には自由ですが、相性の良し悪しがありますね。例えば紅玉は火系統の人が魔力を込めた方が効率が良いですし、瑠璃やサファイアは水系統が効率が良いという風に。これは結晶化する際にそれ系統の魔力の影響を受けた為だとされています」

「なるほど」

「因みに魔物の体内で生成される魔石ですが、血肉を原料に結晶化していますので、魔物から産出された魔石は殆ど赤黒い色をしています」

「・・・なんだか生々しいですね」

「さて、ステレラは魔石の使い道を決めていますか?」

「はい、でも秘密です」

「おや、教えてくれないんですか?」

「今はまだ、デトワール先生を驚かせたいので」

「フフ、楽しみですね」

「あ、でも先生、龍族の情報が欲しいんですが、協力してもらえませんか?!」

「龍族の情報、ですか?」

「えと、例えば先生の髪とか、爪とか!」

「そんなものどうするんです?」


魔法で髪や爪を使う事はたまにある。ただ気休めのような魔法ばかりで、大した効果は認められない魔法ばかりではあるが。


「髪から先生の種族の情報を読み取るんです」

「髪で?」

「はい、あ、変な事はしませんよ!自分でも試したんですが、髪や爪からだと個人の特定は難しいんです。ですが種族情報なら解析できるんです」

「そんな事が・・・」

「はい!なので、良ければ、なんですけど・・・」


髪を入手するのはとても簡単だ。この国にはデトワールのような赤髪はいないからすぐに分かる。けれどあえて許可をとるのは、知らない内に自分の髪の情報が読み取られるのは誰であろうと不快であると思うからだ。そんな事を勝手にすれば、信頼関係などなくなってしまうだろう。


「ダメ、でしょうか・・・」


とはいえやっぱり個人の情報は読み取れないという言葉も信じろなんて無理だったのだろうか。


「いえ、構いませんよ」

「いいんですか?!」

「ええ」


そういって自分の髪の毛を一本ちぎってステレラに渡す。


「ありがとうございます!」

「因みに何を読み取れば個人を特定できるんだい?」

「血液であれば個人の情報も読み取ることができます」

「・・・器用だな」

「いや、植物の成分を分析する魔法もある、あれの応用と考えれば・・・」

「出来るか?」

「・・・そもそも毛髪で種族の特定も難しいからなぁ」

「ステレラは多彩で、見ていて面白いですね」


面白いって、褒められているのだろうか。


昼食を挟んでの午後は、デトワールの進める通りの授業を受ける。

自分の興味のあることを学ぶのも効率が良いのだが、それだけするわけにもいかない。それに五大元素魔法以外にも魔法は存在するのだ。それらも覚えなくてはいけないのだからきちんと学べる時に学ぶべきだ。


因みに火、木、土、風、水が五大元素と呼ばれるようになったのは人族が文明を築き始めてからである。それより以前は特に共通した名はなく、それぞれの種族が独自のものを使用していたのだが、五大元素はおおよそどの種族の扱う魔法にも当てはまり、五大元素は行使できる者の数が多かった為、浸透するのが早かったのだ。


そして五大元素よりも浸透しているのは黎明魔法だ。光と闇。これは有史以前からある魔法だが、元素魔法とはまた違う位置づけにあるものだ。これはきちんと扱える者の数は少ない割には十分に認知度が高い。理由はこの黎明魔法で偉業を成し遂げている者が多いからである。それは時に恐怖の対象となり、信仰の対象となっている。


まあ簡単な話し、魔王や勇者だったりするのだ。


実際この世界には魔王や勇者と呼ばれるものがいる。とはいえ、それらの適性のあるものが必ずそうなる訳ではない。中には力が小さすぎて殆ど魔法効果のない者もいるからである。


「どうして沢山いるのに対がいると分かるんですか?」

「光と闇は一対、光が生まれれば大小に関わらず同等の闇が生まれるのです。それはお互いが無意識に感知するようですよ」

「私にも対になる存在がいるんでしょうか」

「ステレラの場合は光と闇、どちらも行使できますので、一人で完成してますから対の存在はいないでしょう」

「それはなんだか、寂しいですね」

「そうかもしれませんね、でも光と闇は対ですが、対極にあります。決して仲の良い関係になれるわけではありませんよ」

「魔王と勇者の様に、ですね」

「ええ、そうです」


その夜はデトワールに貰った毛髪の情報を読み取り、それを魔石に保存した。それと自分のデータも魔石により詳細な情報を保存する。


これにより、変化魔法を使用した後もきちんと自分本来の姿に戻れることが出来るし、読み取った種族に好きに変化できる仕組みなのだ。


「デトワール先生驚いてくれるかな」


翌日ステレラは一番先にデトワールの元へ行き、早速魔石を使った魔法を目の前で発動させる。


「これは、驚きました・・・」

「どうですか、デトワール先生!」


ステレラは見事に龍族の人型になっていた。

耳はエルフ程長くはないが、少し尖っていて、目の瞳孔部分は縦に細長く、猫の目の様になっている。首と手元の一部は鱗に覆われており、まさにデトワール先生と同じだった。ただ元の色合いが強く、髪は光の加減により紅っぽい銀色になっているし、目の色は完全にステレラの紫だった。


「魔石はこのためだったのですね・・・」

「はい、魔石に個体の情報を記録しているんです。変化したい時にその情報を引き出せば簡単に変化できるという優れものです」

「ふふ、その魔石があっても他の者には簡単に真似できませんよ。どうして変化しようと思ったのですか?」

「それは前に自分の情報を読み取った時に、他の種族の情報が得られれば変化できるんじゃないかと思って、でも戻れる自信がなかったので、情報を魔石に保存してからの切り替えを思いつきました」

「発想が大胆ですね」


そんな話しをしていると、アルセイデス王子とレイモンドがやってきた。


「先生、まさか、先生の子供なのか?!!」

「いや、待て、なんかステレラに似てねぇか!?」

「はい!私はステレラですよ!」


その後は質問攻めで大変だった。

何の魔法を使って変化したのかとか、どうして思いついたのかとか、変身しているところを見せてくれとか、大変だったけど、楽しかった。


「本来これは、龍族にのみ使えると言われている魔法なんですがねぇ」

「そうなんですか?」

「はい、固有魔法と言われているものです。まあこれまでも龍族以外で使った者はいるらしいので、絶対という訳ではないのですが」


規格外、本当にその言葉がステレラには良く似合う。


「龍族の固有魔法は原始の命魔法と特化の契約魔法を使っています。ステレラの場合も同じく命魔法と契約魔法、ですね」

「はい、それと識別魔法を使いました」


識別魔法を使った理由は、今後も機会があれば変化できる種族を増やす予定だからだ。


「この魔石の純度と大きさなら問題ありませんね」

「良かった、あとはこれをアクセサリーに加工して変化した時に無くさないようにするだけです」

「どういったものにするんですか?」

「ネックレスにしようと思ってます」

「デザインはどうすんだ」

「ずっとつけるものになるのでシンプルなものにしようかと」

「それならこれを使うといい」


アルセイデス王子はそういうと、自分の首からチェーンを外した。


「ミスリルのチェーンネックレスだ。とても頑丈でちぎれない」


チェーンについていた指輪をポケットにしまい、それをステレラに差し出す。


「けど、大切なものなんじゃ・・・」

「遠慮はいらない。部屋に戻れば他にも鎖はあるからな」

「では、有り難く・・・ありがとうございます」


上品な輝きを放つプラチナゴールドは、他の飾りを必要としない。


「使う魔法は拡縮魔法と識別魔法か」

「それと契約魔法も使った方がいいんじゃないか」

「そうですね」


拡縮魔法は変化する対象のサイズに合わせて、識別魔法は対象を認識するため、契約魔法は魔石を無くさないように。

流石デトワールの教え子なだけある。豊富な知識であっという間に方向性が決まった。


その翌日からステレラはそのネックレスを常に肌身離さずつける様になった。

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