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命の限りは頑張ります  作者: とある世界の日常を
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第二話 学習

エルフはどうやら銀髪が多いらしい。ステレラ自身も銀髪であるが、今日王城で見かけたエルフも、殆どが銀髪であった。時折グレーや金髪もいたのだが、割合は少ない。


「ステレラです。今日からよろしくお願いいたします」

「まあ!しっかり挨拶もできて、とても良い子なのね」

「とても可愛らしいわ」


王城で生活することになるとは言われたものの、まさか王族たちの前で挨拶をすることになるとは思わず、緊張してしまう。そんなステレラの緊張を分かっていないのか、王妃とその娘、つまり王女たちは無邪気にステレラの頭を撫でる。


「やめないか、ステレラが驚いているだろう」

「あら、緊張しなくていいのよ」

「そうそう、貴方は私達の妹みたいなものなのだから」


正式な場ではないのだし、と付け加えてはしゃぐ王妃に、国王は小さく溜息を吐く。

後で知ったのだが、父トゥルヤルの友人とは国王の事であったらしい。

先に言ってて欲しかった。


「まあ良い。ステレラよ、何か困ったことがあればマウニに相談しなさい」

「はい」

「そしてこれが魔法を教える者、デトワールだ」

「どうぞ、よろしくお願いします」

「よろしくお願い致します!」


紹介されたのは、30代位の男性。閉鎖的な国だと聞いていたから、てっきりエルフしかいないのかと思っていたから驚いた。

燃える様な赤い髪は腰ほどの長があり、後ろの高い位置でポニーテールのように束ねられている。癖のある髪は所々はねており、なんだか可愛らしくも見える。猫の目のように鋭い金の目はまるで宝石のようだ。服で隠れてはいるけれど、その肉体は鍛え上げられており、魔法使いというよりは武闘家と言った方がしっくりくる。

耳が少しとがっているし、手と首元は一部が鱗で覆われている。

特徴としては爬虫類系の獣人族か龍族を示している。しかし獣人族は魔法を得意とするものは少ない。そして龍族は数も少なく、あまり他者と交流を持たない。人型になれると伝承にはあるが、信憑性は低いと言われている。その龍族がここにいるとは考えにくい事でもある。

聞いても良いものか迷っていると、何を言わんとしているのか気付いたのだろう。デトワールから話題を振ってきた。


「私が何の種族かわかりますか?」

「えと、龍族・・・でしょうか」

「どうしてそう思いましたか?」

「獣人族はあまり魔法との相性が良くないと聞いています」

「そうですね」


獣人族は身体能力がとても高く、子供のうちから無意識に魔力を身体そのものに使用する。その為体内で魔力を練る事は得意であるが、体外で使うとなると苦手とするものは多い。ただし全く使えないという訳ではなく、元々の身体能力を高めた方が効率が良いので使えても覚えようとする者も少ない。使えたとしてもその殆どが基礎的な魔法のみである。


「そうですね、ただ魔法が使えない訳ではありませんよ」

「はい、複数の属性を扱うのは難しいですが、得意な属性であれば強大な魔法を使えると聞いています」

「よく勉強してますね、では龍族の特性はご存知ですか?」

「えと、龍族はこの世界で最長寿であり、それにより得た知識で多くの魔法を扱うことが出来ます。また近代では失われた古の魔法を扱うことが出来るとも言われています。その為多くの者が龍族との交流を図ろうとしましたが、元来龍族は他者との関わりを嫌うため、その殆どが謎に包まれている種族です」

「お手本のような回答ですね」

「本は沢山読みましたので」

「それにしても、こんなに簡単に龍族だと当てられたのは初めてですね」

「そうなのですか?」

「そうですよ、やはり多くは獣人族だと勘違いされるんです」

「でも私も魔法の先生だと紹介されなければ獣人族だと勘違いしたと思います」


知識としては知っていたけれど、新しい事を覚えるのに夢中で各種族がどんな生活をしているのか、どんな性格なのかとかはあまり深く考える暇がなかった。だから龍族に対して変な先入観もなかったから気付くことが出来たのだろう。

デトワールは先々王と親しくしていたそうで、昔からこの国というか王宮に出入りしていたらしい。先々王の子供、つまり先王に魔法の指導をしたのがきっかけでこの王宮に住むようになったという。

その流れで今もなお、魔法の先生としてこのヘーラル王国に滞在しているという。現王族としてはもう家族のようなものだそうだ。


その日は魔法と魔素についてどの程度理解しているのかを把握するため、テスト形式での確認を行った。

恐ろしい事に用紙が50枚もあったのだが、2時間かけて何とか終わらせることが出来た。


「ふむ、魔素についてはしっかり理解しているし、五大元素の初級魔法もほぼほぼ理解できているようだね。それ以外はまだ深くは理解していないようですね」

「ありがとうございます」

「素晴らしい、これだけしっかり基礎を理解しているのであれば、その他の元素の魔法もあっという間ですよ」


それから答え合わせをして実技をした。とは言っても、実際どれくらいの魔法ができるのかの確認なので、新しい魔法を使ったわけじゃない。

魔法を行使する際は王宮庭園の隣にある訓練場を使用する。その訓練場は主に兵士の訓練場として使われているが、本来は魔法の練習場所として設計されている。その為幾重にも結界が張られており、かなり大きな威力の魔法を使っても壊れないくらい頑丈なのだそうだ。


「ステレラの得意魔法はどの属性なのですか?」

「得意魔法、ですか?」

「ええ」

「えと、把握していません」

「初めて使った魔法は?」

「多分、風魔法ではないかと思います」

「多分とは?」

「生後半年くらいでベビーベッドから降りるために魔法を使ったと母が言っていました。詳しくは覚えていないので知りません」


本当は覚えているのだが、まあ普通はそんな事覚えていないだろうから今後ともそういう事にしておくつもりだ。


「生後半年とは・・・部屋は凄い事になったでしょう」

「いえ、特にそういう話しは聞いておりません」

「でも風魔法だったんでしょう?小さいとはいえ、身体を浮かす魔法でしかも初めてとなると、部屋がボロボロとまでいかなくても、ベビーベッドくらい壊れると思いますよ」

「ベビーベッドは今も健在ですよ」

「風魔法じゃないかもしれないね、今も同じ方法で飛べますか?」

「はい」


ふわりと飛んで見せれば、デトワールが満足げに笑みを浮かべた。


「これは重力魔法です、重力に干渉して体を浮かせていますね」

「重力魔法、ですか」

「これ扱える魔法使いは稀少なんですよ」

「そうなんですね」


他の元素魔法と違って扱いが難しく、適性がなければ簡単な魔法も使えないそうだ。最初に使った魔法だったし、なんだかんだで使用頻度の高い魔法だったからそう言われても実感はわかなかった。


「無詠唱で発動出来たし、得意魔法は重力魔法ですね」

「得意魔法は詠唱の有無で判断するんですか?」

「ええ、一番簡単な判断方法です」

「無詠唱で発動出来るのは得意魔法だけですか?」

「いいえ、経験を積めば初級魔法であれば無詠唱は可能です。相性の良い魔法も中級までなら無詠唱で可能です。ただ上級以上になると得意魔法以外は難しいですね」

「・・・五大元素魔法であれば上級でも無詠唱で発動できます」


その時の先生の表情は、きっと忘れられないだろう。

とても面白い顔をしていた。


その後一通り使った事のある魔法を手あたり次第に発動させた。五大元素の魔法ばかりだったので、そんなに大したことじゃない。


「いやぁ、嬉しいよ。晩年に君みたいな教え子ができて」


先生は本当に嬉しそうにそう言ってくれた。


「王子も数百年に一人の逸材ではありますが、ステレラは次元が違いますね。まるで魔法を使うために生まれてきたような存在に思えます」

「・・・」


そう言って貰える事はとても嬉しかったのだけれど、比較されている人の事を思うとお礼の言葉は言えなかった。本人の前では絶対に言わないでおいて欲しいものである。


「疲れはないですか?」

「はい、大丈夫です」

「魔力値も随分と高そうですね」

「家ではなるべく魔法を使うようにしていたからでしょうか」

「そうかもしれませんね、まだまだ余力はありそうですが、今日はここまでにしましょうか」


最後に明日からは他の生徒も一緒に学ぶことを伝えられた。

一人は先ほど少し話題に出た王子だ。4つ年上で現在10歳だそうだ。もう一人は貴族の青年、と言っても42歳なのだが、見た目は17歳位だそうだ。長寿なのだから仕方ないのだが、年齢の情報はいらなかった。扱いに困りそうだ。


生徒は私を含め3名のみだそうだ。


基本的にエルフという種族は魔法と相性がいい。

龍族ほどではないのだが、その殆どが魔法を使えるようになる。勿論使えない者も生まれるが、極稀であることは確かだ。今のところ里内で魔法が使えない者はいない。

魔力の強さにはばらつきがあり、弱い者であれば着火剤代わり程度どの火力だったり、草刈り程度の鎌鼬だったり、コップを水で満たす程度である。強い者であれば大きな岩を砕いたり、森の成長を加速したり、雨を降らしたりと色々できる。

得意魔法だと少ない魔力でも絶大な威力の魔法を使うことが出来るし、相性の良い魔法も効率的に使える。

その恩恵でエルフの国は少ない人数でも裕福な暮らしができるのだ。


「今日から一緒に学ぶことになったステレラです」

「よろしくお願い致します」


その後デトワールより、この国の第一王子アルセイデスと貴族の子息であるレイモンドを紹介され座学に移った。

座学とは言っても、転生前の日本のような授業形式ではなく、それぞれのレベルに応じた教科書を与えられ各自取り組み、分からないところをデトワールに質問するなりして理解を深めていく形式である。


ただ全く関わらないという訳ではなく、息抜きとでも言うようにレイモンドが冗談を言ってきたりもする。

レイモンドは貴族の息子と言っても気取った様子もなく親しみやすい。レイモンドはエルフでは珍しい金色の髪を持っている。目の色は青で、まさに理想の王子様のような見目をしている。

ただその見目に反して所作はゆるく表情に締まりはない。へらへらしてはいるが、目的はあるようで芯はしっかりしているように感じる。掴み処がない雰囲気は女性にモテそうだ。


第一王子アルセイデスはエルフを代表するかのような美しさだ。

銀色の髪は後ろの低い位置で一つに束ねられており、腰ほどの長さまである。サラサラの髪はバラバラにならないようにか、等間隔でシンプルで上品な飾りのついたもので束ねられている。森のように深い緑色の瞳はとても落ち着いた雰囲気の王子にとても似合っている。まだ幼く中性的な顔立ちの為、時折少女にも見える。

性格はとても素直そうだ。王子らしく振舞おうという心掛けが良く感じ取れる。10歳という幼さがあるにも関わらず、堂々とした仕草は彼の努力を思わせる。


印象としては二人とも優しく、親切だ。良き学友になれそうだ。

ステレラは密かに、二人に認めて貰えるような良き友人になりたいと心に思うのだった。


座学はとても面白い、という訳ではなかったが、学ぼうとするステレラにとってはとても為になるものだった。というのも、実家にはない本が沢山あったからだ。ステレラの実家には基本的な魔法書しかなく、実用的な本と言えば一般家庭向けの生活魔法の書物が数冊あるくらいだった。それでも魔力の向上にはつながったし、何度も何度も繰り返し学習し実践したお陰で五大元素魔法は完璧に扱えるようになったのだから無駄はないのだけれど、やっぱりもっといろんな魔法を覚えたかったというのは本音だ。ここはその欲を満たしてくれる。


「デトワール先生、これはこういうことでしょうか」

「ええ、そうですね」


分からなければ質問できるし、ある程度理解を深めたら実践。その繰り返しはかなり効率が良かった。


その日は得意魔法と苦手魔法を確認するために午前中は色々な中級魔法を学び、午後は学んだ魔法を行使した。

魔法には五大元素魔法である火、木、土、風、水があるが、それ以外にも特化魔法や黎明魔法、特異魔法、原始魔法と種類がある。

因みに精神魔法は黎明魔法の光と闇から派生したものだそうだ。


「・・・苦手な魔法はなさそうですね、というか全部無詠唱が可能のようですし、得意魔法ばかり・・・?」

「ですが、中級は得意魔法でなくても無詠唱発動が可能なのでは・・・」

「可能ですが、それは経験を積んでからの話しです。数回発動しただけで無詠唱はどんなにベテランの魔法使いでも無理ですよ」

「そうなんですね、嬉しいです!じゃあ私はこんなに沢山の魔法を使えるんですね!」

「しかも五大魔法以外も全部適正があるとか、ありえない・・・」

「ステレラちゃん何者・・・?」


実家にあったのは基本的な魔法書ばかりだと思っていたが、まさか五大元素の魔法書のみだったとは思ってもいなかった。それだけでもかなり面白い勉強だったのだが、こんなにも沢山の種類の魔法があった事はここで学ぶまで知らなかった。


「色々試してみたいことばかりです!」

「私も助言をしますから、試したいことがあるときは私に聞いてくださいね」

「ありがとうございます!デトワール先生」


毎日毎日飽きることなくどんどん学び、ステレラは驚くほどに短期間で成長していく。その成長っぷりはデトワールの心を高ぶらせた。


勿論毎日勉強ばかりしている訳ではない。

休みには王女たちが遊びに誘ってくれるし、両親もちょくちょく様子を見に来てくれた。父トゥルヤルの友人が国王という時点で予想はついていたのだが、母マーリクも王妃と友人らしい。それもあってか姫たちはまるでステレラを妹のように思っていた。


特にステレラを可愛がっているのは73歳を迎える第二王女のダフネだ。どうやら本当は妹が欲しかったらしい。


王族は王子が誕生した時点でその後子供を作らない。余計な継承問題を作らせないためだ。逆を言えば王子が生まれなければ何人でも子供を作らなくてはならないのだが、元々長寿のエルフは子供が出来難い為に苦労をする王もいたらしい。


実際現王も王子ができるまでは少なからずプレッシャーを感じていたのではないだろうか。第一王女エウリュディケは105歳、第二王女は73歳、第一王子が10歳と年の差が随分と離れている事から苦労がうかがえる。


何代か前の王はなかなか王子が出来ず、10人も女の子を作ったとか。その時の一人がステレラの先祖である。王族の王女は結婚適齢期になるとその殆どが貴族へと嫁に出される。王女には継承権がないため、殆どは自由意志で決めることが出来る。他国との交流が殆どなく、尚且つ少数種族だからこその自由なのだろう。なので王女と言えども結婚にそれほどの強制力はなく、結婚せずに自らの力で生きる事も出来れば、庶民との恋愛結婚も可能ではあるのだ。前例は少ないがない訳ではない。


そういう事も関係して、王女たちは結構自由に過ごしているのだ。

因みに、エルフの結婚適齢期は100歳から300歳と言われている。

魔法の設定練り直す予定です。

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