精神疾患と睡眠の関係は、卵とニワトリの関係?『寝れてれば良し』は暴論にしても、一理あり?
月曜日。
月曜の朝だからか、月曜の朝なのにか分からないけど、眠い。身体が重い。
「おはようございます。」と、できるだけ爽やかに挨拶してみる。
「おはようございます。」と、岡林先輩はいつもと変わりない。ふわりとほほ笑んでる。月曜の朝なのに…。
同じ地球上の生物として、存在を疑うわ。
「川村さん、説明を始めましょうか。」
朝イチ?
寝そう…。岡林先輩の前で居眠りしなくない。
「薬の説明会では、参加する人によって説明する内容は若干変えることがありますが、基本的には毎回説明することは同じです。
最低限言わなければいけないことを説明します。
☆抗精神病薬は、
前も言いましたが、気持ちを落ち着けるお薬と説明します。
幻聴や妄想を抑えたり、意欲を出す作用もあるとも説明します。眠前に抗精神病薬を飲むと深い睡眠がとれることも説明して下さい。睡眠について何度も説明することによって、睡眠が大切であることを印象付けます。
☆抗うつ薬は、
2~3週間飲み続けなければ効果が出ないことを説明して下さい。本来はもっと時間がかかることが多いですが、『最低』2~3週間かかると説明します。
効果が出る前に、吐き気や胃のむかつきが出ることがありますが1週間くらいで慣れてくることが多いです。飲み始めや量が増えた時は1週間ほど吐き気止めが処方される場合もあります。
☆抗不安薬は、
イライラした時や不安になった時の頓服で処方されている場合も多いのですが、早く効くものでも効き始めるのに飲んでから20~30分くらいかかることを説明して下さい。しんどくなり過ぎない時点で内服をした方が楽になることが多い様です。
依存してしまうこともありますので1日に飲める回数が決まっています。
☆感情調節薬は、
全てではないですが、ほとんどが癲癇の薬です。
速効性はありませんが、気分を安定させるのに使われます。
精神不安からの過剰な食欲を抑える作用のあるものもあります。
☆眠剤
来られた患者さんがしっかり眠れているか確認ができるといいですね。
ここでもまた睡眠が大切であることを説明して下さい。
薬の説明会に来て下さった入院患者さんには、全て後日、服薬指導に入ります。言い忘れたことがあっても大丈夫です」
なんとか意識を保ったまま最後まで聞けた。でも、情報が多過ぎる。
言い忘れたことがあっても大丈夫ってことが一番印象に残った。良かった。言い忘れても大丈夫。
でも、睡眠ってそんなに大切なの?
テスト前によく父親が『寝不足で死ぬことはないぞ。死ぬ前に寝ちゃうからな。アハハ。睡眠を惜しんで勉強しなさい。』と言っていたけど…。
「岡林さん、そんなに睡眠は大切ですか?」
「川村さん、眠れないことが今までありました?」
「ないです。寝過ごすことはよくありますけど、眠れないことはないです。」
「そうですね。川村さんはそんな感じですね。
眠れるということは健康な証拠です。精神科の患者さんは、基本的には眠ることが難しい場合が多いです。特に、精神状態が乱れてくると、睡眠がとれにくくなるようです。逆に言えば、眠れているのであれば、精神的にも落ち着いていると言えます。症状のために睡眠が取れなくなるのか、睡眠が取れなくなるから症状が出てくるのか、それは私には分かりません。
最近は、精神的な問題だけではなく、睡眠不足が、糖尿病や肥満の原因の一つになる可能性も示唆されています」
「ダイエットしている人はたくさん寝た方がいいですか?」
「そうですね。ダイエットしている人には睡眠をしっかりとるように言った方がいいかもしれませんね。でも、寝ればいいということでもないでしょう」
睡眠は適正量を取るのが望ましい、と。
「睡眠薬って、飲んだ方がいいですか?睡眠薬ってちょっと抵抗があります」
「睡眠薬を飲まないで、ホットミルクや湯たんぽで眠れればそれが一番ですけど、眠れないよりは薬を飲んででも眠る方がいいと、私は思います」
湯たんぽ?おばあちゃんの知恵袋的な?
「やっぱりベンゾジアゼピン系の睡眠薬が多いですか?」
「ベンゾジアゼピン系が多いですけど、深い睡眠がとれなくなった人には、抗精神病薬も処方されます」
「寝る前に抗精神病薬を飲んでいる人が多いと思っていました。深く眠るためなんですね」
どうして眠れないんだろう?わけわかめ。
「岡林さん、やっぱりうつ病の患者さんが眠れないですか?」と、本で読んだにわか知識を放り込んでみる。
「どの病気かというよりは、症状によると思います。
統合失調症であっても、双極性障害(躁うつ病)であっても、他の疾患であっても、症状が悪ければ悪い程眠れないと思います。
川村さんであれば、舐めるだけで寝てしまう様な薬を何錠飲んでも眠れない患者さんもいます」
舐めるだけで?そうね、寝そう。
眺めるだけで寝れるかも。