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机上の空論と化したの精神科の薬の知識と、分からない人には雀の涙ほども分からない他人の悩み。

病棟見学が終わり、薬局に戻ると市川主任がみんなに紹介してくれる。


「本部の薬剤部は本館にあるけど、精神科は別館だから精神科だけの薬局があります。

平日の日中は精神科の調剤はここでしてるの。病棟の担当は皐月ちゃんで、助手のアリサちゃん、DIと管理業務は私が担当してるの。うーん、見学が早めに終わったから…、どうしようかな。そうね、薬の監査してて」


皐月ちゃん?あ、岡林先輩の下の名前か。


「はい!」


薬の監査。薬剤師になってから毎日毎日、薬の監査ばかりしている日々。


精神科の症状とか対応とかは分からないけど、薬は少しは分かるはず。




ん?何これ?聞いたことない薬が半分以上。


ルーラン?ロナセン?調べると、抗精神病薬と記載されている。抗精神病薬は、統合失調症に使われる薬。


抗精神病薬ね。成分名は、ペロスピロン、ブロナンセリンそれなら知ってるけど…、詳しくは分からない…。




「岡林さん!」


もう、先輩に聞くしかない。自己判断で間違ったら大ごと。


「薬が全然分かりません」


「…。処方せんを見て、良く出る薬の名前を覚えて下さい。最大用量は必ず確認して下さいね」


岡林先輩は灰汁のない日本的な美人顔で、常に優しくほほ笑んでいる。年齢は聞いていないけど、おそらく私より数年早く生まれている。


薬の最大用量というのは、薬によって若干の違いはあるけど、「これ以上飲んだらは副作用がたくさんでるかもよ」「これ以上飲んでも効果は変わりませんよ」「これ以上飲んだら身体に負担がかかるかもよ」という量。




薬剤師は、医師が処方した処方箋のとおりに薬を作る。


処方箋に不備や間違いがないかどうかも確認する。医師も忙しいし、間違いだってたまにはある。ヒューマンエラーってやつね。


1人の薬剤師だけでは漏れがあるかもしれないので、基本的には2名以上の薬剤師が目を通す。


私みたいに精神科の薬剤が全然分からない場合、監査もできないので監査の練習だけ。精神科の薬の勉強しなくっちゃ。


処方されている薬は、大学でチラッとならっただけなので、とにかく治療薬マニュアル(薬の辞書)に線をひきまくる。




驚きビックリ、全然分からない。


いや、まあね。大学でいろいろ勉強したんだけど。結局、机上の空論みたいなことってあるから。


名前と種類と通常使用する量と用法(飲むタイミング:1日3回など)を確認する。このページには付箋を貼っておこう。




必死の形相で監査の練習をしている私に、岡林先輩が優しく声を掛ける。


「精神科の薬は色々な使い方をしますので、分からない時はすぐに聞いて下さい。薬以外のことでも分からないことは聞いて下さいね。」


色々な使い方?

はて?



今日処方された薬は全て目を通した。



それで、と。今日処方された薬のおさらいをすると、ほとんどの薬が抗精神病薬と眠剤。


眠剤がこれだけ出ているなんてね。眠れない人が多いのか。


でも、眠れないってなんだか羨ましい。映画観たり、本読んだり、色々ともっとできる気がする。

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