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精神科の病棟見学と、動じない心は亀の甲より年の功?

閉鎖病棟は、鍵がないと出入りできない病棟で、開放病棟は鍵がなくても自由に出入りできる病棟。


自由に出入りできるとはいえ、精神科の建物が全て夜6時~朝6時までは施錠されるので、施錠されている時間は出入りできない。精神科病棟全体を夜間閉鎖するために、精神科病棟を別館にしてあるそうだ。


病棟は3、4、5階。全階、大体同じ作りになっている。


東西に廊下が伸びていて、その廊下の南側に患者さんの部屋があり、中央にホールがある。ホールには机と椅子、新聞や雑誌、そしてテレビが1台ある。ホールの北側にナースステーションと診察室と処置室がある。


5階には他の階と違って、保護室が7つある。




3階病棟に行ってみた。


3階は回復期で、3カ月以上入院している人の病棟だそう。


つまり、3カ月では退院できなかった患者のいる病棟。比較的重症な患者が多い上に、高齢化が進み、認知症を併発している患者も多いらしい。


この病棟は、失禁をすることが多いため、便や尿の臭いが微かにだけどしている。


365日清掃業者が来てくれるし、失禁などがあったときにはその都度、清掃業者が掃除に来てくれる。3階の臭いは完全には消えないらしいけど、新しい建物だからか不潔な感じは全くしない。


入院患者一覧表を見てみると、ほとんどの患者が古希を過ぎている。


みんな穏やかな顔をしている。隅の方で独りでブツブツ言っている人もいるけど、ホールでゆったりテレビを観たり、新聞を読んでいる患者さんが多い。




4階に行ってみた。


キレイで明るい。臭いも全くしない。


急性期の開放病棟。


つまり、3カ月以内に退院できて、出入りも自由で構わないという患者のいる病棟。


「自殺する可能性が高い人は、開放病棟に置いておくのは怖いのよね」と、市川主任。


患者さんが自殺すること自体悲しいけど、入院中に自殺されたら本当に辛いだろうな。


ある意味リスクの高い病棟です、開放病棟。


市川主任曰く、危険なサインを見つけたら閉鎖病棟に移る事もあるそう。


危険なサインって何?目で見えるもの?第六感的な何か?


そもそも自殺って止められるの?


謎が謎を呼ぶ、精神科病棟。




最後に、5階病棟。


急性期の閉鎖病棟。保護室が7つある。


ん?便の臭いがする。


「便遊びをする人がいるから、ゴメンよお。ちょっと臭うね。もうちょっとしたらマシになるから。」と、長身の看護師長さんが笑顔で教えてくれる。うわあ、男前。


「新しい薬剤師さん?保護室入ってみる?」


やけに爽やかな看護師さんに連れられて保護室に入ってみる。


保護室は4畳くらいの広さで、私の肩くらいある衝立を挟んで剥きだしの和式トイレがある。窓はない。


「頭を打ち付けても大丈夫なように、壁と床には衝撃吸収材が厚めに入ってるんだよ。」と、壁を拳で軽く叩きながら、爽やかな笑顔で話してくれる。


頭を打ち付ける…。


頭打ち付けたら痛いよね?自ら頭を打ち付ける…?なんで?




この5階病棟は、


「暴れているところ保護しました」と、警察などから患者さんが連れられて来ることも結構あるそうで、男性看護師の割合が高い。こんなに男性の看護師さんがいるところは初めて見た。


若く見える男性看護師も全員結婚しているそうだ。


「全員奥さまの尻に敷かれているみたいなの」と、市川主任が目を輝かせて教えてくれる。市川主任はゴシップ好き、と。




5階病棟のホールに行ってみる。


5階は最も緊急の処置が必要であったり、自殺などの危険性が高い患者が入院する病棟だけど、なんか普通。精神科って、分かりやすく変な人がいるイメージだけど、暴れている人がいるわけでもなく、ホールに出ている患者はみんな穏やかに過ごしてる。


「薬剤師さん?すごい眠たいんだけど、薬が多いと思います。」と、いつのまにか側に近付いてきた患者さんから話しかけられる。なんで薬剤師って分かったんだろう。あ、名札に薬剤師って書いてあるからか。対応が良く分からないから、半笑いで後ずさって退散。




鍵を開けたり閉めたりガシャガシャしながら薬局に戻る途中で、市川主任に聞いてみる。


「市川主任、さっき患者さんに、『眠たいけど、薬のせいじゃないか?』って、聞かれました。逃げてきてしまったんですけど、どうしたら良かったですか?」


「眠たくなる?思い付きで言ったのかもしれないわねー。本当に眠気が気になるなら、また聞いてくるでしょう。」と、市川主任はニコニコして言う。


『本当に』眠気が気になる?


「市川主任、便遊びってなんですか?」


「便遊びはねー、自分の便を床とか壁に塗りたくる人がいるのよ。うちの入院患者では今は1人だけだけど。その人ねー、調子が悪いと便遊びするの。困るのよね。掃除が大変なの。」と、ちょっと口を尖らせて言う。




市川主任の話し方はなんだか女子高生みたいだ。話題は何であれ、淡々と話すから深刻さに欠ける。きっと何にも動じないんだろう。還暦だから?還暦なのに?

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