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いざなわれた少女たち  作者: おじぃ
北国の旅

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魔力は有限

 動物を慈しみ、世界の安寧を守る。世界にもふもふした空気感を与えるもふもふライフカンパニー。


 だが、予想外の事態が発生した。


「ああもう沙雪ぃ! 世界中のあっちからもこっちからもクマを保護してくれってメールがたくさん来てるよ!」


 明日香ちゃんがPCのブルーライトに照らされながら頭を抱えている。


「ほへ」


 コールセンターを設置しなくて良かった。厳密に言えば、コールセンターは羽心音ちゃんの声を合成したAI音声で対応している。声色は数パターンあり、同時刻に電話をかけてきた人から「あら、私のときもその人だったわよ」「あらやだそうなの。もしかしてちゃんと人が対応してないのかしら」などと悪評を立てられる可能性があるからだ。


 人だろうとAIだろうと問い合わせ内容に対応できれば構わないだろうに、心が通ってないとかなんとか難癖を付けてくるクレーマーが一定数いる。そもそも人のほうがやっつけ仕事で、AIのほうがよほど愛が込められている可能性さえあるというのに、悲しきかな世の中には前提から間違えている者が大勢いる。


 それはそうとクマだ。この世界ではクマを含めた動物や虫も経済活動に参加できるが、人間がそうであるように、すべての個体が必ずしもその適性を持ってはいない。パチンコに明け暮れるアキアカネもいれば、買い物ひとつできないクマもいる。そして、それが多数を占めている。


 現在、世界各地でクマによる被害が深刻化していると報道で知っているが、そのすべてを救っていたら動物園のキャパが持たないし、登別のぼりべつの数百倍もの規模になるであろうクマ牧場になってしまう。仮にその規模のクマ牧場を経営しても黒字になる可能性はゼロではないが、先に述べた通り、経済活動に参加できる適性を持った動物は少ない。


 この世界の人間に適用しているように、そういった動物は殺処分しなければならない。


 農作物を食い荒らしたクマを、経済活動に参加している者やその愛玩動物の命を奪ったクマを、生かしておくわけにはいかない。


 ということで、羽心音ちゃんと二人で津々浦々と殺処分をして回ったが、彼らが市中に出没するのも理由がある。


 天候不良、過剰な開発、特に後者は深刻で、経済活動のために各地で自然破壊が横行し、希少生物が棲息する森や湿地帯まで魔の手が及んでいる。つまるところ、クマは犠牲者でもあるのだ。そう考えると殺処分は可哀想という声も理解できなくはない。


 そんな中、開発事業を急加速させている企業がある。


 ブレイブマンカンパニーだ。


 通信販売業世界シェアナンバーワン。それだけに飽き足らず、最近は世界中でホテルやリゾート施設、魔力発電所の建設など、多岐に亘る開発を行なっている。


 魔力は資源。それがどれくらい残っているかは定かではないが、限りがあるのは確か。それが尽きるとこの世界は消滅する。魔力は現実世界のユーザーによる課金額に応じて運営側がチャージしたり、死者が発生すると消費量が抑制されて節約される。また、植物の光合成や肉体の堆肥化によっても増えるそう。


 だがそれを上回る消費をすると、地が痩せ細って水底に沈み、やがてサーバーがダウンして終焉を迎える。


 ブレイブマンカンパニーの経営者はそれを理解しているのだろうか。ゲームの世界など、地球より遥かに速く環境破壊が進むだろうに。


 ブレイブマンカンパニーを敵視するようになってから常々思う。


 私の存在意義は、この世界の守護だ。

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