安全安心な人身売買
ホテルに戻り、私は一先ずブレイブマンカンパニーにウェブ対談を申し出たが、1ヶ月待っても返事がなかった。その間もこの世界の沿岸地域の侵食は進み、余談を許さない状況。
他方、何も知らぬ民衆は安値や抽選で全額キャッシュバックなどのインセンティブに釣られ嬉々としてブレイブマンカンパニーを利用している。調査したところ、ブレイブマンカンパニーはリーズナブルなサービスの提供により多くの顧客を集め、その個人情報を業者に売って莫大な利益を上げているようだ。その辺りは消費者の責任なので私は関与しないが、その利益で侵略兵器などを製造している可能性もある。
もふもふライフカンパニーならポイント還元率は2%、当社クレジットを利用なら3.5%とそれなりに良く、個人情報を外部に売らないのが何よりもの利点。安全安心もふもふライフカンパニー。
「あー、仕事終わったー」
もふもふライフカンパニーの社員として働く明日香ちゃんは朝から画面とにらめっこ。主に自動で行われるウェブ販売で不具合が生じた際の対応や、カスタマーレビューの管理、必要に応じ顧客からのメールに返信をしている。仕事を終え、私の隣の席で伸びをしている。
ほか、キャロルは経理、羽心音ちゃんはテレクラでの経験を活かしオペレーター。それぞれ勤務時間は朝9時から17時。超過勤務(残業)が発生した場合の手当は基準内賃金に3割を加える。超過勤務手当の平均時給は3百ペイ、日本円にして3千円なので、経営者としてはなるべく定時で終わってほしい。
特に超過勤務が発生しやすいのはオペレーターの羽心音ちゃん。客からの暴言や長話により時間が引き伸ばされる。前者については外部の取り立て屋に頼んで賠償金を徴収しているが、支払い能力がない場合は❛相談役❜に相談して人身売買に出している。労働力としてではなく臓器を売るので大きな利益が出る。現実世界の日本とは違い、カスハラには容赦ない。そのような人物の殺害についてはボビーたち運営陣も黙認している。
私も疲れたので、少し外の風に当たってこよう。




