害獣対策
沿岸部の現地調査を終え、ブルーフォレストでの目的を果たしたので、ホテルでもう一泊してスカに戻る。
翌日、ブルーフォレスト駅。曇り、気温12℃。さらり風がひんやり。いつも思うがゲームの世界なのによくできたものだ。
スマートウォッチに『ブルーフォレスト→スカ』の片道乗車券情報をダウンロードし、ブルーフォレストからアッパーフィールド行の列車に乗る。
乗車券はチャージ額から引き去る方式ではなく経路情報をダウンロードする方式なので、鉄道会社の営業規則により片道100キロメートルを超える場合は指定した経路上で途中下車可。一度改札外に出て再び乗っても追加運賃は発生しない。
往路同様、乗客がどの等級の車両に割り振られるかは鉄道職員が判断する。私とキャロルは2等車、羽心音ちゃんは3等車、明日香ちゃんは音楽にノッて踊り狂うパリピ用の無蓋貨車に割り振られた。無蓋とは文字通り蓋がなく、コンテナのような密閉性はない篭を指す。軽トラの荷台部分を想像するとわかりやすい。
ブルーフォレストとの別れを惜しみつつ列車に乗り、指定された個室に入った。不燃性のソファーがふかふか。木製のテーブルも防火加工がされている。
往路は列車のブレーキが故障したが、復路は無事アッパーフィールドに到着。そこから普通列車を乗り継ぎ、私たちはスカに帰着した。
「あらおかえりなさい」
スカの家へ戻る道すがら、アケミさんと出合った。私たちは「ただいま帰りました」などそれぞれの挨拶をした。
「今夜はね、海軍カレーよ」
そうか、スカといえば弾薬と軍隊の街。洋上生活をする海軍は曜日感覚を取り戻すため毎週金曜日にカレーを食べるという。
「どのみち、あなたたちと違ってこの世界の住人である私は消える運命よ」
帰宅してアケミさんがカレーをつくっている間、私は自室でテレビのニュース番組を見ていた。
「イノシシによる被害が深刻です。こちらビッグコーストのミカン畑ですが、イノシシが作物を食い荒らし、育てていたミカンはほとんど残っていません」
アナウンサーがリポートしている。インタビューされている畑の主は「今年はほぼ無収入だよ、もうどうしようもない」などと嘆いていた。
ふむ、この世界でもイノシシの被害は深刻なのか。
ビッグコーストはスカから約40キロ西、はじまりの地、ビギンズタウンからは10キロほど西の海と山が共存する閑静な町。
ブレイブマンカンパニー対策もしなければならないが、イノシシ被害の対応は私の使命の一つである気がしなくもない。これを機にぼたん鍋の良さが広まれば率直にうれしい。
半ば慈善事業ではあるけれど、戦闘訓練も兼ねて少しばかりぼたん鍋ビジネスを始めてみましょうか。




