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いざなわれた少女たち  作者: おじぃ
北国の旅

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まもなく終点

「やべえな、そろそろ飛び降りるか?」


「ちょ待てよ、まだ80キロ出てるぞ。飛び降りたらそこでジ・エンドだ」


「しゃあねぇな、ギリギリまで踏ん張ってみるか。だいたいブレーキ故障してるのは貨車2両だけなのに、なんでこんなに減速しないんだ?」


「もしかしてアレじゃね? 全車両故障じゃね?」


「低賃金でクソみてえなヤツしか集まらない会社の末路だな。車両の整備もろくにできちゃいないってわけだ」


「できるヤツが辞めたりクソみたいな連中の中にいて病んでリタイアするんだろうよ」


「ブラックだな、この会社」


「知ってるか? 子会社なんか始業1時間前に出勤して、夜遅くまでサービス残業してるんだぜ?」


「アウトだな。あーあ、いまごろ現実世界のみんな、どうしてるんだろうな」


「さあな、残業代1分単位で支給されるし月45時間に達しそうになったら上から止められるし、デスクワークで残業だったら助役が牛丼買ってきてくれるし、いい会社だよな」


 機関士二人は、現実世界では電車の運転士。異世界に飛ばされてブラック企業に入り自暴自棄な日々を送っている。現実世界では客を見捨てて列車から飛び降りるなんて考えなかった。ブラック企業は人格もブラックにする。逆も然り。



 ◇◇◇



 沙雪は急カーブでも減速せず猛スピードで走る列車に違和感を抱きつつも、異世界の列車なんてこの程度だろうと諦めながら、個室でスマホ片手に動画を見ていた。ブレーキが故障した人面機関車が終着駅で激突する海外の特撮モノ。このシリーズは複線の線路を縦横無尽に渡ったり、列車同士が競争するなど暴走列車の日常を描いた物語で、沙雪は特に毎度のように終着駅に激突して駅舎を破壊するシーンがお気に入り。


「ふ~う」


 特撮を見て気分爽快の沙雪は、有事、特にブレイブマンカンパニーとの戦闘に備え新型砲弾やミサイル開発の続きに取りかかった。



 ◇◇◇



「そろそろブルーフォレストに到着だヨー! ダンスパーリーもいよいよフィナーレ。ラストまで盛り上がってこうゼー!」


 フォー!!


 DJとパリピは元気いっぱい。


 ブレーキが利かないコトラ号でのダンスパーティーはいよいよフィナーレ。吹雪の中をオープンカーで駆け抜け疲労困憊の明日香はやっと解放されると安堵。


 しかしまもなく終点だという割に列車は高速。


 明日香は感じていた。寒さでもはや口を利ける状態ではないが、感じていた。


 この列車、駅に激突させる気じゃね?


 クソゲー世界だし、私らみたいな下人は事故らせるか海に沈めるかして始末するんでしょ? いままでだって見てきたもん。


 そういえばこの世界に来たばかりのころ「世界は輝きに満ちているんだ!」とか言ってた少年も、沙雪にやさしく見送られて結局帰って来なかった。


 いよいよ私の番が来たってわけだ。


 高速列車で吹雪に曝して身動き取れなくして、トドメは激突ですか。

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