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いざなわれた少女たち  作者: おじぃ
弾薬の街、スカ

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沈みゆく島

 泳ぐには泳ぐけれど、海は泳がない。ウェットスーツでも着てサーフボードに乗ろうかとも思ったけれど、あれは波乗り用の板。しかし今回のミッションは波に抗ってモンキーアイランドに渡るというもの。


 ならば___。


 私はインターネットの海を泳いで、少々高価な魔法道具を自社サイトからダウンロード。


「これは、何かしら?」


 とキャロル。羽心音ちゃんもダウンロードしたそれを見ている。


「見ての通り、魔法のステッキ」


 私がダウンロードしたのは、キャロルが持っている魔法のステッキと見た目は大して変わらないもの。


 異なる点は、キャロルのステッキは魔法使い本人のエネルギーを動力とするのに対し、今回ダウンロードしたステッキは世界のエネルギーを利用するところ。


 今回の相手は海。つまり自然。人体から得られるエネルギーなど高が知れているので、キャロルのステッキでは今回のミッションをクリアできない。キャロルのステッキと今回のステッキでは、幼女が引く人力車と、貨物列車を牽引する機関車数万両くらいの力量差がある。


 さて、それではさっそく使ってみよう。


「えいっ」


 海に向かってステッキを一振り。


 ざあああ……。


 海の水が左右に捌け、幅1車線ほどの真っ直ぐな道ができた。


「わあ、すごい!」


「やるわね、あなた」


「やるわよ、私」


 己が楽をするためなら、多少の出費は厭わない。


「おい沙雪、それは反則だ! と言いたいところだが」


「よく考えたネ! 上手なやり方を考えて創意工夫するのも人生ダヨ!」


 ボビーとドミニクも納得。後ろめたいことは一切ない。


「さあ、行きましょう」


 私は真っ直ぐ前を向き、キャロルと羽心音ちゃんを両サイドに引き連れ歩き出した。


 寒いから、ダウンコートもダウンロードして着用した。キャロルと羽心音ちゃんの分も買ってあげた。


 ところで、明日香ちゃんは___。


「うひゃあああ! なにこれなにこれ!?」


 道を拓いた分、海の水嵩は増す。道と海との境界にはうねりがあり、海水は寄せては返す。よって明日香ちゃんは、海から脱出できない。


 しかしここで明日香ちゃんを救助するためにうねりを解いたら道が閉ざされ、ダウンコートを着た私たちはたちまち海に呑まれてしまう。


 そんなのは、イヤだ。


 ということで、愚直に寒中水泳に励む明日香ちゃんを横目に、私たちは歩みを進めた。


「え、ちょっとちょっと!? 置いてっちゃうの!? 私置いてかれちゃうの!?」


 ……。


 明日香ちゃんの叫びに耳を貸すと、良心が疼く。私たちは決して横を向かず、後ろを振り返らず、前だけを見て進む。


 さて、そろそろモンキーアイランドに上陸。


 と、終業直前のようなあと少し感が込み上げてきたところで___。


「ギヤアアア!!」


 モンキーアイランドから、続々とモンキッキが押し寄せてきた。ラッシュアワーの駅より高い密度だ。


「魔法の絨毯!」


 衝突回避のためキャロルが咄嗟に魔法の絨毯を出し、私たちはそれに乗った。


 あ、最初から絨毯に乗ればラクラク移動ができた。


 と気付いたところで、空へ浮上。


「うわあああ……」


「そういうことね」


 眼下の光景に唖然とする羽心音ちゃんと、冷静に納得するキャロル。


 いま正に、海水が島を呑み込んでいる。


 否、島が、海水が、みるみる地底へ引き込まれている。既にいくらか沈下していたアケミさんのリゾートホテルは、真っ先に姿を消した。


 土埃が舞い上がり、視界がぼやけてゆく。


「引き返すわよ」


 キャロルが絨毯を操縦し、私たちは本土へ引き返した。ついでに途中で明日香ちゃんを拾った。

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