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いざなわれた少女たち  作者: おじぃ
弾薬の街、スカ

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パーキングバックドリフト

 ショッピングに夢中になって、服やら何やらを電子化してサーバーに預けきれないほど大量購入。気が付けば現実世界同様、両手いっぱいに紙袋をぶら下げていた。


 ほへ、もう16時55分。


 確か17時ちょうどに駐車場に集合の約束だったはず。そろそろショッピングモールを出て駐車場に行かなきゃ。


 私はとことこと、少し速足でショッピングモールを出た。このペースなら16時58分30秒くらいには駐車場に着く。


「あ……」


 駐車場まであと少しの地点、日本の商品を取り扱う商店の前に差しかかった。一旦停止して扉の閉まった店の中を覗くと……。


「サッ〇ロ一番みそラーメン……」


 食べたい、これは食べたい。この甘いものと肉まみれのファンタジー世界に来てから一度も食べていない好物。青森でも茅ヶ崎でも、よくこれを食べていた。ネギは売っていないようだけど仕方ない。


 私は本能的に商店の扉を押し開けていた。



 ◇◇◇



「沙雪ちゃん、戻ってこないわねぇ」


 16時59分、アケミは未だ戻らぬ沙雪を心配していた。


 沙雪が商店に立ち寄っているころ、既にほかのメンバーはワゴン車に乗っていた。運転席にアケミ、助手席に羽心音はこね、3列席の2列目、スライドドア横の右側にキャロル、左側に明日香。なおこの車は右ハンドル。


「ショッピングに夢中になのか、それとも何かに巻き込まれたかなあ」


 と羽心音。


「沙雪はだいじょぶでしょ」


「ええ、逮捕されたとき、警察署をロケットランチャーで吹き飛ばそうとした女よ。何かあっても一撃必殺だわ」


 そんなことを言っている間に17時になった。


「17時ね。出ましょうか」


 日本の高速道路にあるパーキングエリアのように広い駐車場。沙雪はまだ戻らないが、アケミはワゴン車をバックさせ始めた。


 現実世界の自動車と同様にピーッ、ピーッ、ピーッと警告音が鳴り、ゆっくりとバックするワゴン車。


「え、まだ沙雪戻ってないよ」


 明日香のその一言が、アケミマシンガンのトリガーを引いた。


「時間になっても戻ってこないようなヤツは置いてくんだよこのボケが!!」


「うえっ!?」


 狭い車内で急に怒鳴ったアケミに驚いた明日香。羽心音とキャロルもビクッと仰け反った。


「だから!! 時間も守んねえようなクズは置いてくっつってんだよ!!」


「やばいやばいやばい怒っちゃった! あ、沙雪!」


 明日香は百メートル先に沙雪の姿を認めた。親切なことにスライドドアを開けて沙雪を待つが……。


 ウイイイイイイン! キュルルルルッ!!


 明日香がスライドドアを開けた途端、アケミはワゴン車を急発進させてバックドリフト! ピーッ、ピーッ、ピーッという穏やかな警告音とは相反して駐車場内をバックで蛇行! ぶるんぶるん振られる車体と前後にスライドするドアにシートベルト着用ながらも振り落とされそうになる明日香。


 異変に気付いた沙雪はしかし運動が苦手で、大量の荷物を持ってぽてぽてとこちらへ走っている。


「おいてめえさっさとドア閉めろや危ねえだろ!! だいたいあの清楚なフリしたクソガキ!! ピチピチギャルだったとき私が狙ってた男を横取りしたクソ女とそっくりなんだよアバズレがあ!! ああいう女は清楚なフリしてあっちの穴でもこっちの穴でも棒咥えてアヘッてんのが相場なんだよゲスが!! ゲスゲスゲスがああああああ!!」


 と叫ぶアケミだが、外国人の友人が多く、興奮して英語を喋っているので明日香と羽心音には何を言っているのかわからない。


「え、え、えっ!? なに言ってんの!?」


「私も英語わからない!!」


「わからなくてもいいことを言ってるのよ!!」


 と、唯一英語を理解できるキャロル。


 広い駐車場をバックで蛇行突進するアケミワゴン。周囲の人間は「ワーオ」と楽しそうに見物している。


「おいとっととドア閉めろっつってんだろ単細胞!! あんな女に情けくれてやる必要なんてないよ!! 故障したロケットランチャーで自滅するように仕向けたのにちゃっかり修理しやがってあのネコかぶり!! なんで男はああいうのに騙されんだよ見る目ねえなクソバカクソ!! ひいいざまあ見ろあの男!! クソ女に貢がされて借金地獄になったうえにホームレスになっても借金取りに追われてやがるぜヒャーハハッ!!」


「だから何!? なんて言ってんの!?」


「だからわからなくてもいいことよ!!」


 と、そのとき、バックドリフトするワゴンにひょいっと沙雪が飛び乗ってきた。


「ふぅ、時間は守らなくちゃだめよ?」


「ごめんなさい」


「え、え、え!?」


 たった今まで発狂していたアケミが何事もなかったかのように落ち着いた。


 こうして一行は平穏にお家へ帰り、サッポ〇一番みそラーメン(ネギなし)を食べた。

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