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いざなわれた少女たち  作者: おじぃ
弾薬の街、スカ

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53/91

ショットブラスト

 背後からの妙に優しい男の声。


 どうする? 振り向いたら殺されるかもしれない。振り向かなくても殺されるかもしれない。


 いずれにせよ、彼奴きゃつは私たちを殺す気だ。これは間違いない。


 この異臭の原因は、何らかの生物を殺害したときに生じるもの。しかもまだ新鮮だ。


 扉が開いている建屋の中に大きなオーブンのような装置が見える。


 あれは十中八九、ショットブラスト装置だ。


 ショットブラスト装置とは、グラニュー糖ほどの細かな金属もしくは硝子の粒を無数に物凄い勢いで飛び交わせ、金属製品にこびりついた頑固な汚れや塗装を剥がし、地金の状態にするもの。ショット玉を当てた金属製品には無数の凹凸が発生する。


 この装置に人間を入れて稼働させると骨も残らないらしい。


 ショットブラスト装置は私が立ち上げた通販サイトでも取り扱っていて、これまで3台売れた。いまごろ何に使われているのだろうか。なんでもいいか。


 それよりこの危機的状況から逃れる方法を考えて実行するほうが先だ。


 男の脳天を銃でぶち抜く。


 いや、それは危険すぎる。殺る前にこちらが殺られる。


 本物の殺し屋を相手に私たちが子どもが勝てる筈はない。


 うーん、どうしたものか……。


「君たちは、何をしに来たのかな?」


 策を練っているうち、男に再度問われた。


「いやぁ、島を探検してたら迷っちゃって」


 明日香ちゃんが恐る恐る振り向いて調子よく返答。私含む他のメンバーもそれに続いて振り返った。すらっとした体型で、黒いスーツとネクタイ、白いワイシャツを着用した、その道の人ともSPともとれる恰好。


 キャロルは顎に手を当て何か考えているようだが、仮に何か思いついても大して役に立たないか裏目に出て余計に状況悪化を招く気がする。


「そうなんだ。ここは会社の敷地だから、入ってはいけないよ。危ない機械がたくさんあって、場合によっては怪我をしちゃうからね」


「うん、わかった! じゃあ帰る!」


 明日香ちゃんが素直に応じた。


 場合によっては怪我をするといってもそれは只事ではない。電車が人身事故を起こしたときに「ただいま負傷者の救出活動を行っています」と鉄道職員が案内するけれど、そのほとんどは単に負傷と呼ぶにはその程度が大き過ぎるのと同様に。


「素直でいい子だ。気を付けて帰ってね」


 男は両手を自らの膝に着いて、穏やかな表情で明日香ちゃんを見て言った。


 おや、思いの外あっさり回避できたか?


 シンプル・イズ・ベストということだろうか。


「なんて、そんな簡単に帰れると思っているのかな?」


 やはりそうなるか。しかしこんなに目立つ場所でこのようなことをするほうにも問題があると私は思う。


 男の表情は変わらず柔和。ただし口は笑っているが目は笑っていないだろう。


 それを証明するかのように、男からはドス黒いオーラが出ている。私は人のオーラが見える体質ではないが、それでも感じ取れてしまうくらいわかりやすい。


「ちょっ、ちょっと待ってお兄さん!」


 何か思いついたように手を挙げたのは、羽心音はこねちゃんだった。


 考えている素振りなどまるで見せていなかったから、突発的にひらめいたのだろうか。


 大した期待はしていないが、どうか状況悪化を招くようなことは言わないでと切に願う。

 お読みいただき誠にありがとうございます。


 約4ヶ月ぶりの更新となりました。大変恐縮です。


 このままではいけませんので、各作品の更新間隔を早める計画を策定中です。

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