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いざなわれた少女たち  作者: おじぃ
弾薬の街、スカ

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勇者かぶれのコスプレマン

 ジャングルを進めどサルや人間の気配は一向になく、聞こえてくるのは常緑樹の葉が擦れる音と鳥のさえずりくらい。


 その鳥というのが、見た目はメジロのようだけれどやたら大きく、私たちチビなどチュンチュンつつかれたら絶体絶命の危険生物だった。


 その鳥について調べてみたところ、やはりメジロのようで、普段はグミやサクラなどの小さな果実をついばむようだが、コーヒー豆を口にしたときは脳が混乱して生物を襲撃する場合もあるそうだ。


 警察が鳥に事情聴取をすると「酔っていて覚えていない」と供述するのだとか。


 そんなに危険ならばまず鳥からロケットランチャーでと思ったけれど、どうせやったら問答無用でブタ箱行きになるし、砲弾は高価なのでやめておく。


「人間ともサルとも遭遇しないね。何事もない平和な島な気がしてきた」


 明日香ちゃんが言った。しかし天災は忘れたころにやって来る。


「ギイイイイイイ!! ギギャアアア!!」


 どこからともなくこの世の終わりのような声が聞こえてきた。これはもう、物騒な気しかしない。


 恐らくサルが何者かに襲撃されたと思われる。


 正義の討伐クエストという名目で私たち人間はここにいるものの、正義など所詮は法やルールに則ったものにすぎない。


 良識的に考えれば、このクエストは悪であると再確認。


 サルを討伐して土地開発をしようという何者かの計画よりも、ここに暮らしているサルやその他生物の暮らしを私は守りたい。


 どうも私は仲間や警察から悪者だと思われているようだけれど、実際は悪かったり悪くなかったりするのだと思う。


 雨は恵、風は涼み、冬の寒さは慣れっこ夏の暑さは拷問の丈夫とは言い切れないからだを持ち、欲深く、いつも部屋の隅でニヤリ不敵な笑みを浮かべ、味噌も野菜も与えられなかったから食べられないときもあった青森での日々。ネットの海を漂い情報を集め、しかし東にも西にも南にも北にも行けず、つまらない日々を送ってきた現実世界リアルでの日々。


 底知れぬ恐怖と引き換えにこの世界へいななわれ、そこから解き放たれたいま、気ままに漂い、ときに砲弾をぶっ放す。そういう者に、私はなりたい。


「さて、人間を処分しようか」


「うえっ!? いやまぁ、戦闘は覚悟してるけど……」


「やらなきゃやられるわよ?」


「私はテレクラでヤッてるときの声出してって言われるけど、まだヤッたことないんだよね」


 羽心音ちゃんの言っている意味はよくわからないけれど、まぁいいか。


「ギィッ! ギギギギギッ!」


「おっとおサルさんが姿を現した!」


「お前も逃げろ!」


 どうも明日香ちゃんをサルと認識したらしいサルは通りすがりにそう言って、そのまま私たちが辿って来たほうへ走り去った。


「待てー! 島を荒らす悪いサルめ!」


 少し遅れて今度は人間が現れた。


 私たちより少し年上で、羽心音ちゃんよりは若そうな男子。メタリックブルーと銀の装甲で、腰ベルトの左脇腹には大きな剣が挿し込まれている。


 どうやら異世界ライフを満喫している勇者かぶれのコスプレマンのようだ。


 なるほど、この男が敵か。

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