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いざなわれた少女たち  作者: おじぃ
弾薬の街、スカ
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血まみれのモンキッキ

「おえっ!? モンキッキが血まみれで倒れてる!」


 モンキッキって明日香ちゃん、そう言う自分もモンキッキではと刹那に思ったところで私は無駄な思考を止めた。


 明日香ちゃんの言う通り、私たちの足元ではニホンザルのようなものが頭から多量の血を流し倒れている。


「これならまだ死んでないかも」


 言ってキャロルが無言で回復魔法をかけた。「治れ治れ~」とか「メディカルパワー」のようなそれっぽい言葉を入魂して唱えると効力が高まるらしいけれど、そこまで本気で助ける気はないようだ。


「ん……。んんん……」


 サルのようなものが意識を取り戻したようだ。


「起きた! モンキッキ起きた!」


「キーッ! ギギギッ!」


「おわぁ危ない!」


 敵襲と思ったか寝起きに大声で騒がれ苛立ったか判然としないが、おサルさんはとりあえず明日香ちゃんの顔面を引っ掻いておこうみたいな感じで彼女に飛び掛かった。


 たまにニュース番組の特集などで見られる衝撃的かつ危険な場面だが、標的が明日香ちゃんだとなぜか漫才コンビのコントに見えて危機感を覚えない。


 明日香ちゃんは咄嗟に避けるもバフッ! と尻餅をつき、その隙を狙ってサルが飛び上がり再び襲撃。「仕方ないわね」とキャロルが足止め魔法をかけるまで、明日香ちゃんは十数度回避を繰り返した。


 明日香ちゃんのほかにも3人いるのに彼女ばかり狙われたのは、きっとサルが何らかのシンパシーを感じたためだろう。


 ふぅ、おかげで助かった。


「ギヤアアア!! ギャギャギャギャギャアアア!!」


 キャロルの杖から発せられた青白い光のリングに脚を縛られたサルは身動きが取れず奇声を上げている。私たちのクエストはサルの討伐なので、あまり煩くするようならこのままロケットランチャーでドカンしようか私は検討を始めた。


「ギヤアアア!! ギャギャギャギャギャアアア!! じゃないよ。人間の言葉喋れるんでしょ?」


 尻に付着した泥を払いながら、明日香ちゃんが呆れ口調で言った。


 確かに言う通りだ。トンボやハチが人間の言葉を喋れる世界なのだから、サルだって同じ可能性は高い。ただこのサル、虫たちとは異なりからだの大きさが現実世界のサルと同じくらいだ。となると知能レベルも現実世界と変わらないとも考えられる。


「ギヒイイイイイイッ!!」


 うーん、やはりサルはサル、明日香ちゃんは明日香ちゃんだろうか。サルはただ奇声を上げるばかり。


「あのさ、私たちの世界には『対話が成立しない相手は力で制圧するしかない』っていう概念があるんだけど、それでもギイギイぎゃあぎゃあ言い続けるの? せっかく救ってあげた命だけど、これじゃ仕方ないかな」


 明日香ちゃんの目は確信に満ちていた。彼女の長所は純粋で、動物的な勘が冴えているところだ。


「わかった。対話をしようではないか」


 すごい。たったいままで弁慶のように眉間に皺を寄せ睨みを利かせていたサルが、何事もなかったかのように素面になって対話に応じる姿勢を見せた。

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