私らRPGの主人公っぽくなくない?
観光気分の私も討伐気分の他の子たちもとりあえず島内を散策。
島のそこかしこに防空壕として使われていたような仕様の穴や砲台、崖を削って作られた牢があり、戦闘ゲームらしい雰囲気が支配している。
南国独特の背が高くて葉の厚い木々が陽光を遮断し、昼間なのに車一台くらい通れそうな坂道は薄暗い。路面は吸水素材で舗装されている。
「このゲームさ、存在意義追求RPGとかいうけど、私たち全然ゲームの主人公っぽくないじゃん? 強いて言えばキャロルくらい? ゲームキャラっぽいの。あ、キャロルはこの世界の住人だっけ」
明日香ちゃんが両手を頭の後ろに回しセクシーポーズで歩きながら言った。色気はない。
「さぁどうかしら? 私は気が付いたらここにいたから。それ以前の記憶は」
「明日香ちゃんが思うRPGの主人公ってどんな感じ?」
羽心音ちゃんが問うた。
「そりゃあアレだよ。なんか調子こいたイケメン風のいかにもヒーローで熱血っぽかったり頭良さげだったり髪ツンツンだったり」
「あぁわかる。ああいうのダメだわ私。好きになれない」
「まぁほらでもね? なんていうか真っ直ぐなほうが主人公としてのキャラが立つというか? 私らみたいにグダついてんのは何年経っても4月になったらリセットされて永遠の若さを手に入れる代わりに記憶を消されたり擦り換えられたりしちゃうんじゃないの?」
「え、なにそれこのゲームそんな設定あるの!?」
「いや知らないよ? でも有り得ないとは言い切れないよね」
そこでキャロルが口をはさむ。
「なに言ってんの、サービス終了までにクリアできなかったらみんなドッカーンでしょ?」
「そ、そういえばそうだった」
と、明日香ちゃんとキャロルは息ピッタリに言った。
そう、これはゲームソフトではなくネットゲーム。運営側の都合により予告なくサービスを終了する場合もある。
そうならないようどうにか運営をハッキングできないかとかロケットランチャーを製造、発射し世界を支配してゲームクリアとならないかなど色々企んではいるものの、なかなか良いアイディアが浮かばない。
ロケットランチャーはバンバン飛ばしたいところだけれど莫大なお金がかかるからそんなに頻繁には発射できないし、落下地点によっては大勢力の怒りを買うか法に触れて処刑されかねない。
しかしこの島にはいたるところに砲台がある。
あぁ使いたい。ドッカンドッカン撃ちまくりたい……。
気に食わぬ者を片っ端からダイナミックにやっつけて、木端微塵にしてあげたい……。
そう思いながら歩いていると、私たちの行く先に酷く負傷し路上に横たわる茶色い毛むくじゃらの生物を発見した。
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更新遅くなり大変恐縮です。




